第2章 2年生1学期

第11話 「先輩」それは後輩

ふらふらと着地地点を探すかのように舞い散る桜の花びら。周りには、丁寧にアイロンされた真っ白なシャツ、毛玉ひとつない綺麗なブレザー、膝まで丈のある人もいれば細く美しい太ももがチラチラ見える短い丈のチェックスカート、将来的に背が伸びると考え少しぶかぶかなを購入したであろうパンツ。新しく買ったであろう綺麗な靴でおんがくを奏でている。

春の少し暖かい日差し、音は聞こえないがゆったりと流れる河川、舞い散る桜の花びらをかき分けながら自転車を漕ぎ、今日から後輩となる人達を追い越していく。


河川にかかっている大きな橋を横断し、少し行くと俺が通っている高校が見えてくる。


星宮ほしのみや高校 府内トップ10に入るぐらいの偏差値の進学校だ。推薦枠は府内でもトップクラス、アメリカには姉妹校があり留学制度も整っている。


見慣れた校門を颯爽とぬける。本来ならば立っている先生に怒られるのだが、今日はいつもより早く来たため先生はいない。

駐輪場に自転車を止め、渡り廊下にある掲示板に張り出されているクラス表を確認する。本来ならば人で身動きも取れなくなるのだが、さっきも言った通り、早く来たため人はいない。2年生からは文系、理系、総合、の3つに分かれる。俺は文系を選択している。片手で数えられる俺の友達も全員文系なため同じクラスだった。


新しい教室へ向い、自分の席に座る。左側は窓で春の日差しが入ってくる。前日のオールと暖かい日差しのせいで気づけば寝てしまっていた。


「おーい星空。起きろー」


俺を呼ぶ声で目が覚める。俺の数少ない友達の声だ。


「おはよう蒴。久しぶり」

「久しぶり。星空が俺より早く来るなんてどうしたんだ」


蒴が驚いた顔で聞いてくる。


「オールしてたから」

「また配信?」

「いや春休みの宿題」

「……バカだな」


正論過ぎて返す言葉もなかった。


俺の数少ない友人、仲咲 なかさき さくバスケ部に所属していて茶髪の髪に間違いなくイケメンの部類に入るスタイルと、顔立ちをしている。どうしてぱっとしない俺と仲良くしているのかがよくわからないがとても良いやつだ。


俺はまだ眠かったために寝ようとしたら髪を引っ張られる。


「何するんだよ。俺は眠くて…」

「お前入学式が何時から始まるか知ってる?」

「……確か8時40分」

「正解。今、何時?」


俺は黒板の上にある掛け時計を確認する。


「……8時36分……教室から体育館って何分かかる?」

「歩いて5分ってとこかな。」


俺の目がだんだん覚醒する。そしてその大変さを自覚する。


「……蒴、走るぞ!」

「ちなみにもう37分ね。行くぞ!」


廊下を全力で走り体育館を目指す。廊下には人1人もいなかった。全員体育館に集まっているようだ。なんとか始まる前に到着し自分の席に座る。


「はぁはぁ、なんで蒴は息が上がってないんだよ」

「毎日走ってますから」


余裕そうな顔を見せてくる。流石はバスケ部つといったところだろう。すぐに入学式が始まった。新入生が入場者し、校長の挨拶があり、新入生代表挨拶に移る。


「続きまして、新入生挨拶。新入生代表1年4組来栖ひなさん」

「はい」


前の方で長い赤髪の女の子が立ち上がり台上に向かって走り出した。どこかで見た後ろ姿だった。台上に立ち紙に書いてある文を読み始める顔を見るとお洒落な丸眼鏡をかけているが、どう見てもLive with1期生の陽奈先輩だった。


「なんだなんだもしかして星空あの子に見惚れたのか」


からかうように蒴が聞いてくる。


「そういうわけじゃねーよ」


隣の蒴から見たらおれはじっと陽奈先輩を見ていたため見惚れていたように見えるかもしれないが俺は混乱していた。まさか陽奈先輩が俺より年下でさらに同じ学校になったとは。

挨拶が終わり、陽奈先輩が席に戻っている時に、ばったりと目があった。すると陽奈先輩は一瞬驚いたがその後、少し笑みを浮かべていた。


入学式が終わって新入生が退場した後の10分休憩の時にトイレに行こうと体育館を出た。

歩いていると後ろから肩をトントンと叩かれ、

耳元で聞き覚えのある声が聞こえた。


「今日学校終わったら事務所に来てね〜」


陽奈先輩は俺が返事をする間も無く歩いていった。少しびっくりしたがまぁ当然だ。俺も話したいことがたくさんある。


始業式の終了後教室に戻った。周りではこの話で持ちきりみたいだ。


「新入生代表挨拶の子めっちゃかわいいな」

「あの子スタイルやばくなかった」


まぁそれも仕方ない陽奈先輩は確かに美人で可愛い所もあるからな。


「お前ら席につけー」


教室の扉が開き先生がはいってくる。教卓の上に名簿を置くと話し始める。


「今日からここの担任になった宮野だ。よろしくな。とりあえず転校生の紹介だ」


先生の一言で教室がざわつき始める。それも仕方がないことだ。高校生活で転校生なんて珍しいものだからだ。だか俺は全く動じてない。

さっきの件で頭が一杯だったからだ。しかしそれはフラグだったのかも知れない。


「入ってきていいぞ」

「はい」


この声どこかで聞き覚えがある。新しい記憶だと2日前に…

扉がガラガラと開いて1人の女の子が入ってくる。綺麗なミルキーゴールドのロングヘアの髪を揺らしながら教卓の方へ向かう。


「初めまして兵庫県から引っ越してきました。如月月奏です。これからよろしくお願いします。」


こんな美少女を見間違うはずもない。彼女はLive with2期生で俺の同期の椿るのんだった。


今年の1年生に陽奈先輩、同じクラスの転校生が事務所の同期。今年は何か起きそうな気がする。

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