第6話 初夜?

 エリカを目覚めさせた後、既に夜だが色々と2人で話しこんだ。

面識はあっても人間とホムンクルスという立場では初対面だしな。

エリカは居間の椅子に腰かけて美味しそうにお茶を飲んでいる。


 彼女には俺が事前に用意したものを着せていた。

少女を造るつもりが無かったので事前に用意していた物は全てセクシーな下着とネグリジェである。

ジジイがこれを手に入れるのは苦労した。ほんっ……とうに、色々な意味で。

女性用下着は基本ぴちぴちなのでエリカの体付きでも何とか着れた様だ。

だが、明らかにサイズ違いの上の下着は無理だった。

身に着けているのがあどけない少女という事もあって背徳感が半端ない。

今は一応上にガウンを羽織らせてある。


 それにしても美しい少女だ。

間近で見てなお一層そう感じる。

金髪碧眼、大きめの目に長いまつげに形の良い鼻と口。

形も大きさも良い全てのパーツが絶妙な位置で配置されている。

貴族は先祖代々容姿的に品種改良されている様なものだし美しいのは当然だ。

ましてやこの子は王族だしな。

……これで大人だったらなぁ。


 話してみて感じたがこの子は年のわりに話題が豊富で頭の回転も速いと感じる。

王族として色々な場でコミュニケーション能力が磨かれているからだろう。

若干コミュ障気味の俺よりはるかに人慣れしている。

そんなエリカとの会話は意外と楽しく、あっという間に時間が過ぎていった。


 気が付けば深夜になっていた。

話は尽きないがようやく寝る事にしてエリカを寝室に案内する。

俺はずっと一人暮らしだが、寝室にはベッドが2つある。

急に用意したわけではない。

自分用と犬のくせに床で寝てくれないアイン用である。

寝ていたアインを無理矢理起こして寝床を片づけ、予備の綺麗な布団でベッドメイクする。

とりあえずここで寝てもらおう。

アインはこれから俺と一緒に寝る事になるのを露骨に嫌がっている様子だった。


「ちょっと話過ぎて遅くなったけど、寝ようか。」

「はい。」


 長く話し込んだおかげで俺は彼女が急速に身近になった気分になっていた。

エリカもそうなのだろう。

しかし当然の様にガウンを脱いで微笑むのは予想出来なかった。

ガウンを脱いだ彼女の姿は幼いながらも体の線が出ていて妙に色っぽい。

俺は慌てて目をそらし自分の寝床に入った。

するとエリカも当然の様にこちらのベッドに潜り込んできた。

俺の腕を抱いて体を押し付ける。


 いやいや、ちょっと待て。

君はそういうキャラだったのか?

王女のイメージが良くも悪くも壊れたぞ。


 驚いて固まっている俺をエリカは上目遣いで見ていた。

何か言いたげな俺の気持ちを察したのか、微笑んで答える。


「あら、私だって普通の女の子ですから、人並にこういう事には興味はあるんですよ。」


 いやいや、普通じゃないでしょ。王女様でしょ。

いや、ホムンクルスかこの娘は。


「でも、こういう事は……。」


 俺は誤って妹のエリーザ王女を創造してしまったと知った時から性欲が無くなっていた。

身体は若返ったから今の俺の性欲は以前よりあるはずなんだけど。

そんな俺の気を知ってか知らずかエリカは幼い身体を俺に預けてきた。


「大丈夫ですよ。確かにご主人様が若返る前は年齢的にどうかと思いますが今は同世代じゃないですか。」

「いや、同世代と言っても君はまだじゅう、ムグッ!」


 口を口でふさがれた。

いい年こいて頭がトロンとなる。

どっちが年上なんだ。


「君は……。」

「ほら、また……君はやめてください。エリカですよ。」

「あ、ああ。エリカ、君は本当にその、いいのかな?」

「はい、もちろんです。私自身は私と違って王女じゃないですしね……誰に遠慮する必要もないですよ。」

「そうは言っても、ムグッ!」


 再び口を口でふさがれた。

そのまま体重を俺に乗せてくる。

甘い匂い、柔らかい身体、熱い体温。

心臓の音が体の中でドラムの様に響いてくる。頭がぐらぐらする。


 ああ、儂、いや俺は18歳に生まれ変わって早々にエリカと共に大人の階段を上ってしまうのか?

頭の中が甘い香りに支配されそうになり慌てて引きはがす。


 いかん。

何をどきどきしているんだ、俺は。

いくら美少女でも、相手から迫ってきても手を出すわけにはいかない。

なぜなら俺はどちらかというとボン・キュッ・ボンのグラマラスな女が好きだ。

女が欲しくてホムンクルスを作ろうとした俺だが、変態には変態の矜持がある。

手を出す事はまかりならん。

のぼせた頭で必死にそう考える。


 しかし、いつ宗旨替えして理性が崩壊するのか段々怪しくなってきた。

なにせ幼くても恐ろしいくらいの美少女なのだ。

おまけに年齢に似合わず態度が妙に色っぽい。


「きょ、今日はまだやめておこう。君も生まれたばかりだしね。」

「えっ? なら、いつ頃ならいいんですか?」


 いや、いつ頃と言われても。う~む、何と答えたら……。


「もう少し君が成長したらね。」


 とりあえずそう口に出す。

そうは言ってもホムンクルスは肉体的にほぼ成長しないはずだ。

結果的に嘘をついている感じになってしまった。

エリカは少し残念そうな顔をしたが、すぐに気を取り直したのか腕に抱き着いてきた。

俺達は一つのベッドで就寝した。

もちろんただ睡眠しただけだ。

エリカは熟睡している様だったが俺は寝れなかったのは言うまでもない。

 

 結局アインを追い出して用意したベッドは意味が無かった様だ。

アインの為にベッドメイクし直したようなものである。

既に本人?はご苦労と言わんばかりに新品のシーツの上に丸まって寝ていた。

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