第4話 (僕+私)の縮まらない距離
僕達は新城下市の中心駅である新城下駅に集合してそのまま駅のホームに向かう。基本四人で広がって歩くのは危ないし、改札付近で周りの人に迷惑をかけてしまうので二列になる。奏多と伊勢さんが二人でずっと話しているから必然的に僕の隣は出雲さんになる。これは恐らく奏多が僕に気を使ってのことなのかもしれない。
「...」
「...」
『無言なのは良くない...』
僕はなにか話しかけようと出雲さんの方を向く。綺麗すぎて一瞬話しかけようとしたことを忘れてしまった。
その自分にとっての一瞬が実際時間どれ程かは分からないが、出雲さんと目があってしまった。すると僕より先に出雲さんが口を開く。
「何かしら...」
『ぬぁっ!?...』雅はそのゴミを見るような冷たい視線と
『なっ...なんと冷たい反応だ...思ってたより長い間見つめてしまっていたのか?...き、嫌われたか?...』
「い、いや、なんでもないよ。気にしないで。」
と、雅はばつの悪い顔で返答した。
『うっ...』今度は京が心に大ダメージを負った。
『橿原くんの視線を感じたからとりあえず橿原くんの方を向いてしまったけど、一瞬見蕩れて緊張で声が強ばってしまったわ...しかもその後に私を気遣うような苦笑いをしながら「なんでもないよ」なんて言われてしまった...私の顔、何か変だったかしら...き、嫌われてないわよね?』
このたった一回の言葉のやり取りで、二人は内心『まずい!嫌われたかも...』と焦りを見せた。
その様子をちらっと見た奏多と楓は『あちゃー』と額に手を当てた。
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「で、どの電車乗るんだっけ?雅博士〜、プリーズテルミー!」
「昨日言ったじゃん...まあいいや、このホームの次に出発する電車だよ。」
奏多がふざけた口調で僕に乗る電車がどれか聞いてくる。
「おっけー、サンキュッ!」
「相変わらず元気そうだな。」
「そんな雅はもうお疲れかい?」
「さあな」
『こいつ。知っててやってるな?』
僕は奏多をジト目で見つめる。そんな僕に思わぬ人から質問が飛んでくる。
「橿原くんは路線とか詳しいの?」
伊勢さんだ。彼女が僕に話しかけてくるとは正直思ってなかった。でも答えない理由もないので素直に答えようとするが...
「まあn」
「そうっ!なんと雅くんはね〜、全国の全市町村と路線を知る、日本の地理マスターなのですよ〜」
「おぉぉ...」
「凄いわね。」
「へへっ」
「お前が照れるな。」
まるで手柄を横取りされた気分だ。でも少し場の空気が緩んだ気がする。まあ、これも奏多のおかげなのかもしれない。それにしても...
『出雲さんの反応が薄すぎるっ...こ、これは興味無しの現れか?...』
雅は表情こそ真顔を作っているが心の中では頭をガンガンと地面にたたきつけて叫び嘆いていた。一方出雲は...
『ま、また冷たい口調で返してしまった...どうしても緊張すると素っ気ない言葉になってしまうのですよね...私もなにか、得意なことで橿原くんを...』
「そうだ!今度このメンバーでカラオケでも行かない!?京がすっっごい上手くてさ!皆にも聞いて欲しいんだよ!」
『楓!?なっ何を急に!?』
「いいね!カラオケ!もちろん雅もだぞ。」
「強制かよ。まあいいけどさ。」
確かに私はカラオケが得意。でもなんで急に...なるほど!楓が私に気を使ってくれたということですね。確かに良い。良いんですけど...
『橿原くん、いやいや連れて行かされてる感出している気がするのですけど...もしかして私と一緒が嫌だったり!?...これは完全に興味無しなのでは...』
二人のマイナス思考が見て直ぐにわかったのだろう、楓と奏多はまた『うわ〜』と頭を抱えるのであった。
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