8小節…モノクロの終わり

8小節…モノクロの終わり


井ノ原玖side


私、井ノ原玖!超アイドルきゅ〜!の美少女!

私は昔から人に携わることが大好きなの!

コンビニでも店員さんと仲良くするし、犬の散歩中の人とも仲良くする

だから私は人と関わりたい!

中学生の頃、そんな話を幼なじみののんに話すと


「それならさ、一緒に美容師にならない?」


とのんは言ってくれた

美容師さんかー!人と関わる仕事っていいねー!


「なるよ!どうしたらいいかわかんないけど!」


私の人生は為せば成る!

やればどうにでもなる!

ただ……どうしたらいいかわからない時もある


放課後、たまたま教室を通りかかった時


「超アイドルきゅ〜!の美少女!

とか言って、うるさいよね」


「うん、私はああいうタイプ苦手だなー」


私は良かれと思ってやっていたことだった

確かに私が一方的に人が好きだからそうしてきたことだし、人の迷惑とかは考えてこなかった

あんまり人と関わりすぎるのは良くないのかもしれない

正直…ショックだった

そんな時に、あいつと出会った


「井ノ原玖ってやついるか?」


教室から顔を覗かせるある人物がいた

な、何!?私!?

こっわ!顔が怖すぎ!

人3人くらい殺してるでしょ!


「な、なに?」


「俺の彼女がお前を悪く言ってすまなかった」


「……は?」


なな、何言ってんの?

あんたの彼女?それだったらなんであんたが謝んの?

名前は多分、うろ覚えだけど小橋凛太郎だ

私を悪く言うのなんて別に…気にしてないよ


そして数日が経ったある日


「おい!こばしり彼女と別れたらしいぞ!」


「まじで!?なんで?」


「彼女が他の女の悪口言ってたのが気に食わなかったらしいぜ」


「なんだそれ!」


な、なんだそれはこっちのセリフだよ!

どういうこと!?

私はこばしりと言われてるあいつを呼び出した


「ちょっと、こばしり!来なさい!」


「は?なんだお前」


「いいから来る!」


私はこばしりを屋上に呼び出して


「あんた、彼女と別れたの?」


単刀直入に聞いた


「ああ、別れたよ」


「なんで!?私が理由?」


「はあ?なに自惚れてんだ?ぶち殺すぞ?」


「口悪!!」


な、なにこいつ!最悪なやつだ!


「じゃあ何が理由なの?」


「別に理由なんてねーよ

俺がお前に謝ったことに腹立てて逆ギレしやがった

俺もムカついたからそのまま別れる方向で話が進んだだけだ」


「じゃあなんで私に謝ったの?

彼女が私の悪口言っただけじゃん

あんたには関係ないはずだよ」


「関係なくても、誰かを傷つけることを笑って見過ごせるかよ」


「………」ドキッ!!


「お前のことは知らねーけど、傷付いたんだろ?」


「……うん」


「お前がお前らしく居たくてそういう鬱陶しい性格してるんだったらそれでいいんじゃねーの?

俺には関係ないけどな」


「…………」ドキッ!!


なにこいつ!かっこいいんだけど…

ドキドキしちゃう、やばいよ

私のこの鬱陶しい性格を受け入れてくれるなら…


「じゃあ、私と付き合お?」


「………はあ!?」


気付いたら言葉に出していた

もう止まらなかった

私はこいつが…こばしりが好き

直感だけど…こばしりが好きだ


「付き合わねーよ!」


「なんでよ!いいじゃん!付き合ってよ!」


「気持ちわりぃなお前!」


それからの私の猛アタックは止まらなかった


休み時間


「こばしりー!」


お昼時間


「こばしりー!!」


放課後


「こばしりー!!!」


「うるせー!ぶち殺すぞ!」


こばしりは振り向いてくれなそうだけど

好きな気持ちに嘘はつけないから


そして今日も岩盤浴でこばしりのことを見ていた


「こばしりー汗かいてきた」


「うるせーなー静かにしろよ」


中は暑いのにこばしりは冷たいなー

こばしりに好かれる好かれないは別にどうだっていいんだけど

こんなに手応えがないのも悲しくなるよ


「なあ、マイク、ギターのコードのFってやっぱ難しいのか?」


こばしりはマイクに聞く

こばしり、ギターなんてやってたんだ


「初心者は最初に躓くらしいよ

ついにこばしりも音楽という壁にぶつかったかー」


「ちげーよ、普通に弾けたんだよ」


「は!?ふざけんな!」


「天才ギタリスト現れたって感じだな!」


んー私といる時はそんな冗談も言ってくれない


「こばしり、普段はギター何聞くんだ?」


隣に居た紅衣も音楽の話に食いつく


「X ショパンとかかな?

あと海外だとジョンボビとか?」


こばしりも答える


「お、おい!ジョンボビチョイスはなかなかセンスあるじゃねーかよ!」


「お前も好きなのか?」


「アルバム買ったぞ、ニュージャージー」


「俺もそれ買ったわ!」


「まじかよ!」


紅衣はこばしりの肩を組んだ

……あれ?なに?これ?


「お前もなかなか話のわかるやつだな!」


こばしりも紅衣の肩を組む

ちょっと…くっつきすぎじゃない?

ドイツではそれが普通なの?その距離感

こばしりも女の子に抵抗はないの?

わかんない、わかんないよ


そして岩盤浴から出ても2人は肩を組んでる

お互いの汗を交えながら仲良く話してる

それでも私には


「お前はなんなんだよ、ついてくんな」


そう言ってこばしりはマイクとふーかをつれてどこかに行ってしまう

抑えて…抑えて、私


【ポンッ】


「…!?」


のんが私の背中を叩いた


「……なに?」


「………」


のんは黙ったままだった

そしてついには


「きゅ〜、お前、ふーかより人付き合い苦手なんじゃね?」


紅衣にズバッと言われてしまった

……あんたに何がわかんの?


「紅衣には私の気持ちわからないでしょ!」


私は好きなんだよ…私が好きでやってる事がそんなに悪いことなの?

もういい…我慢の限界


私はこばしりが居るパソコンの部屋に行く


そして


「こばしりの事、好きなんだから」


私は抑えれなかった

迷惑だって思ってても止められない

それは私に友達が増えて、その友達に嫉妬して、また自爆することが目に見えていたから


「お前な、こんな所に来てまでそんなこと言うのかよ」


ふーかは驚いてる、マイクは顔が強張り、こばしりは怒ってる

私1人で3人の感情を揺さぶってる

しかも悪い方向に


「私はどうしたらこばしりと仲良くなれるの?」


恐る恐る聞いてみる

そしてこばしりはまた顔を力ませながら言う


「もう無理だろ、お前はこういうもんだって思ってんだからさ」


「………そっか」


私の行動がこばしりを不幸にさせて

私の言動がこばしりの周りを不幸にさせる

そっか、私はやっぱり鬱陶しい存在なんだ

私らしく鬱陶しい私はやっぱり鬱陶しいだけだ


「きゅ〜ちゃん!?」


ふーかが私の元へ駆け寄る

ふーかはタオルで私の目を拭いてくれた

慰め…なんかいらない

惨めなだけだよ


「私、帰るね」


私はこの空気に耐えられなくなって家に帰る

もう高校生活、諦めよう

私じゃ上手くいかないのはわかってたんだから

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