第8-A話 僕の予想外の反応

「橿原くん。あの二人を見る限り、私達とは別の行動になるわ。一人で回るのは貴方にとっても本望では無いでしょう?だから私と回りましょう。学生にとって貴重なお金が無駄になってしまうわ。」


僕は『うわぁ、あの二人もうできちゃってるやん。こりゃ嬉しいことに出雲さんと2人きりかな?勇気出して誘ってみよう。』


と思いながら出雲さんに声をかけてみようと思ったのだが、早速出雲さんから辛辣な言葉が降り掛かってきた。


『まあ、要するに彼女も一人で行動するのが嫌だったのだろう。』


雅は今日の朝から度々京と話して来て、京の辛辣な言葉にも慣れ、京の事が大体わかってきたいた。


つもりで、というのはこういうことである。


『彼女はおそらくあれだ。


ラブコメアニメでよくある、目付きの鋭い黒髪ストレートロングの美女で、周りは近寄り難いけど、自分に強い自信をもっていて、根が強くて周りの意見にも中々折れない、最終的に主人公と結ばれる勝ちヒロイン系の子だ。


事実、彼女は目付きが鋭いし、超絶美少女だし、黒髪ストレートロングだし、言葉遣いも上から目線だ。』


本当の京はこんな性格ではないのだが、表面上だけ見れば雅のその推測も正しいと言える。


『あーいうタイプは好きな人でも中々素直になれないけど、付き合っちゃえば何かと甘えてくるパターンだな。』


否。京は表面上はそのタイプの少女なのだが、実際中身はかなり甘えたがりのポンコツなのだ。緊張に異常なほど弱いだけであって決して自分に強い自信がある訳でもなく、周りの意見に耳を傾け無いわけでもなく、むしろ自分にあまり自信がなく、話をすぐに信じちゃう方のタイプなのだ。


まあそれを雅が知らないのも無理はないことなのだが...


『とりあえずこういう女の子は話に乗ってあげることで「そうよ。それでいいの。貴方は私の話だけを聞いていればいいのよ。」と機嫌を治してくれるだろうし、僕自身出雲さんと一緒にいたいし、その話に乗らない手は無いな。』


と、雅は『自分の方が下ですよ』という感じで京の言葉に乗っかる。


「は、はい。そうしましょうか...」


僕がそう返すと、京から思わぬ声が聞こえてきた。


「え?」

「え?...いや...え?って...」


流石の雅も驚きを口に出してしまう。雅は自分の返答に京が『えぇ。そうね。こうしてる時間も無駄だわ、早く行きましょ。』くらいの言葉で返してくると思ったのだが、実際に京から帰ってきた言葉は困惑の「え?」一言。そして京の意外な返答はまだまだ続く。


「え?...いいのかしら?」


これに雅は少し困った。


『彼女は僕に何を求めているんだ...』


とりあえず雅は何が「いいのかしら?」なのかを京に聞く。


「え?何がですか?」

「私と一緒に回ってくれるのかしら?」


その京の答えに雅は意外感を顕にした。それでも雅の答えは決まっている。


『もちろんいいに決まってる。断る理由など僕にはない。』


「ええ。勿論ですけど...」


雅はまだ腑に落ちない顔で京の質問に答える。すると何が起きたのだろうか、普段あんなに無表情で冷たい目をしていた出雲さんの表情が緩み始めたのだ。それに雅は大きく驚いた。額に汗を滲ませ、『なにっ!?...』と心の中で叫ぶ。


今の会話の何が彼女を満足させたのか雅には全く分からなかった。そして京の驚きの行動はまだまだつづく。


奏多の隣でニヤニヤしてた伊勢さんが、少し遠くから出雲さんに近づいていって、


「『回ってくれる?』ってことはも僕と回って欲しかったってことですか?」


と、男子に似せた声で、かつ出雲さんと言って出雲さんに質問をする。これは恐らく伊勢さんが珍しく表情を崩した出雲さんを面白く思って冗談で言っているのだろう。そしてそれに出雲さんはどう答えるのか僕は気になって気になってしょうがなかった。


「勿論じゃない!当たり前よ!」


『...え?』


伊勢さんの言葉を僕が言ったと思ったのだろうか、出雲さんは見たことない程の笑顔で左手の親指を僕に向けてgood!と立てている。


これはもはやキャラ崩壊の域を越している。


奥で奏多が腹を抱えて大爆笑している。


なにかに気がついた出雲さんが顔を真っ赤にする。そして僕に、


「ハッ!!...これは!その!違うのよ!」


と、両腕を全力で交互に振っている。


『可愛い...』


必死な出雲さんの姿に僕まで惚気けてしまう。


このままだと出雲さんも可哀想なので僕から話を振ることにする。


「まぁ、出雲さんが自分と回ってくれるのを嫌でないのなら是非ご一緒させてください。僕も誘うつもりだったので。」


「あ、ありがとう...ございます...」


一緒に回りたいという言葉に加えて自分も誘うつもりだった事を文に組み込んだ。


しかし、「ご一緒させてください」の所で既に出雲さんはありがとうございますと頭を何度も何度も下げていたので、自分から誘う旨だったことは伝わっていないだろう。


その後も京はすこし表情を崩したままで、入場券を購入して遊園地に入っていった。雅は


『僕の...京さんの性格のイメージは正しくなかったのかもな...思ったより可愛い性格なのかもなぁ...』


と、京のイメージが少し和らいだのだった。


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読んでくださりありがとうございます。


もしこの作品を気に入ってくださったら、次回も是非よろしくお願い致します。





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