第18話 「シャトルラン」それは地獄
体育館の中はシューズと床が擦れる音と電子音のピアノの音が鳴り響き、その音は少しずつ速くなっている。
「先輩疲れました?」
余裕そうにひながきいてくる。
「ぜ、全然つ、疲れて…ないし」
取り繕うと努力するが隠し切れない
「全然疲れてないんですねそれじゃ頑張りましょうね。あ!先輩次から速くなりますよ」
ピアノの音がまた少し速くなる。
「もう無理だー」
最後の方は気合いだけで走ってた気がする。なんとか50回越えの53回で俺は終了した。
他の人たちを見ると、蒴と胡桃はまだまだ余裕そうだ。月奏は少ししんどそうだがまだいけそうだ。ひなも元気そうにしてるが息が早くなっている気がするする。
「月奏先輩。初めまして来栖ひなです」
私、如月月奏はせあくんが抜けて隣になった女子に急に話かけられた。
「初めまして如月月奏です」
「これからは向こうでもよろしくお願いしますね。」
「向こう?」
「え、だってあなた椿るのんでしょ。」
彼女は私が配信者だって事を知っていた。せあくんが話したのかな。言わないで言ったのに。少し警戒しながら質問する。
「なんで知ってるんですか?」
「だって私の後輩からですよ」
敬語で後輩とか言われてたら違和感しかなかった。そして彼女は先輩と言っていたから1期生の人だ。そういうことは
「1期生陽奈さんですか?」
「そうです。私が陽奈です」
まさか後輩が先輩とは思ってもみなかった
「来栖さんは星空くんと仲がいいんですね」
思わず質問してしまう。仲良さそうに話しているから事務所とかでも話したことがあるのだろうか。同期なのに私より先に先輩と仲良くなっていて嫉妬しているのかな。
「まぁ、ご飯行ったり、買い物したり、髪のセットの仕方を教えたりしましたからね。」
思ったより付き合いがあるようだ。少し羨ましいとも思ってしまった。
「そう言えば如月先輩運動できるんですね。65回こえてますよ」
「実はもう限界。いつも60回ぐらいで終わってるから」
その後も走り70回で私はやめた。
俺八神星空は驚いている。なんと月奏が70回も走ったのだ。自信ないとか言ってたのにすごい記録だ。
「お疲れ様。月奏」
ゆっくり歩いてきた月奏は俺の隣に座る。
「二度とシャトランしたくない」
「俺もだな」
「せあくん53回だったよね。大丈夫?配信に体力は必要だよ」
「残念ながら配信中の俺は体力2倍だから」
「何それ。変なの」
クスクスと笑う。1言言うと可愛いです。
「来栖さんって私たちの先輩だったんだね。知らなかった」
「会ったことないの?あの人よく休憩所にいるぞ」
「へぇーそうなんだ今度行った時見てみるよ。」
すると少し近づいて聞いてくる
「来栖さんと仲良いんだね。名前で呼んでるし。買い物も行ったんだって?」
「まぁ、行ったけど…。あ!別に恋愛感情はないよ。配信者同士で付き合ったら炎上案件だぞ。」
「ふ〜ん。まぁそう思ってるならいいけど…今度私も買い物誘ってくれない?」
「いいよ」
「ありがとう」
ニコッと笑って返事が来た。
その後も少し雑談したらシャトルランを終えたひなが俺の前に手を膝について上から覗いてきた。
「おつかれひな何回だった?」
「85回です。どうですか?すごいでしょ」
「すごいな。女子の平均余裕で超えてるだろ」
「まぁ私天才ですので」
しかし息は上がっているようだ。
「とりあえず座ったらどうだ?その目のやり場に困るのだが…」
今のひなの体制的に体操服の前の方が緩んでいるのだ。見えてないのだが、見えそうなのだ。
ひなが少し止まり、少し顔を赤くする。そしてゆっくりと俺の隣に座る。
「すいません。全然気づいていませんでした。その……見えました?」
「……見えてません」
少し安心したのかいつもの調子へ戻っていく
「もし見えていたら嫁に行けませんよー。もし先輩が見てたら責任とってもらうとこでしたよ」
「えっ怖」
逆隣から変な視線を感じた。
「来栖さんお疲れ様」
「これが先輩の力ですよ」
「そうですか。頑張りましたね後輩」
その後煽りあっていたら蒴と胡桃も帰ってきた。2人ともバテバテだ。
「おつかれ2人ともめっちゃ頑張っていたな」
「90回ぐらいで終わろうとしたら、胡桃に先負けたら明日の昼ごはん奢り勝負を持ちかけられた」
「なるほどそれでどうなった?」
「…さーくんが97回。私が…96回」
「つまり胡桃が負けたと」
「…せーくんが応援してくれたら勝てたかも。けどせーくん女の子とイチャイチャしてたから」
「してねーよ」
すぐに否定してしまった。逆に怪しまれてしまう。
「いやけど第3者視点から見ると星空モテモテだぞ」
事情を知ってるくせにわざと煽りニヤニヤしてる蒴を見てあいつを後で締める事を決めた。
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