第16話 「体力測定」それはハプニング

「それじゃ早速一種目行きますか」

「おー!」


蒴と胡桃が張り切っている。蒴が張り切るのは分かるが、昨日一日中起きていた胡桃がなぜ元気なのかわからない。やはり体力と運動神経は昔から化け物だ。


「おいおいどうした、月奏、星空元気ねーな」

「私運動は得意じゃないんだ」

「俺も運動苦手なの知ってんだろ」


しかしそれを否定する様に胡桃が話す。


「でもせーくん足が速いのと反射神経がいいじゃん」

「小学生の頃だろ。今は流石に無理だよ」

「へぇー昔は運動神経良かったんだね」


とても意外そうな目で月奏が見てくる。


「昔からずっとゲームしかしてないと思ってたか?」


月奏は目を逸らす


「い、いや〜別にそんな事思ってないよ」

「月奏、君嘘が下手だろ」


たわいもない話をしながら一種目目の握力測定の場所に着いた。


「さてそれじゃ俺から行こうかな」


そう言うと蒴が握力計を握り力を込める

メータの針が動いて、そして止まる


「47.6kgだった。もう少しあると思ったけどな」


男子高校生の握力平均は39.6kgぐらいだ。十分が蒴はそれでも満足していないようだ。


「それじゃ次は私!」


握力計が蒴から胡桃へ渡る。そして握り力を込める。


「28.4kg!前より少し伸びた!次せーくんどうぞ」


「胡桃から俺へ体力計が渡る。そして俺は体力計を全力で握る。体が震えているのも分かる。

そして確認するが……


「……28.7kg」

「あれれ?せーくんほとんど私といっしょじゃん」

「大丈夫だ星空握力が弱くても困ることなんて腕相撲と重い荷物を運ぶ時だけだ」


からかってくる蒴と胡桃を流しつつ握力計を月奏へ渡す。


「月奏、握力に自信ある?」

「自信ははないかな。」


握力計を受け取った月奏は力を込める。

そして握力計をこっちへ見てせくる


「30.2あったよ。」


まさか月奏の握力が30以上あるとは意外だった。それよりも…


「お、女の子に、ま…負けたのか」

まさか負けるとは思っていなかった。


「……せーくんドンマイ」

「そ、そんなときもあるって星空」

「……ありがとう」


慰めの言葉を素直に受け取り、次の所へ移動する。


「次は上体起こしだー」

やはり元気な蒴


「「「お、お〜!」」」

今回は元気のない3人


「どうしたなんで元気ないんだ」

「だって」

「これしたら明日」

「筋肉痛なるじゃん」

胡桃、俺、月奏の順で言う。


上体起こし。腹筋だ。普段そんなにすることのない上体起こしを急に沢山すれば次の日は筋肉痛間違いなしだ。さらに、笑う、くしゃみするたびにお腹に激痛が走る。俺的体力測定嫌な種目ランキング第3位だ。


「まぁ嫌がっても最後はしないといけないんだし。それじゃグッパするか」


グッパ。4人の時、じゃんけんを使って2:2に分かれるやつだ。グーとパーしか出してはいけなくて、グーを出した同時がペアとなり、パーを出したどうしがペアとなる。ちなみにグッパ以外にも色々な言い方があるらしい。


しかし今回俺の場合3分の2で女子となる確率がある。仮に女子となった場合、俺の足の上に座ってもらい抑えてもらったり、俺が女子の足の上に座る事がある。それは流石にまずいじゃないか。


「よしそれじゃやろう」

え、なんで胡桃賛成してるの?


「私も皆がいいって言うなら」

るのんさん?周りに流されてないで!


「星空は?」

蒴がトドメを刺しにくる。

「俺は……賛成」

結局周りに流された。俺の意志は弱い。


「よしそれじゃいくぞ!」

「グーとっパ」


みんなの出した手を確認する。

月奏、俺がグー。蒴、胡桃がパー。


なんか気まずい空気になる


「よしそれじゃやるか胡桃」

「ちょっと優しく見てねさっくん。」


2人を除いてちょっと待って流石に陽キャでも流石にこれは大丈夫なのだろうか。いや最近の陽キャはこれぐらい平気なのか。

頭の中で考えてたら袖をちょんちょんと引っ張られる。


「それじゃやろっか」

「は、はい」


顔を少し赤く染めて少し小さい声でそんな感じにいうのはずるいと思う。


「じゃあせあくんが先にしてよ」

「….わかった」


俺は座り足を立て背中を床につける。そして月奏はゆっくりとしゃがみだんだん俺の足へ迫ってくる。体操服のせいかボディラインは制服の時よりハッキリとわかり、ふんわりと洗剤の匂いもする。俺心臓がドキドキしてるが分かる。後20cm、後10cmその時だった。


「すいません。これは男女ダメなんですよ。人数合わなければこっちで人出しますんで。」


慌てて走ってきた係の生徒に止められる。月奏はそのまま俺の足の奥で尻餅をつく。

起き上がると月奏の顔は赤い相当無理してたのだと思う。


「「すいません」」


2人で謝った直後、蒴と胡桃が来た。


「いや〜ごめんそんなルールあったんだな」

「いやいや結構危なかったからなてかお前ら恥ずかしくないん?」

「途中まではなんともおもわなかったけど、いざしようとしたら恥ずかった」

「だからせーくんたちが終わるまで待とうって話になって……」

「止めろよ!」

「ごめんごめん」


とてもやばい事になりそうだったが、なんとかなった2人であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る