第50話 兄と妹 2人の時間

新衣装制作が決まって2週間後。

今日の配信を終え、リビングで休憩をしていると、希空の部屋が勢いよく大きな音を立てて開いた。


「せあ兄!新衣装できたよ!ちょっと部屋に来て!」


23時と言う1日の疲れが溜まっているこの時間帯で、どこからその元気な声を出せるのだろうか。


希空に引っ張られ部屋に入る。部屋に置いてあるモニターの画面を見ると、新しい衣装のデザインが映っていた。


白色のカッターシャツに黄色と青色のチェックのネクタイ。カッターシャツの上から濃い青色のカーディガン。肌色と黄色を混ぜたような色のスラックス。俺たちが普段来ている制服より、明るい色でオシャレな雰囲気になっている。


「お〜中々オシャレじゃん!」

「せあ兄、これで満足してもらったら困るよ!まだまだ隠し球はあるから!」


希空はキーボードとマウスを少し操作する。

するとモニターに映っているデザインが変わる。


カーディガンの着脱が可能みたいだ。更にカッターシャツの上から紺色の上着も着れる見たいだ。


「希空・・・お前天才か」

「ふふん!もっと褒めてくれても良いんだよ」

「可愛い!すごい!流石俺のできる妹!」

「せあ兄・・・そんなに言われると流石に照れる・・・」


少しの沈黙が流れた後、希空は椅子に座りまたパソコンと向かい合った。


「まだ、やるのか?」

「まぁ、イラストはできたけど2Dモデリングはまだやってないし」


『2Dモデリング』簡単にいったらイラストを加工してアニメーションをつけたアバターにすると事。


実はこの作業が1番大変だったりする。髪の毛の揺れ具合や口の開き方。目のまばたきなどを物理演算とかを使って作っていかないといけない。ある程度自動でやってくれる物もあるが、細かいところは流石に人間の手で調整をしないといけない。


「じゃあ、今日の皿洗いは俺がしとくな」

「それは、もう私がやったよ」

「何から何までありがとうございます」


自室に戻り、時期にある中間テストに向けて少し勉強をした。勉強はあまり得意ではないので欠点回避の為、少しずつ勉強はしなければならない。


あっという間に日付が変わった。一応、希空の部屋を覗きに行く事にした。扉を静かに2回ノックし扉を開ける。中には予想通り、机に伏せて寝ている希空の姿があった。


流石にそのままというわけにはいかないので、希空を抱えあげ、隣のベットまで連れて行く。


「希空って肌も綺麗だな。毎日自分磨きを怠っていないし、家事もやってくれる。更に趣味に本気で取り組んでいる。やっぱり希空には敵わないな」


上から布団をかけて、電気を常夜灯にする。そして静かにドアを閉める。


「お休み希空」


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私、八神希空は扉が閉まった事を確認した後、ゆっくりと目を開ける。それで、徐々に顔に熱が昇ってくる。


『急に肌が綺麗とか言い出したら普段言わない事ばっかり言って!口説いてるのってぐらい褒めて!はぁなんで目覚めたんだ私。寝たままでいてよ』


私は心の内で叫んだ。実の所私はせあ兄が私を持ち上げた辺りで目は覚めていた。流石に起きるはまずいと思い寝たふりをしていたらさっきのあれだ。


「私も感謝してるよせあ兄。いつも私のわがままも相談も聞いてくれて。これからもこんな私をよろしくね。おやすみせあ兄」


まぁ、直接せあ兄には絶対言わないけど。

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