5小節…モノクロの絆
5小節…モノクロの絆
「というわけなのです!紅衣さん!」
私は昼休みに自慢げに紅衣に話した
紅衣
「んで?こいつらが?」
きゅ〜ちゃん
「超アイドルきゅ〜!井ノ原玖だ!
きゅ〜って呼んで♪」
のんちゃん
「金髪…クリクリのお目目……」
私
「そう!昨日出来た友達!
井ノ原玖ちゃん!松谷乃々華ちゃん!」
紅衣
「アホ!レズ!」
きゅ〜ちゃん
「きっぱり言うな!」
こばしり君は多分こっちには来なそう
なんか睨まれてる気がするし
「きゅ〜ちゃんはこばしり君と知り合いなの?」
私は素朴な疑問を聞いてみた
「知り合いってか中学一緒だしねー
修学旅行も同じ班だったの
ちなみにのんも一緒!」
「あの時、布団でやったこと忘れないよきゅ〜」
「なんもしてないだろ」
賑やかでよかった
紅衣
「2人は飯買った?」
きゅ〜ちゃん
「購買でね!購買に行こうばい!なんつってー!」
紅衣
「あほ」
のんちゃん
「私も買ったよ、媚薬入り」
紅衣
「お前は捕まれ!」
きゅ〜
「なーんであほって言うんだよ〜!」
のんちゃん
「もっと罵って〜!」
紅衣
「近寄んな!2人とも暑苦しいんだよ!」
な、なんか紅衣の方が仲良くなってない??
私のコミュ力はピアニッシモ!?
ピアニッシモ=すごく弱く
きゅ〜ちゃん
「よーし!じゃあ交流の印で紅衣の家にみんなで行こう!」
きゅ〜ちゃんが腕を上げて言う
さささ、賛成!!そういえば紅衣の家に行ったことなかったような
「無理だ」
紅衣がきっぱり断った
無理なの??なんで!?
「水臭いなー部屋ちらかってるなら気にしないぞ?」
きゅ〜ちゃんは紅衣の肩を突ついて言う
「あたしの家、猫居るから大勢は無理なんだよ
ビビリだから隠れるしストレス溜められたら困るから」
紅衣が妙に真剣な眼差しで言った
紅衣、猫飼ってたんだ知らなかった
私、紅衣の家行ってみたかったな
「ふーかだけならいいぞ」
「結婚してください」ニャン
「何言ってんだお前?」
紅衣の家に行くことになりました!
興奮がメゾフォルテ!
メゾフォルテ=やや強く
放課後、紅衣の家に向かってる
紅衣は確かドイツに住んでたから家もドイツっぽいのかな?
「紅衣の家は自由の女神ある?」
「はあ?なんで?」
「ドイツだから」
「自由の女神はニューヨークだぞ?」
「じゃあエッフェル塔は?」
「それはパリ」
「万里の長城は?」
「中国」
「モアイ像」
「イースター島」
「ドイツって何も無いの?」
「お前がばかなだけだろ!!」バウッ!!
そんなこんなで紅衣の家に着いたみたいです
「うわー!これ全部紅衣の家?」
「1部屋だけだぞ?」
「隣は親御さんの部屋?」
「別の人の部屋だよ!アパートだ!見りゃわかんだろ!」
「アパートってこうなってんだ!」
「お嬢様ボケやめろ!」
紅衣の家は1部屋だけらしい
その部屋に入ると私の部屋よりは少し狭い家だった
「飲み物何がいい?」
「水でいいよ」
「お嬢様なのに水でいいのかよ」
文句言いながら紅衣は水を出してくれる
紅衣はミルクティーが好きみたいで自分で作ってた
「あ!これ紅衣のピアノ?」
狭い部屋でピアノだけが目立って置いてある
「あ、そういえば猫ちゃんは?」
見渡しても紅衣の家からは猫が見えない
「隠れてるなーいつもあたしが帰ると寄ってくるんだけどね
リベー!どこいんのー?」
紅衣は猫ちゃんを呼んだ
「出てこないなーそのうち出てくるかな」
「人見知りなの?」
「かなりね、大人数連れてきた時はみんな帰ったあと怒って暴れるんだよ」
「私みたいだね」ニャオーン
「一緒にすんな、リベの方が可愛いわ!」
「あ、じゃあリベちゃんが来てくれるようにピアノ弾こっか♪」
「はいはい、ピアノ弾きたいだけね」
「バレた?」
「全身でそう言ってたぞ?」
では早速、猫踏んじゃったでも弾くかー
【♪〜♪〜〜♪】
「おい、猫にとって縁起悪い曲弾くなよ」
「えー可愛い方がいいかなって」
「どけ!ショパンのワルツ弾く」
「えー!私も弾きたいのに!」
紅衣にどかされて紅衣はピアノを弾く
【♪〜〜♪♪〜♪〜】
ショパンの猫のワルツだ
この曲は軽快な音が重なり、猫が街を自由に散歩しているかのような曲
紅衣もこの曲を表現するかのように軽快な表情でピアノを弾いていた
………それにしてもこのピアノの音…どこかで聞いた事あるような?
