第9話 (僕+私)の疑いの目と高校生
雅と京はおふざけが終わったあとに制服に着替えて夕食に向かった。
夕食はホテルの二階にあるレストランで、夜の18:00〜21:00までのディナーの時間ならどの時間に来てもいい。
僕と京はまだ登山も続いていて人も余りいないであろう18:00ジャストにレストランに向かうことにした。
隣の部屋にいる奏多と楓も呼ぼうと二人の部屋の呼び鈴を鳴らして待つことにした。
キンコーン
「おーい奏多〜」
「楓〜」
二人はただ並んでいるだけでスキンシップは取っていない。そもそもまだ友達なのであって恋人では無いのだから。
ただ気概なく接することができるということは限りなく2人の心の関係が近づいたということだ。
もちろん二人も今のままでいるつもりは無い。できるなら京は雅と、雅は京とお付き合いしたいのだ。
なんせ京にとって雅は高嶺の花であり、雅にとって京も高嶺の花なのだから。互いが互いを憧れる関係。それはすぐ近くで触れ合えるくらいの関係にまでなった。
二人は二人以外に結ばれることを望んでいない。
互いに自分が愛されていると知らないとはいえ、このふたりが結ばれるのも時間の問題だろう。
〈ちょっ!!待って!!〉
〈すっすぐ行くから!!〉
外から雅と京が呼び出すと、中から奏多と楓のあたふたした声が聞こえてきた。恐らく部屋着から制服に着替えているのだろう。五分くらい待っていると
ガチャッ
「ハアハア...ごめん!待たせたね...」
「二人とも...ごめーん!!」
軽く息切れした二人が出てきた。恐らく夕食の時間を忘れていたのだろう。そして四人で並んでレストランへと向かうのだが...
「...」
「...」
『『えっ...何この気まずい空気...』』
雅と京はこの無言の空気を不思議に思った
あんなにイチャイチャしていたバカップルが、ものの一、二時間で何が起きたのだろうか、
京と雅が隣を歩き、その互いの外側を楓と奏多が無言で歩く。二人とも顔を真っ赤にしている。
『これは...』
『何かあったわね...』
雅と京の頬を一滴の汗が滴る。
とりあえず雅が奏多をジト目で見つめて攻めた質問をする。
「奏多、お前...高校生越えたのか?」
「いっ!?いやっ!!越えてない!!越えてないよ!!」
「!?」
怪しい返答だ。雅の質問が聞こえていたのか、楓まで一瞬驚いた後に『違う違う』と首を振っている。
その様子を見た京が今度は楓に質問する。
「...何があったのかしら?」
「い、いやぁ...別に何も?...」
「何があったのかしら?」
「うっ...」
京の必殺技である〈氷の女王様〉で楓を威圧し、強制的に答えさせる。
それに奏多も楓もスーっと視線を外に外す。
『一体何があったんだよ...』
雅は心の中で大きくため息をついたのであった。
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『本当に...何があったのかしら...』
京は心の底から楓に心配する。楓は少し黙ったなと思ったら理由を語り始めた。
「見られちゃったの...」
「え?なんて言ったのかしら?」
あまりにも小さい楓の声に京が聞き返す。
「だからね...〇〇〇...見られちゃったの...」
「も、申し訳ないわ...もう1回大きな声で...」
『何を見られちゃったのかしら、下着の上?下?それともそれだけをまとった姿?』
京は今度は一部分だけ聞き取れなかった。そして楓は大きく息を吸って、
「下着と下着姿を見られちゃったのよ!!」
『わ〜お...まさかの両方...それは災難だったわね...だから太宰くんは...』
京は雅の方をすぐに向く。雅はそれに察して奏多の方を向く。奏多は誰もいないその隣の方を見ながら小声で、
「そ...その...あれは不可抗力というか...なんというか...」
奏多はその後に顔を真っ赤にしながら雅に事情を教えた。
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「なるほどな。確かに不可抗力だな。」
奏多から話を聞いた雅は都にその話をする。
「どうやら奏多が風呂から上がった時に、リビングで伊勢さんが下着を再度選び直していたそうだ。それを奏多はバッチリ見てしまったってなわけらしい。」
「なるほど。それは災難であったと同時に自業自得ね。」
「うぅ...」
楓は自分の自業自得である事をわかっているのか、弱々しい声をあげて俯いた。
この瞬間、同時に雅のお腹が周りに聞こえないくらいの音で〈ぐ〜〉と鳴る。
そこで雅はハッとした。
『いや、僕達はご飯食べに行くんじゃなかったのか?...まあいいや、僕が声をかければいい話だ。』
雅は奏と楓の話を理解したのでとりあえず当初の目的であるレストランに向かおうと、三人にレストランに向かうよう促す。
「ほら、お腹も減っただろうし行こっか。」
「そうね!!行きましょっか!!」
「...」
「...」
二人とも切り替えが早い。
雅の言葉に京は明るい声で雅の言葉に肯定し、二人同時にレストランへと歩き始めた。
あまりに雰囲気が違う二人に奏多と楓は言葉にならない驚きを見せつつもその後をゆっくりとついて行くのであった。
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読んでくださりありがとうございます。
もしこの作品を気に入ってくださったら、次回も是非よろしくお願い致します。
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