2小節…モノクロの友

2小節…モノクロの友


次の日、先輩とは多分別れた

そして別れて私は悲しみを引きずりながら学校に行く

それは別れたからではなくてやっぱり騙されてしまったこと

深い傷が付いてしまった気がする

この先…私は誰を信じていけばいいんだろう

元々友達の居なかった私だから

また振り出しに戻るだけだ


「おはよ」


「っ!」


私の背中を誰かがポンっと押した


勢いよく振り向くと


「……き、き、」


「あたしだよ」


この子は…昨日の


「木村さん!」


「鬼頭だよ!!」バウッ!!


ま、また間違えた


「ごめん…私単純な名前しか覚えられないの」ニャオーン


鬼頭さんが呼んでくれたのにまた失敗しちゃった…


「そんな難しいならあたしのこと下の名前で呼べばいいじゃん」


「……え」


下の名前……


「く、く、クキちゃん!」


「紅衣だよ!"き"から離れろ!!」バウッ!!


紅衣ちゃんかー

結構気さくに話してくれてるけど


「ったく、名前くらい覚えろっての」


私、あなたにまだめちゃくちゃビビってますのー!!

金髪で登校するって大丈夫なの!?

私まで不良だって思われたらさ!


『え、天地さんって…地味なのに陽キャになりたがりの必死さん??

だっさーー!!!あっはははははは!』


だああああああ!!!陽キャにはなれないよ!!

ごめん!紅衣ちゃん!!


「何回も名前間違えんなって言っといてなんなんだけどさ

あんたの名前はなんで名前なの?」


「………私?」


「あんた以外誰がいんの」


「わわわ、私は天地冬華!」


「長い!言いにくい!ふーかでいい?」


「な、なが!?どこが!?」


紅衣ちゃんも私の家族と同じようにふーかと呼んでくれるようになりました


学校に着くと


「ふーか、いつも放課後教室でピアノ弾いてんの?」


紅衣ちゃんが急に話しかけてくる


「そそ、そうだよ!」


「毎日弾いてたの?」


「うん、一応」


「…なら、昨日は悪いことしたね」


「昨日……」


昨日は、色々あったからな…


「じゃあさ、ふーか、あたしも放課後、ピアノ弾いていい?」


「……紅衣ちゃん、ピアノ弾けるの?」


「まあね」


紅衣ちゃんが満面の笑顔で言ってくれた

私はそれがなんだか嬉しかった

ずっと1人でピアノを弾いててそれでも満足してたけど

紅衣ちゃんも一緒なんだ……

最初は怖かったけど、今の紅衣ちゃんはやたら可愛く見えてしまう


そして放課後


「よーし、じゃあ弾くかー!」


紅衣ちゃんが早速ピアノの前に座った


「ちょっと紅衣ちゃん!みんな居なくなってからにしようよ!」


「あのさ、あたしちゃん付けされるの慣れてないから紅衣って呼んでくれない?」


うげげげ!!!

呼び捨てなんて妹にしかしたことないよ…

でも…紅衣ちゃんも……そう言ってるし


「く……くくく……くくくくくく…くぃ!」ニャオーン


「はいはい、焦らずゆっくりいこうね」


にしても紅衣…まだ人がいるのにピアノ弾くの?

みんなに見られたら恥ずかしいよ


「よーし……じゃあ、ふーか弾いてみる?」


「わ、私!?」


「うん、ふーかのピアノここ最近ずっと聞いてたし

また改めてふーかのピアノを聞きたい」


そうなんだ…紅衣、私のピアノをずっと…

昨日紅衣が言ってくれた言葉を思い出す


『あんたのピアノ、あたしは聞いてたよ』


紅衣がずっと聞いてくれてた

それが嬉しくて舞い上がっちゃいそう

こんなに近くに私のピアノを聞いてくれる人がいる

それなら私は、もう迷う必要なんてない!

見てて欲しい!紅衣もこの教室にいるみんなも!


私は椅子に座ってピアノを弾いた


【♪〜〜♪〜♪】


「ふ、ふーか……」


紅衣も驚いてる表情だった

どうだ!


「めちゃくちゃじゃねーかよ!!」バウッ!!


「えええええぇぇぇ!!」ニャオーン


な、何がめちゃくちゃなの!?


「なんか忙しないピアノだったな

いつも聞いてる時は音が楽しそうだったぞ」


「……音が楽しそう?」


「うん、なんつーか今のふーかのピアノは

カッコつけてるって感じだった」


「うん、図星です」


だってみんな見てる前で弾いたことなんてないんだもーん!!

カッコつけたくなるー!


「じゃあ紅衣も弾いてみてよ!」


「……いいよ」


紅衣も椅子に座る

そして紅衣の指が鍵盤弾く


【♪〜〜〜〜】


「……………!」


紅衣はたった1音鳴らしただけだったのに

一瞬にしてその世界観に引き込まれるようだった

そして


【♪〜〜♪〜♪】


シューマンの飛翔という曲

この曲はテンポの早い曲で尚且つ力強く、様々なテクニックが組み込まれている

表現もさながら飛翔という感じで

これから羽ばたく準備をしているかのような音の乗せ方だった

昔学校の帰りに聞いたあのピアノの音を思い出す

なんでだろう、あの時と同じような感覚に戻ってるみたい


「………紅衣…凄い!」


私は思わず拍手を送る

そんな紅衣表情は


「…………」


笑ってない

…どうして?

私だったらこんなに上手なこと自慢してるのに


「紅衣、いつからピアノやってるの?」


「3歳の頃から」


「3歳……格が違うか…」


私は小学校3年生の時だもんなー

紅衣のピアノは神


そして夕方になるまで私と紅衣のピアノは続いた

こんなにも楽しくて、時間があっという間と感じるのは初めてだった


「紅衣、ありがとう、昨日のこともあってまた紅衣に救われた気がするよ」


私は本心を伝えた

すると紅衣は


「……私も、ピアノ弾くの1年振りだったからさ」


「………え?」


1年振り??


「えええーー!!!!1年振りであんなに上手に弾けるのおおおー!!」ニャオーン!!


「んまあねー

でも、おかげで色々と思い出せた気がする

あたしこそありがとうだよ、ふーか」


「……あはは!」


私は人生初

ピアノ友達が出来ました!

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