第48話 BBQそして日常へ

360度全方向からお肉と炭の匂いが漂っていて食欲を刺激する。横には川が流れており、シチュエーションも中々のものだ。


そんな中俺はひたすら、肉、野菜、ソーセージなどを焼いている。それも自分の分だけではない。蒴、胡桃、月奏の分もだ。合計4人分の食材を1人で焼いている。第3の手が欲しいと、ここまで思ったことはなかった。


なぜ俺が肉を焼く係になっているかと言うと、俺しか肉を焼いたことないらしい。女子達はともかく蒴は本当に焼いたことないのだろうか。


「肉焼けたぞ!そこの野菜も早く食べないと焦げるぞ!」

「わ〜美味そう。ありがとうせーくん」

「どういたしまして。じゃねーよ手伝え」


一旦落ち着いたので、自分の分の肉を食べる。

タレをかけ、肉を口に運ぶ。口の中で肉の旨みが広がり溶けていくようだ。流石国産A5ランクと言った所だろうか。しかし、このまま1人で焼き続けるのは流石に大変だ。


「あの、皆さんお願いします。焼くの手伝って下さい」

「流石に、こっちとしても申し訳なくなってきたから私手伝うよ」

「ありがとう。神様、月奏様」

「仕方ないねせーくん。ソーセージは私に任せて」

「もうちょい働け!」

「火の管理は俺に任せとけ」

「それは、結構助かるかも。任したぞ」

「任された」


各々で役割を決めて、またお肉を焼き始める。


「せあくん、お肉の焼けたかってどう判断してる?」


新しい肉を金網に乗せながら月奏が質問をしてくる。


「そうだな、いい感じに色が変わったら裏返す。薄い肉ほど早く焼けるぞ」

「わかった。とりあえず感覚ね」

「そういうこと!」

「はい!せーくん先生!」


次は胡桃がソーセージと睨めっこしながら質問をしてくる。


「ソーセージはどのくらい焼けばいいですか?」

「ソーセージはしっかり焼かないといけないからな。生だったら大変だから気をつけろよ。俺的には、表面が少し焦げてくるぐらいが丁度いいかも」

「了解であります」


最後に蒴からの質問だ。


「炭はどのくらい入れたらいい?」

「まぁ焚き火みたいに一周するくらいかな?ちゃんと空気が通る空間を作れよ」

「がってん!」


そのまま順調にBBQは進んだ。40分もすれば肉も野菜食べ終わり、紙皿の上は綺麗になくなった。


「美味しかったね〜。けどこれで遠足も終わりか〜。そうだ!みんなで写真撮ろう!」

「お、いいな!撮ろうぜ!」

「せーくんとるーちゃんも」


河原を背景にみんなで固まる。胡桃が手を伸ばし内カメで写真を撮る。シャッター音がなり、フォルダを確認する。


「いい感じ!みんなにも送っとくね」

「ありがとう胡桃、それじゃあ片付けするぞ」


重いBBQコンロは蒴が片付けて貰い、椅子などは胡桃と月奏が片付けてくれた。俺は出たゴミをゴミ袋にまとめてゴミ捨て場に向かった。


「あ、先輩!こんにちは。肉美味しかったですね」


ゴミ捨て場に向かって歩いていると、同じくゴミ袋を、持ったひなが後ろから追いかけてきた。


「お、ひなか。そうだな、A5ランクなんて中々食べれないからな」

「まぁ、一切れだけでしたけど。そんな事より先輩、私に謝る事ありませんか?」

「え?俺なんかしたか?」

「なんかした?じゃないですよ!私のモーニングコール途中で切っといておいて!」

「あ〜、あれか。すまん眠くてすぐ電話切ってしまった」

「美少女のモーニングコールより睡眠が勝ったんですか?先輩これだからモテないんですよ!」

「な、失礼な!睡眠は生きる上で大切だぞ」

「はぁ〜。まぁいいですよ。私なんてどうせ睡眠以下ですよ」


ゴミを捨てながら、拗ねているひなの機嫌を直そうとするがこういうのは苦手だ。


「ひな、機嫌戻してくれよ」

「そうですね。それじゃあ、一緒に写真撮ってくれたらいいですよ」


そう言って河原の方まで連れて行かれる。


「それじゃあこの石に座って写真撮りましょ!」


少し大きな石に座り、河原を背景に写真を撮る?


「先輩ほらもっとよって!ピースして!」


シャッター音が鳴り、フォルダで写真を確認する。


「今日の先輩は写真写りいいじゃないですか」

「お!マジか。それはよかった」

「それじゃあ、バスに戻りますか。また今度会いましょう先輩。次会うのは事務所ですかね〜」


そう言うと俺の耳元で囁く。


「事務所では私が先輩だから敬語を忘れない事!いいね」

「・・・わかってますよ陽奈先輩」


仮にも可愛い後輩が耳元で囁いたら流石にビックリするし、照れる。手を振りながらひなはバスの方へ走っていった。


少し暖かい風が早くも夏の訪れを感じさせる。

周りの風景を眺めながら俺もバスに戻った。


帰りのバスはとても早かった。なんせ全員爆睡していたからだ。気が付けば学校前にバスが止まっている。今日はこののまま流れ解散となった。


キャリーケースを転がしながらなんとか家に到着した。家に着いた頃にはもうヘトヘトだった。


「ただいま〜」


ドアを開けるとエプロン姿の希空が出迎えてくれた。


「おかえり〜。ご飯もうちょいでできるから、風呂でも入ってきなー」

「ありがとう。久しぶりの希空の料理だ」

「言うても2日ぶりだよせあ兄」


2日間の遠足が終わり、また普段の日常が戻ってくる。

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