第3話 (僕+私)の恋愛相談。

男子にとって可愛いと思う女子と女子にとって可愛いと思う女子は違うという話をよく耳にする。それは男子の場合も同じことが言える。橿原雅と出雲京の場合、それが顕著に表れていた。


「なぁ奏多、どうすれば出雲さんの気を引けると思う?」


僕は幼馴染兼親友のクラスメイト、太宰だざい 奏多かなたに助言を求めた。


「ん〜、雅はどうしても出雲さんがいい訳?」

「え?諦めろってこと?」

「だって彼女は学校屈指のイケメン達を一瞬の迷いもなく振る程の本物の高嶺の花だよ?こう言っちゃ失礼だけど、女子にそれなりに告白されたことある雅でも流石にだよ。」

「そっか〜、そうだよねぇ...」


僕は苦笑する。


奏多は『諦めた方がいいよ』と僕を説得する。確かに彼女はあまりにも高嶺の花過ぎて、僕とは到底釣り合わない。でも、でもね、せっかく同じクラスで、しかも隣の席にまでなった大きな大きなチャンスなんだ。可能性が1%でもあるならそこにかけたい。でも、


「0%だよな。」

「だね。」


二人はこの意見で一致した。


「あぁっ...でもぉ...」と、奏多がふっと違う方向を見てなにかに気づくと僕の方に視線を戻してニヤッとした笑みを浮かべて見せた。


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「ねぇ楓、」

「なぁに?」

「橿原くんの気をどうやったら引けると思うかしら...」

「わ〜お、みやこは強欲だね!」


私は中等部からの親友である伊勢 楓に橿原くんの事について相談したが、あっさりと『それは無謀じゃない?』と返されてしまう。


「彼は校内の美女達をあっさりと振っちゃう程の人だよ?いくら男子にそれなりに告白される京と言っても橿原くんは厳しいって!」

「そ、そうかしら...」


私は楓の返答に俯きながら長い長い自分の黒いストレートの髪を指先でつまんでいじる。


軽く不貞腐れる京に楓は『あちゃー』と言った表情になる。そして少し間を置いて「よしっ!」と言う。


「そこまで京が諦めきれないならしょーがない!私が橿原君と話しやすくなるよう舞台を準備してあげよう!」

「ど、どうやって?」

「そうね、まず京は黒髪のストレートロングで前髪も重ためだし、目付きがキリッとしてて言葉使いも丁寧じゃない?よくアニメで見る、男子も近寄り難い"棘のある氷の女王様"的なイメージがあると思うのよ。」

「なっ!?」


「だから男子の方から寄ってくるとはあまり考えられないのよ...かと言って京のその印象を変えるのは勿体ないわね...」


とブツブツ一人で語り始める楓。


「...」『と...棘のある氷の女王様...』


京は楓から見た京のイメージを聞いてポカーンとしてしまう。


「そうだ!私のママ友同士の奏多に橿原くんと取り合って貰えるよう仕組んでみるわ!」

「あ、ありがとう楓。」


京は楓の言葉に一瞬大きな傷を負ったが、一応協力してくれることになったので礼を言う。すると、楓は奥にいた太宰くんの方を向いてコクンと頷く、太宰くんはすぐに橿原くんの方に目を向けてニヤッとした笑みを浮かべたように見えた。


『わ、私は何をされるのかしら...』


感謝はしたものの楓の怪しい笑みに京は少し心配になってきた。


「にしても棘のある氷の女王様は酷い気がするのだけど...」

「も、物の例えだって!ほら!気にしない気にしない!」


『いくらものの例えだとしてもそれは酷くないかしら?』と一瞬思ったが、自分のわがままに付き合ってくれてるのでこれ以上は突っ込まないことにした。


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「ど、どうも...」『え...』

「え、えぇ...」『これは...』


「いやぁ〜おまたせおまたせ!いい天気だね!晴れてよかったよかった〜」

「ほんとよね〜」


困惑する二人の横には晴れたことに満足する奏多とそれに共感する楓。


そう、雅と京を連れてきたのは紛れもないこの二人、二人は雅と京の相談を受けたあと、放課後に二人で残り、雅と京が両片思いであることを知り、どうやってくっつけてやろうか話し合ったのである。


ちなみにお互いの親友同士が恋してると知った時は奏多も楓も驚いた。


「えっ!?出雲さんが雅の事を!?」

「えっ!?橿原くんが京の事気になってたの!?」


二人とも酷い言いぐさである。


「じゃあ揃ったことだし行こうかぁー!」

「おぉー!」


仕組んだ組は楽しそうである。


〈お前、仕組んだな!〉


雅はそっと奏多に耳打ちした。


〈ちょっと楓!これって...〉


京も楓に耳打ちした。


「でもこれをお望みだったんだろ?」

「お膳立てはしてあげたわよ?」


二人はいやらしい笑みで『ほら、望むままにしてやったぞ?』と雅と京の気持ちを煽りたてるのであった。


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