第38話 「遠足」それはお近づき④

「行ってきまーす」


いつもより少し小さな声で挨拶をする。しかし返事は帰ってこない。妹はまだ寝ていて朝日が出て少ししか経ってないからだ。鍵をかけ、今日は自転車ではなく歩いてる学校へ向かう。

40分ぐらい歩きなんとか学校へ辿り着く。

教室へ向かうとほとんどの人が集まっている。


「せーくんおっはよー」


朝一から胡桃の元気な声が耳に入ってくる。更には今日はいつもの制服ではなく私服だったので雰囲気が違った。黒のスカートに白のショルダーカットトップス、単純だがとても似合っている。


「おはよう胡桃、その服とても似合ってるぞ」

「そう?ありがとう」


胡桃は一周くるっと回って可愛くポーズをとる。


「そういえば月奏と蒴は?」

「蒴はトイレだよ。月奏はまだ見てないよ。一緒に来なかったの?」

「昨日一緒に行けないって連絡来たんだ」

「そうなんだまぁそのうちくるんじゃない?」


少し待っていると蒴がトイレから帰ってくる。


「お!星空来てんじゃん。おはよう」

「おはよう。蒴」


グレーの少しダボっとしたズボンに青と白のフード付きのパーカーを来ている。こちらもいつもと違って私服な為イメージがガラッと変わる


「前買った服似合ってるじゃん」

「そりゃ俺が買った服だからな似合ってもらわないと困る」


自信満々に答える。その後他愛もない雑談しているが月奏はこず出発5分前になってしまう。


「るーちゃん遅いね」

「結構やばくね。5分前だぞ」

「連絡も何もないな」


みんなで心配していると、廊下の方から走っている足音とキャリーケースのローラーが回っている音が聞こえる。音は教室の前で止まり、すぐに教室の後ろのドアが開く。


「間に合った〜」


少し息切れしながら教室に入って来た月奏は息を整えつつ俺達が集まって来ている所へ歩いてくる。

膝あたりが破けているオシャレな白のジーンズに緑のドロップショルダーTシャツ。その上に

パステルグリーンの少しダボっとしているカーディガン。肩からは財布などの小物が入る小さなショルダーバック。いつもと全然雰囲気が違う為少し大人っぽく見える。


「るーちゃん遅かったじゃん心配したよ?」

「ごめんね。昨日楽しみ過ぎて中々寝れなかったの」


そこで月奏が嘘をついている事に気づく。

昨日、月奏は「2日間配信出来ないから沢山遊ぶ」って言うタイトルで配信し夜遅くまでゲームをしていた。そのせいで寝坊したのだろう。


「夜更かしはしすぎるなよ」


俺が少し意味深い感じで言うと一瞬ビクッとしたがすぐに取り繕う。


「だから楽しみで寝れなかったんだって〜」


その後みんなでどこを回ろうかと話そうとしていたらバスへ移動を促す放送が入り、教室を出てバスへ向かう。


「バスの席どうする?」


バスに入ろうと並んでる最中キャリーケースの上に座っている胡桃が聞いてくる。


「グッパでいいんじゃない」


珍しく俺が最初に意見して為一瞬驚きの目を向けられるがみんな賛成しグッパをした。

結果、俺と蒴、胡桃と月奏になった。


俺たちの1つ前の席に胡桃と月奏が座った。

バスが動き出す前に前の席から胡桃が顔を出してくる。


「麻雀しない?最下位の人は1位の人の荷物もち1日」


「のった!」


窓側に座っている蒴がノリノリで返事をする。

聞いてきたって事は胡桃の隣に座っている月奏もするつもりなのだろう。


「いいよ」


少し歯切れ悪く言う。


「じゃあアプリのリンク送るからダウンロードしてね」


そう言うと前の席に姿を隠した。

俺は焦っていた。すぐにスマホの電源を入れキーワードを入力する。「麻雀 ルール」

なぜそんな事調べているのかと言うと……


「俺、麻雀やった事ね〜」


心の中で俺は叫んでいた。

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