第19話 「下校」それはお誘い

「一緒に帰らない?」


突然の一言だった。放課後で教室内は人がまばらだった。窓の外からは運動部達のかけ声が聞こえる。そんな中、後ろから肩を2回優しく叩かれ振り向くとこの一言だ。

急な一言で俺は焦る。相手が男友達ならいいのだが、相手は女子さらに美少女。


「急にどうしたるのん?いいけど俺自転車だぞ」


俺は平然を装いつつ返事をする。


「私も自転車だから大丈夫だよ。じゃあいこっか」


そのまま2人で教室を出て自転車置き場へ向かう。


「今日の配信は何時からなの?」

「8時ぐらいかな。そんな長くならないと思う」

「わかった。それじゃ楽しみにしてるよ」

「俺の謝罪配信、笑いながらミラーしな」


そのまま自転車に乗りいつも通り河川敷を通り家を目指す。


「私こんな道あるなんて知らなかった」

「るのんは引っ越ししたばかりだもんな」


少し狭い道を2人並んで帰る。夕方になり川に夕日が反射している。


「とても綺麗だね。私もこれからこの道を通ろかな」

「いいじゃん帰り道ここ通ると心が落ち着くんだ」


自転車を漕いでいると月奏がブレーキをかけた。それに合わせて俺もブレーキをかける。


「どうした?何かあった?」

「あそこにベンチあるじゃん。座って少し話さない。景色も綺麗だし。」


月奏が指差した先にはベンチがある。綺麗な景色も見えていいところだ。


「いいよ」


自転車を押してベンチの近くに止め、ベンチに座る。真ん中より少し端に座ると月奏はすぐ隣に座る。


「あの月奏そんな真横に座らなくても」

「私が横に座るのは嫌?それとも私じゃなくてあのひなさんがいい?」

「いやそう言うわけじゃないよ。あとひなは関係ないじゃん」

「なんで?せあくんひなさんのこと好きじゃないよ」

「ちょっと待って俺ひなのこと好きじゃないぞ」

「そうなの?あんなに照れてたのに」

「てか配信者なんだし恋愛なんてそうぽんぽんできるものじゃないよ」


納得したと思ったら急に質問を変えた


「それじゃ、なんでLive withに所属しようと思ったの?」

「先に月奏の理由を聞いてもいい?」

「いいけど大したことないよ。」


一呼吸置いたら話しだした。


「私は小さい頃に父を亡くして、母にずっと育ててもらってたんだ。だからお母さんを少しでも楽させようと思ったけど、未成年だから働くことも出来なかったから、配信はじめたんだ。けど最近はお母さんの仕事も成功して、私も結構大きくなったから自分のしたいことに挑戦しようかなと思って事務所に入ったんだ」

「大変だったね。小さい頃そんなことあったんだ。それで挑戦したいこととは」


小さい頃のことはあまり触れずにすぐ質問する。


「人気配信者達が集まって開かれる大会、配信者カップそれに優勝したいんだ。そして、今年の夏休みにそれがあるんだ。今回の内容はHero’s Legend」


配信者カップ毎年何回か開催される。配信者達の大会だ。優勝すると賞金や豪華なトロフィーなどがもらえる。


「すごくいい目標じゃん。頑張れよ応援するし、練習も付き合うよ。」


応援するぞと言ったが何か不満そうだった。

すると急に顔を近づけてた。近くて相手の呼吸が聞こえた。


「ねぇ私と一緒に頂点目指さない」


突然の誘いだった。夕方河川敷に男女で2人まさかそんなことを言われると思ったらまさかの大会のお誘いが来た。

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