そして
「ニャーン!」
本物の猫登場!リベちゃんが来た!
「こんにちは!リベちゃん!」
「ニャーン?」
「へえー珍しいねーリベ
初見で出てくるなんて初めてじゃない?」
「えー!そうなの!?リベちゃん!仲良くしよ!」
「シャー!!」ペシっ!
「いたー!猫パンチ!」
「はっはっは!調子乗んなだってさ!」
い、痛かったけど紅衣が笑ってるならいいや
その後私はリベちゃんにちゃおちゅーるるんをあげてすっかり仲良くなった
初めて家に来て餌まで食べてくれるのは初めてらしくてやっぱりリベちゃんは私に似てるのかもしれない
「てかさ!!紅衣!そのピアノ!」
「ん?」
「ベヒシュタインでしょ!ドイツの!」
「あーそうだよ」
さすが紅衣だよー!
ベヒシュタインはドイツで1番有名なピアノって言われてて歴史上でベヒシュタインを使う音楽家が沢山いるくらい有名なんだよ!
お値段は相当すると思うけど紅衣がこんなにいいピアノ持ってるんだからやっぱ紅衣のレベルは相当高いんだ!!
「このピアノはね、パパに買ってもらったの
私がピアニストになるために」
紅衣はベヒシュタインを優しく撫でる
紅衣、やっぱりピアニストになるんだ
「紅衣のお父さんが?」
「うん」
「お父さんが日本人だっけ?」
「ううん、パパがドイツ人」
「へぇーお父さんは今日本で働いてるの?」
「死んだよ」
「………………え?」
……今…なんて
「パパは、ドイツで事故死したんだ」
「…………」
知らなかった紅衣の過去だった
お父さんが…亡くなった……
私のことじゃないのに受け入れられないような気持ちになってる
紅衣はお父さんを亡くしてもピアノと前向きに向き合ってる
すごいんだ、紅衣って
私はそこまで深く聞けずにいた
紅衣自身は隠したりしないだろうけど
紅衣も暗い話になりそうで嫌だと言って無理矢理話題を変えたりしていた
それと紅衣の事でもう1つ
「ただいまー紅衣ちゃん、友達来てるの?」
紅衣のお母さんが帰ってきた
「うん」
紅衣は一言で返事した
「さて!夕飯前だしふーかのこと送ってくるね」
紅衣は立ち上がった
紅衣が立ち上がるとリベちゃんが紅衣にくっつく
「リベはさっき食べたでしょ?
ご飯はカリカリ食べなさい」
紅衣はリベちゃんに餌を盛る
「紅衣ちゃん、せっかく友達来たんだからご飯食べてもらってもいいんだよ?」
紅衣のお母さんがエプロンを付けながら言う
「いいって、友恵さんの仕事増えるでしょ?」
……友恵さん?
違和感を感じながらも私は紅衣の家を出る
道を歩くついでに私は紅衣に聞いてみた
「お母さんのこと、名前で呼んでるんだね」
私は恐る恐る聞く
「……まあね」
いつになく物静かな表情の紅衣
やっぱ何かあるのかな?
「今日、ふーかをうちに呼んだのもあたしのこと後々話すの面倒だからなんだよね
ふーかにはあたしを知って欲しい」
紅衣が重い口を開く
「どういうこと?」
「ふーかはあたしの1番の友達だから」
「…………」
私は固まった
紅衣と出会って友達と呼べるくらいには仲良くなったつもりだけど
1番の友達……嬉しい
心が痒くなるような気持ちを抑えて私も言う
「わ、私も!紅衣が1番の友達だよ!」
「…………ふ」
言葉が不器用な私を紅衣はまた鼻で笑う
でもそんな関係が私も好き
「だからふーかには言っとくね」
紅衣はまた事実を私に伝えてくれた
「私の母親は、血の繋がってない母親なの
パパの再婚相手なんだ
本当のママはあたしが物心つく前に病気で亡くなった」
「………」
【ガバッ!】
私は思わず紅衣を抱きしめる
「おい、ふーか、別にあたし寂しいから言ったわけじゃないからな?」
「わかってる、でも、私、知らない紅衣を見るのが怖くて…
紅衣は私の知らない間に色々と戦ってきたんだって思うと、紅衣の全部を受け止めたくなったの!」
「さっすがあたしの1番の友達だな!」
紅衣の言葉がまた私と紅衣の絆を深めてくれるようだった
どんな紅衣でも受け止められる自分でいたい
紅衣と、ずっと友達でいたい!
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