第29話 「帰宅」それは訪問
もう一本飲みたいって騒いでる空音さんを連れてなんとかお店を出た。
「とりあえず帰りましょう」
「えーもう一回飲みた〜い」
「家で飲んでください!家どこですか?」
「えっとねー……」
酔いながら住所を言われた。そこで一つの疑問が生まれる
「俺と住所ほとんど一緒じゃねーか」
俺のマンションは9階建てだ。おれはその5階の503に住んでいる。そして今空音さんが言った住所は俺の1つ上の部屋603だった。
「とりあえず帰りましょうか。送りますよ。まぁ必然的なんですけど」
空音さんに肩を貸して、なんとか電車に乗り家の近くまで帰ってくる。なんとかマンションに着いてエレベーターが来るのを待つ。着いたと思ったら中に人が乗っている。
「あれせあ兄?って誰その人何?飲んでたの」
少し引くような目で見られる。
「違うよ。俺のマネージャー。なんかアルコール一杯飲んだらこうなった」
「アルコール弱すぎでしょ」
「ん?前にいる可愛い子は誰?」
急に空音さんが話し出した。
「始めして妹の希空です」
「せあくんの〜妹ちゃんかー。美少女だね〜。
これからよろしくね〜」
「よ、よろしくお願いします。」
挨拶を終えたら希空が小さな声で聞いてくる。
「てかせあ兄なんでこの人連れてきたの?家に連れ込むつもり?」
「そんな訳ないだろう。この人俺たちの上の部屋に住んでるんだよ」
すると希空が更に嫌な顔をする。
「てかなんで外いるの?」
「夜食買いにコンビニへ行こうと思って」
時間は21時前というのもあり辺りは真っ暗だった。
「流石に夜女の子1人は危ないよ。空音さん家に運んだら俺も一緒に行くよ」
「へぇ〜紳士的じゃん。今のはポイント高いよ」
「何のポイントだよ」
「優しいポイントかな?それじゃ私も一緒に着いていくよ。荷物持ってあげる」
「ありがとう助かるよ」
荷物を希空に預けてエレベーターに乗り空音さんの部屋へ向かう。
「空音さん部屋着きましたよ。鍵どこですか?」
「ポケットの中にあるよ〜。せあくんとって〜」
そう言われて俺は空音さんのポケットに手を入れて鍵を探す。
「ちょっとせあくんどこ触ってるの〜」
すると希空に睨まれる。
「どさくさに紛れてセクハラ?せあ兄?」
「してないよ!てかそんな事言うなら自分で取って下さい!」
「嘘だって〜」
すると鍵が見つかり部屋を開ける。そして玄関に空音さんに座らせる。
「それじゃ帰りますね。鍵はポストの中入れときますので」
「すぅ〜すぅ〜」
座らせて数秒なのに空音さんはもう寝ていた。
「……希空どうする?」
「……一応ソファーとかベットとかに連れて行ったほうがいいんじゃない。これ朝起きたら体至る所痛いと思うよ」
「……どうやって運ぶ?」
「……お姫様抱っこ?」
「この状態でおんぶは難しいよな。……やるか」
俺はしぶしぶ覚悟を決めた。
「私はここで待ってるから。早く戻って来て。
後、変な事しないでよ。後酔っている女は何するか分からないから気をつけて」
「わかってるよ!!」
俺は空音さんの膝の裏と背中に手を回してゆっくりと持ち上げる。すると必然的に顔が近くなる。アルコールを飲んでいなかった空音さんは優しいお姉さんみたいな雰囲気だが、寝ている時は無邪気な女の子みたいだった。少しアルコールの匂いもするが、いい洗剤の匂いもしている。廊下を歩くと左にある部屋のドアが空いている。そこは自室のようだった。ベットも置いてあった。
「お、お邪魔します」
小さな声で挨拶し部屋に入る。部屋の中はオシャレでいかにも大学生っていう感じだった。
ベットに空音さんを寝かして布団をかける。
すると空音さんの目目が少し開く。
「…ここは?」
「空音さんの部屋です。それでは俺は帰りますね。鍵はポストの中入れておきますので。お休みなさい」
「うん。ありがとう〜。あ!そうだ〜せあくんも一緒に寝る?」
急な一言に俺はびっくりして、少し焦る。
「や、やめときます。お休みさい」
「それじゃまた今度一緒に寝よーね。お休み〜」
俺は部屋のドアを閉め玄関に戻る。
「おつかれ。大丈夫だった?」
「まぁなんとか」
「無事で何よりだよ。それじゃコンビニ行こっか」
俺はドアそっと閉めて鍵をかける。そしてそのままポストの中に鍵を入れた。
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