第37話 「遠足」それはお近づき③

買い物が終わり、ショッピングモールの3階にあるフードコートに向かった。そこにはうどんやハンバーガーショップなどそして今日のお目当て海鮮丼の店がある。


「結構種類あるんだね。更に値段が高い」


ユッケ丼、ウニ丼、イクラ丼その他沢山の種類がある。高いものは3000円近くする。俺の左隣にいる妹と海鮮丼を食べに来たはずだが俺の右隣には別の人がいる。


「別料金払ったら魚の量増やしたり、ゆで卵とか追加できるみたいですよ〜」


しゃがんで下の方に貼ってあるカスタムメニューを見ているのはさっき本屋さんで会ったひながいる。


「なんでいるんだ?ひな」


するとこっちを見上げながら言う。


「そんなの奢ってもらう為に決まってるじゃないですか」

「奢る理由がないけど」

「先輩だからですよ」


すると反対でメニューを見てた希空が口を挟む。


「いいじゃん別に奢ってあげても。せ・ん・ぱ・い、なんでしょ」


希空があざとく言ってくる。しかし前一緒にラーメンを陽奈先輩としてのひなと食べに行った時は奢ってくれなかった。いや、あれは俺がワックスの付け方を教えてと頼んだからか。


「わかったよ好きなの一個頼み」

「やった〜!ありがとうございます」


立ち上がるとメニューを見だした。少しして全員注文が決まった見たいだ。


「私はマグロ丼」

「私はマグロサーモンユッケ丼」

「了解。それじゃ2人は座る席探して来てくれる?」

「オッケー」

「ラジャーです!」


2人はそのまま空いてる席を探しに行った。

俺はレジで注文を始めた。


「合計7200円になります」


思っていたより値段が高かった。俺は財布からお金を取り出してトレイに乗せた。そして、呼び出し用の機械をもらった。財布の中身は結構寂しくなっていた。


フードコート内を歩いて2人を探していたら、奥の方で希空が手を振っているのがみえた。

着くとテーブル席なのに隣同士で座っている希空とひながいた。俺は逆の方へ座る。


「なんで2人は横に座ってんだ?」

「さっきまでは向かいあって座ってたんだけど

ひなお姉ちゃんが見せたいものがあるって言うから今隣に来てたの」

「そうなんですよこれ見てください」


俺は机越しにひなのスマホを覗く。そこには陽奈先輩にパシられている俺のイラストが表示されている。


「これねノアって言うイラストレーターなんだけどとてもイラスト上手いんですよ更にタイトルが先輩にパシられる後輩」


ひなが半笑いで話す。

俺はこのイラストを見たことがある。そうこれは希空が描いたイラストだ。ひなの隣に座っていた希空は照れていた。まぁ仕方ない事だ。自分の絵が目の前で褒められているのだから。


「どうした希空ちゃん?顔を赤いけど」

「あ、大丈夫だよひなお姉ちゃん」

「体調悪いならちゃんと言いなよ」


その後もひなはノアが描いた沢山のイラストを見せてきた。ほとんど知っていらイラストだが、たまに初めて見るイラストもあった。沢山褒められて希空はスライムのように溶けていた。その後空気を読むように呼び出しのベルが鳴った。


「それじゃ取りに行こか」

「はーい!」

「……はい」


希空はもう褒められてすぎて疲れていた。まぁ褒めていた本人は隣にいたのがその人とは思ってもいないだろう。俺は小さな声で希空に話しかける。


「大丈夫か?」

「せあ兄、今はまだ大丈夫だよ。まさか褒められすぎて疲れるとは思わなかったよ」

「それはそうだな」


各々料理を受け取り元の席に戻る。するとひながまた口を開く。


「それでのそのノアって人ね最近はV配信者のイラストを書いていることが多いんですよそれで……」


すると希空がビクッと身体を震わす。それもそのはずまだノアについて話そうとしているからだ。このままでは希空がもたない。なんとかして話題を変えなければいけない。


「ひなわかった。ノアってがすごいってことはよくわかったから一旦落ち着いて」

「もう〜なんなんですか急に?」

「えっと……ほら早く食べないと折角のご飯が冷めてしまうだろ」


俺はそう言うと陽奈は笑った。希空もクスクスと笑っていた。


「星空先輩海鮮丼なんだから元々冷えてますよ」


俺はそれを理解して恥ずかしくなる。

しかしそのおかげか話題は他の事になり希空は何とか一命を取り留めた。


「「「ごちそうさまでした」」」


各々食べ終わった後皿を戻してショッピングモールを出た。


「せあくん達はこれからもう帰る感じ?」


ショッピングモールの駐輪場に向かっている途中、隣を歩いているひなが聞いてくる。 


「そうだな、明日は朝早いし帰るで」

「そうですかなら一緒に帰りましょう」

「ひなお姉ちゃんってどこに住んでるの?」

「希空ちゃんの家の近くだよ。意外とご近所さんなんだよ」

「へぇー知らなかったよ」


自転車を取り出して後ろに妹を乗せる、買った服はひな自転車の前カゴに入れてもらった。そしてそのままペダルに足をかけ川沿いを漕ぎ家を目指した。

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