第44話 「遠足それはお近づき⑩
時は少し遡る。俺たちが丁度温泉に浸かっている頃、胡桃と月奏も温泉に浸かって心身共に癒されていた。
「温泉サイコ〜!生き返る〜」
「るーちゃん、おじさんみたいだね」
「胡桃も気持ちよさそうに入ってるね。今にも溶けそうだよ」
「いや〜、やっぱり温泉はいいよね〜」
私、如月月奏は肩まで温泉に浸かり、今日の疲れが抜け癒されていくの実感している。やはり温泉は最高だ。
「それにしてもるーちゃん肌綺麗だね〜。更にスタイルも良い。なにを食べたらそんなに育つのかわからないな〜」
私は胡桃の視線が私の顔の少し下に向いているのを感じた。
「ちょっと胡桃!どこみてるの!」
「どこって・・・胸だけど」
「どうどう言うな!」
「いや〜羨ましいですな。何を食べたらそんなに育つの?」
「そんなの知らないよ!言うけど胡桃だって可愛くて、スタイルいいじゃん。告白されたりするんじゃない?」
胡桃だってスタイルがいいし、元気で可愛い、好きになる男の子は何人もいるはずだ。
「まぁ、たまにあるね。けど全部断ってるね」
「え〜、なんで?」
「なんせ・・・」
胡桃の目がキラキラしているように見えた。
「私は夜廻様一筋だから!」
「な、なるほど・・・」
忘れていた。彼女は私の同期「夜廻星空」の大ファンだということを。
「なんの話してるんですか〜?」
煙の向こうから聞き覚えのある声がした。
先輩で後輩で神出鬼没のあの人だ。
「なんの用?ひな」
「あ!入学式で話してた子!」
「しっかり話すのは初めですね時雨先輩。改めまして来栖ひなです」
「こちらこそ初めまして2年生の時雨胡桃だよ。よろしく〜。あ、胡桃でいいよ」
「了解です。胡桃先輩それで、なんの話してたんですか?」
ここでひなが登場。私にはややこしい事にならない事を願うしかないな。
「私の推し、夜廻様の話」
「あ〜、配信者の夜廻星空?」
「そう!」
「それならたまにみてますよ〜」
「もしかしてひーちゃんも夜廻様推し」
「いや、推しではないですね」
「君も夜廻様推しにならないか?」
「なんか聞き覚えのある勧誘方法ですね。それなら、私よりそこにいる月奏の方が詳しいんじゃないですか?」
ここで急にヘイトが私に向いてきた。マジでめんどくさい事を・・・
「ちょ、ちょっと配信を覗いただけだよ」
「見たなら言ってよ〜。私と語り合うよ!」
「私、語り合えるほど知らないよ」
嘘です。ごめんね胡桃。
「そういえば最近思うんだけどさ」
胡桃が口を開く。
「せーくんてさ、夜廻様と声似てる気がするんだよね〜。」
私とひなはビクッと体を震わす。星空くん、やばいよ、疑っているよ。何とかして誤魔化さないと。
「そ、そうなんですね〜」
「へ、へぇ〜」
「興味なさそうだね」
「まぁ、友達が推しの配信者なんて漫画の話みたいな事はないと思いますよ」
少しの間の沈黙の後また胡桃が口を開く。
「それもそっか〜、まぁゲームオタクのせーくんが夜廻様な訳ないか〜」
私とひなは思っているだろう。「実はゲームオタクのせーくん=夜廻せあです」
これ以上はどうなるかわからないのでそろそろ温泉から上がりたい。
「それじゃあ、のぼせる前にそろそろ上がらない?」
「そうしよ〜!」
「賛成で〜す」
全員で温泉から上がり、更衣室へ向かう。なんとかこの場は乗り切れそうかな。
「ひーちゃんもスタイルいいね。何を食べたらそんなに育つの?」
「胡桃先輩もスタイルいいじゃないですか〜。
後、女の子の魅力は胸だけじゃないです!」
「後輩に慰められた〜!!」
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