第2話 (僕+私)の予定決めと過去の事件

二時限目になった。僕達は席をくっつけて二対二になるような形にした。真ん中に配られたパンフレットを置き、地図のページを開く。


この親睦旅行は一泊二日の短い旅行ではあるが、その場所も山であるため、しっかりと予定を立てないと色々と危ない。全体的なルートを確認しておかなければ迷ってしまうこともある。


そこまで大きい山では無いので遭難することは無いだろうが、下手すれば隣の市の方向に出てしまう可能性もあるので、しっかりと予定を決めなければならない。


僕らはまず一日目に歩くルートを決めた。


「まず麓の神社に行き、その奥にある戦前石灰石の採掘場であった石切場、そして頂上にある展望台でゆっくりしてから下山するというルートです。他のサブスポットには回りません。」


と、ルートを確認をした後に、自分達の登山の流れを説明し、その後に簡潔にまとめた説明を三人に確認してもらう。


「と、言うわけで、この有名地点三箇所を直線で結ぶルートがいいと思うのですが...」

「僕は賛成だ。」

「私もいいと思う!」

「異論はないわ。」


あまり多くのところに回ると、忙しいし、山で焦るのも危ない。それに加え、あまり人がいない所に女子を連れていくのも心配だったので、重要な地点だけを直線で結ぶルートにした。


あまり人がいない所に女子を連れていきたくないというのは、去年新城下高校で事件があったからだ。


「このルートにした理由は去年同い年の違うクラスのやつが、女子を家に監禁したと言う事件が起きたことを踏まえての予防策です。」


ここにいるみんなが知ってると思うが、一応その事件について触れておいた。


説明すると、去年新城下高校のとある一年普通科生の好きな子が、自分じゃない人に告白したことによる怒りで、その自分が好きな女の子を家に監禁したという事件だ。


その話に一番最初に反応したのは奏多。


「確かに去年の事件もあったからね。雅の案は正しいと思うよ。」

「私は奏多が守ってくれるとして、京が心配だからねぇ〜」

「私はそんなに頼りないかしら?」

「そーいうわけじゃないのよっ!」


一応みんな納得してくれたようだ。これに僕はほっとして、「じゃあ次はホテルの部屋わけに移りましょうか。」と次の話を進める。


『さぁ、ホテルの部屋決めだ。これは言わずもがな、男子同士である僕とかなt』


「あ、橿原くん!私奏多と同じ部屋がいーでーす!」


カランッカラン...


「...」

「...」


伊勢さんのいきなり過ぎる攻めの要望に僕は無言で鉛筆を落とし、奏多は目を点にする。


なぜか出雲さんは落ち着いたご様子。


奏多と伊勢さんが同じ部屋ということは、僕は必然的に出雲さんと同じ部屋になるということ。それはさすがにマズイ。いや、それ自体は内心叫びたいくらい嬉しいのだが出雲さんが絶対にいやg


「いいでしょう。」

「ぇぇええ!?」


出雲さんが賛成したことに僕は酷く驚いた。


周りの班の人が『?』って顔でこっちを向く。「あっすいませーんハハッ」と軽く周りに頭を下げてどういうことかと聞こうとしたのだが...


「でも、申請は男子同士、女子同士よ。学校側に不純と思わせる部屋分け表を提出するのは得策では無いわ。名目だけで実際その時になって入れ替えるというのが筋でしょうね。もう紙には書いておいたわ。予定も書き終わった事だし早めに提出すべきね。後は細かい所を話し合いましょうか。提出お願いするわ、橿原くん。」

「は、はい。」


と、出雲さんの言葉に入る隙はなく、そのまま案は通ってしまった...


『いや、何ペラペラと進めているんですか出雲さん!顔は真顔だけど口は「待ってました!」と言わんばかりの早口だったよ!?』


僕は心の中で出雲さんにツッコみながら先生に予定表を渡しに行った。


ちなみになぜか先生に渡しに行く時に周りの班の人たちに〈見せて見せて〉とせがまれた。


あれはなんだったのだろうか。


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『よし!よし!いいわ!これでいいのよ!』


京は大いに喜んでいた。理由は旅行で雅と一緒の部屋に泊まれることになったからだ。


元々京は、同じ班になったと決まった時から、『あわよくば橿原くんと同じ部屋になれないでしょうか』と、何か口実を探していたのである。


そこで雅のルート説明が終わったあとに、ホテルの部屋決めの話で楓が彼氏と同じ部屋がいいと強請った。


京は『チャンスね!』と思ってその話に「いいでしょう。」と内心がバレないようにいつもの口調で楓の話に乗った。


『橿原くんは驚いているけど、これは恐らく私が反対すると思っていたからよね。』


正解だ。しかし女子が「大丈夫」と言えば、断りきれないのが男子の定め。


『ここは強引にでも話を進めて決定させるべきね』


と京は強気の姿勢に出た。


「でも、申請は男子同士、女子同士よ。学校側に不純と思わせる部屋分け表を提出するのは得策では無いわ。名目だけで実際その時になって入れ替えるというのが筋でしょうね。だからもう紙には書いておいたわ。予定も書き終わった事だし早めに提出すべきね。後は細かい所を話し合いましょうか。提出お願い、橿原くん。」


と、当たり前の事を述べつつ、あたかも合理的であるような言葉で、部屋分けの話を男女ペアという形で強制終了させた。これに雅は頷くしかない。


「は、はい。」


『よし!よし!いいわ!これでいいのよ!』


京は心の中で大きくガッツポーズをして喜びを表すのであった。


ちなみにその直後、楓に「顔に出てるわよ」と耳元で囁かれた後、京は顔を真っ赤にして手で覆うように隠すのであった。


帰ってきた雅は「?」と何が起きたのか分からない顔をしていた。奏多の方を向いても『さあ?』と両手を上げている。


雅は少し疑問に思いつつも、詳細の話し合いを始めたのであった。


そして、その日から一週間が経ち、四人は親睦旅行の行きのバスに乗り込むのであった。


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読んでくださりありがとうございます。


もしこの作品を気に入ってくださったら、次回も是非よろしくお願い致します。





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