第15話 「自己紹介」それは情報交換

コツン


おでこの真ん中当たりに痛くはないが衝撃が走る。恐る恐る目を開けると目の前には二つのモニターがあり、片方にはHero’s Legendの射撃練習場の風景が映し出されている。


コツン


すると次は頭の後ろに衝撃が走る。後ろを向くと制服姿の希空がいる。


「おはよう希空」

「おはようせあ兄。せあ兄昨日寝落ちしてたよ」

「……マジ?」

「マジ」


確かに不自然だ。起きたら目の前にはモニターがあるのがまずおかしい。本来なら天井が見えるはずだ。さらに肩から毛布がかけられている。希空がかけてくれたのだろうか。


「そういえばせあ兄、昨日配信するって予告出してたよね」

「…うん」

「昨日配信してないよね」

「……うん」


だんだん俺の顔が青ざめていくのがわかる。


「今日は配信は謝罪会見だね」

「やってしまったーーー!!」


朝1に今日1番大きいであろう声を出した。


「やってしまったことは仕方がないよ。はい切り替えて。学校の支度」

「すいません。お母さん」

「お母さんじゃない!」


今日3発目のデコピンが飛んできた。


今日は起きた時間がいつもより遅かったのと、ワックスに挑戦してた為、学校に着いたのは遅刻ギリギリになってしまった。


「おはよう星空」

「おはよう蒴」


机に荷物を置くといつも通りイケメンな蒴が来た。


「今日の夜楽しみにしてるな」

「見に来ないでください」

「やだね」

「……好きにしよ」


蒴は今日の謝罪会見配信を見る予定らしい。


「それより昨日のメッセージ本当なのか」


蒴が小声で話しかけてくる。


「本当だよ。本当に極秘で頼む」

「わかってるよ。それにしても如月さんが同期で、新入生代表の子が先輩とは……。蒴お前ラブコメの主人公になったのでは?」

「残念ながら君の方がイケメンだし可能性があるよ」

「そんなことないぞ少なくともお前はしっかりと整えたら俺よりちょっと下のイケメンになれるぞ」

「あくまでお前より下なのね」

「イケメン歴が違うからな」


なんか自慢げに話す蒴が少し鬱陶しいと思ったがいつものことなのでそのまま流す。

授業5分前のチャイムと同時に幼馴染の時雨胡桃が入ってくる。いつも元気なのに今日は元気がなさそうだ。荷物を置くとゆっくりと胡桃がこっちへ歩いて来た。


「おはよう胡桃。どうしたんだ今日は元気ないな」

「おはようせーくん。昨日さぁ夜廻様配信予告あったじゃん」

「うん」


その時嫌な予感がした。


「予定時刻になっても配信が始まらないじゃん」

「うん」


これは…


「私ずっと見張ってだんだよ」


俺が…


「そしたら朝になっても配信始まらないんだよ〜」


原因だった〜


「私ね夜廻様が病気にでもなったんじゃいと思って心配してたんだけど、朝になったら寝てしまってたと言う投稿があって安心したよ。きっと事務所に入ってすぐだったから色々あったんだと思うよ。」


