第3話 (僕+私)の勉強会と母
「ただいま。」
「おじゃましま〜す!」
「「お邪魔します。」」
「は〜いいらっしゃーい!」
今日から始まる勉強会。四人揃って学校のすぐ近くにある僕の家で記念すべき第一回の会を開くこととなった。
皆が家に入るなり母さんは歓迎ムード。昨日僕が「皆が来るから」と言っておいたので部屋も綺麗になっている。
「さあ上がって上がって!」
とりあえずリビングで勉強することになった。いつ自分の部屋に勝手に入られてもおかしくないので部屋も綺麗にしておいた。入られる理由なんて母さんが勝手に案内するくらいしかないのだが...
母さんは三人が家に上がるなり、一人の女の子に目が止まった。そして「んふふ〜」と、言い表せないほどのにっこり笑顔でその一人にこっそり声をかけた。
「あなたが京ちゃんかしら?」
「あ、はい。いつも雅君にはお世話になってます。」
「そんな事ないわよ〜...雅から話は聞いてるわよ!頑張ってね!」
「えっ!?」
京は雅の母こと
「母さん、冗談も程々にな」
「わかってるわよ〜」
僕が母さんに注意すると、京から離れて、
「奏多君も一ヶ月ぶりくらいかしら、またいつでもいらっしゃい!」
「ありがとうございます。」
「と、言うことはそこのあなたが奏多君の彼女さんってわけね!」
「えっ!?」
母さんはビシッと楓さんを指さして奏多の彼女であることを堂々と言いふらす。
実はここには奏多に彼女がいないと思っている人が一人居た。そいつは多分それを聞いて階段を急いで...ほら、降りてきた。
ドンドンドンドンドンッ!
「かな
恋愛には目がない僕の妹、百合の登場だ。かな兄とは奏多のことだ。奏多とは小さい頃から一緒にいたし、奏多の妹と百合も仲がいいのでほぼ兄妹みたいな関係にあった。
百合は目をキラキラさせて奏多に詰め寄る。
「いや〜百合ちゃん久しぶり、どうもこうも付き合ったんですとしか...」
「へぇ〜私という女がいながら浮気するんだぁ〜」
「え...」
百合がニヤッとした笑みで奏多を見つめて「浮気だ!」と冗談で言ってみると、その百合の冗談に楓さんが本気になる。
落ち込んだ楓さんをみて奏多が慌てる。
「ちょっ!違うからね楓!」
「あっハッハッ!冗談だよ!いつ見てもその大きなリアクション最高クククッ...」
百合が早速奏多をいじる。これも恒例の事だ。このやり取りを見て京は
「...雅のお母様と言い妹さんといい、血は争えないわね...」
「おいどういうことだ。」
『家族は性格も似るものね』と、京は僕の方を向きながら笑いを堪えていた。
母はいじってないじゃないかと思うかもしれないが、この状況をあえて作って一人で笑っているのは母である和子なのだ。
少しでも恋心を持つ女性なら本物の天敵と言えるだろう。
京はリビングに入ってきた百合を『へぇ〜、雅には妹ちゃんがいたのねぇ...』と、じっと見つめる。そしてハッとなにかに気がついて冷や汗をかいた。
京の目の前にいる百合。その容姿は黒くて長いストレートの髪、鋭い目付き、そして何より...可愛い。叶わない恋...もしかして...と震えながら一歩下がって雅の方を見た。
それを見て雅はすぐに京が何を思っているのか納得した。
「いや、それは無いって。家族を恋愛対象としてなんか見てないって。だから引くなっ!」
雅は若干引いていた京の誤解を解く。が、そこに百合が悪ノリをしてくる。
「え〜!兄貴私の事好きだったの〜?も〜しょうがない兄貴だな〜まあその顔に免じて許して...アガッ!?」
「お前は少し黙っとれ。」
「兄貴から見て異性として可愛い可愛い妹にそれは酷くない?」
「真の妹を異性として可愛いと思ったら人間的に危ないだろ。」
雅はふざける百合にチョップを入れて、それに対抗する冗談にも正論を返す。すると百合は「むぅ...」と言って部屋に戻っていった。雅は仕切り直して、勉強を始ようと、皆に準備させる。
「じゃあ邪魔者もいなくなった事だし、勉強を始めるか。」
「実の妹にそれは酷くないかしら。」
「こんなもんだろ。」
こうして午後5時15分に勉強会が始まった。
-----1時間後-----
「あ〜疲れたぁ〜」
「駄目よ楓。やらなくちゃ。」
「1時間ぶっ通しじゃーん!」
「まあ、飲み物飲んで軽くお菓子をつまんだら再開すればいいんじゃないか。」
「雅くんやっさし〜!」
「甘やかしてはダメよ雅。」
「五分くらい休ませないと集中できなくてそれこそ時間の無駄だぞ。」
「むぅ...それもそうね。」
休みたいと言う楓に駄目だと京が厳しくなり、少しくらい良いんじゃないかと楓を甘やかす構図はまるで親子のようだ。
その様子に上から降りてきていた百合が、
「あっハッハッ!それ高校生のやり取りじゃないって兄貴ぃ〜!」
「そうか?」
「京ちゃんもだけどそれじゃあ子供がいる夫婦じゃん!あっハッハッ!」
「...」
「...」
と、親子のようなやり取りに笑った百合の冗談に二人とも固まってしまう。心の中では、
『夫婦...な。いつかはそうなりたいものだな...夫婦か...どんな家族になるんだろうか...』
と、京との将来の夫婦像を望んでいた。一方都はと言うと、
『え!?夫婦!?百合ちゃん今夫婦って言ったわよね!?やだ〜私達まだ高校生よ!そんな夫婦だなんて〜』
と、心の中で惚気けていた...と言いたいところだが、顔にも出ていた。
それを見た和子は「あらあら」と微笑ましい光景にくすくすと笑っていたのだった。
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読んでくださりありがとうございます。
もしこの作品を気に入って下さったら、次回も是非よろしくお願い致します。
よろしければ、レビュー、応援の程をよろしくお願い致します。
それでは失礼致しますm(_ _)m
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