胡桃がとても真剣な目で話してくる。


「お、俺もそう思うよ」


口が裂けても普通に寝落ちしてましたなんて言えなかった。隣で蒴はニヤニヤしてる。


「胡桃、次の休み時間ジュース奢ってやるよ」

「え、いいの?ありがとう〜」


俺が今胡桃にできるのはこれぐらいしかなかった。


「それじゃそろそろ授業始まるから戻るな胡桃も戻れよ」

「うん!それじゃーね」


各々は自分の席に戻っていった。すると俺の左肩を2回優しく叩かれる。俺の後ろの席如月月奏だった。


「ねぇねぇ。今日のせあくんの配信ミラー配信していい?」

「断る権利は俺にある?」

「昨日君が寝たのがいけないよ」

「……いいよ」

「ありがとう、そういえば時雨さんだったけ。

あの子せあくんの正体知らないの?」

「うん。言ってない」


正直いつバレてもおかしくない状況だ。


「なんか面白い関係だね」

「バレたら幻滅されるよ。中身が俺だったら」

「そんなことないよ私は君と会ってまだ数日だけどいい人だと思ってるよ」


彼女はニコニコと話してくる。


「それは嬉しいな」

「どういたしまして。あ!そういえば今日の午後から体力測定だね」

「え……マジ?」

「予定表書いてあったよ。……まさか知らなかった?」

「……うん」


少し間があくと少し恥ずかしそうに話出した


「1つお願いしてもいいかな?」

「え、急だな。まぁいいけど」

「私と一緒に体力測定の種目を回ってくれない?」

「……え?」


その時のるのんは、少し下から俺を見上げるようにさらにあざとく可愛くお願いされた。この世のどこを探しても断われる人間はいないだろう。


俺は少し顔が赤くなっていたので少し目線をずらして言った。


「いいけど、去年と同じで4人で回れと言われるはずだから胡桃、蒴、るのん、俺でいいか?」


するとるのんは満面の笑みで


「うん。ありがとう」


と言って来た。それはまるで本当の天使みたいに可愛かった。


時間は流れて昼休み俺は今胡桃、蒴、月奏達と4つ机をくっつけて4人で昼ごはんを食べている。


「よかったな星空、体操服持って来てて」

俺の前にいる蒴が言う。


「本当にそうだね今日全学年同時だから体操服借りれないよ」

俺の斜め前の胡桃が言う。


「とりあえずあってよかったね」

横の月奏が言う


「てかなんでせあくんと如月さんが知り合いなの?」

「えっとね……」


Live withの同期ですなんて口が裂けても言えない。困っていたら月奏が助け船を出してくれた。


「せあくんがこの学校について色々教えてくれたんだ。」

「ふ〜んそれにしてはとても仲良く見えるね。名前で呼んでるし。」


胡桃が疑問の目で見てくる


「名字で呼ぶの嫌じゃない?なんか堅苦しいし。月奏もいいって言ってくれたし。」

「あの隠キャのせーくんが陽キャみたいなこと言ってる」

「俺は隠キャじゃないよー夜廻信者」

「うるさい!夜廻様を馬鹿にするな」

「してねーよ」


俺たちが言い争っていたら蒴がそれを止めてくれた。


「はい、2人とも落ち着いて昼ごはん食べようね。そうだ新しく如月さんも来たことだし改めて自己紹介しようか」


話の流れを作るの上手いなと感心していたら胡桃が手を上げる。


「はい!それじゃ私から。時雨胡桃だよ。私のことは胡桃って呼んでいいよ。好きなことは夜廻様…えっと夜廻せあさんと言う配信を見ることかなるーちゃんも是非見てみてね。」

「るーちゃん?」

「如月さんのあだ名だよ。気に入らなかった?」

「そういうわけではないよ。あだ名で呼ばれたの初めてだったから驚いただけ。それじゃ私は胡桃と呼ぶね。」

「うんよろしくね。るーちゃん」


2人とも笑顔で微笑んでいた。


「それじゃ次は俺。仲咲蒴だ。まぁ好きに呼んでくれたらいいよ。一応バスケ部に所属しているよ。よろしく。」

「よろしく。それじゃ仲咲君と呼ぼかな。」


蒴が少し不思議そうな目で月奏を見る。


「なんで名字か理由を聞いても?」

「だって君モテそうだから名前で呼んだら他の女の子に恨まれそうだし。あ、私のことは月奏と呼んでくれていいから」

「そうしたいならそうしていいよ。よろしくね月奏」


次は俺かなと手をあげようとしたら蒴がこう言った。


「次はるのんの自己紹介だ」


俺は少し挙げていた手をゆっくりと下げた。


「改めまして如月るのんです。好きな事は読書です。よろしくお願いします。」


俺はその時月奏の顔を見るすると目が合う。しかしすぐに違う方向を向かれた。それで俺は確信した。絶対嘘をついていると。まぁ自己紹介で女の子がfpsゲームが好きですとは言いにくいか。


そして最後は俺しかいないので自信満々にてをあげる


「最後は俺だな。八神星空です。好きな事はゲームと睡眠かな。よろしく。」


おれの反応はとても薄かった。月奏含め全員俺の事知ってるから仕方ないか。

その後、雑談をしながら昼ごはんを食べていたら昼休みが終わり5時間目体力測定が始まった。

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