第6話 「嫉妬」それは不安

家に帰ると妹の希空が待っていた。


「せあ兄お帰り〜」

「ただいま〜」

「遅かったね〜。まさか夜遊び〜?変なところ行ってないよね〜」

「行ってないわ」

「本当〜?」

「本当だよ!」

「わかってるって。夜ご飯冷蔵庫入ってるから。チンして食べてね」

「あ、ごめん。外で食べてきた」

「………せあ兄が外食?一人で?」

「……2人」

「…男?…女?」

「………女」

「………え〜〜〜〜〜!?せあ兄が女とご飯?誰?」

「同期のるのんと」

「るのんって椿るのん!?女の子とご飯ってせあ兄人生の運5分の1は使ったね」

「いやいや、仕事の話をしただけだよ」

「でも、今日初めて会って、ご飯誘うって普通しないよ」

「そうなのかな」

「まぁ、せあ兄がそう思うならそれでいいけど。てか、今度私もご飯連れていってよ」

「急にどうした?まぁいいけど」

「……ありがとう」


いつもより少し大きな声で話していて気づかなかったが希空の機嫌が少し悪かった気がする。


「それじゃ今から配信するから、よろしく。」

「はいはーい」


部屋に戻っていつも通りに、配信準備をする。

今回の配信は事務所の社長RENさんが俺がLive

withに入ると発表して、初めての配信だ。質問攻めに合いそうななので、今日はゲーム配信はできなさそうだ。


「さーて配信始めるかー」


配信開始ボタンをクリックした。

同時接続者数は、すぐに5000人を超えた。


『配信きた〜』

『Live with 所属きた〜』

『説明求む〜』


まぁコメントは質問は溢れかえっている。


「Live with所属の夜廻せあです。今日はゲームする暇などないほど質問がきそうなので、雑談配信します」

「とりあえず説明すると、色々あってLive with

2期生になりました。同期は、昨日の配信で話題に上がった椿るのんです」


『説明少なっww』

『これからは椿るのんとの付き合いが増えるぞー』

『一期生とのコラボも楽しみだ』


「さて説明が終わったところで質問コーナーといきますか。質問あったらコメントに書いてくれ」


『昨日の配信で言っていたコラボ配信するかもって結局誰なんですか?』


「えっとね。とりあえず明日コラボあるよ。相手はまだ言っていいのかわからないからお楽しみに」


『そのコラボは私とだよ』


1つのコメントがきた。名前は、「椿るのん」だった。なりすましかと思ったが、この事を知っているのは、本人だけだし、公式マークもついている。間違いなく本人だ。


「るのん……さん明日のコラボ配信のこと言ってもいいんですか?」


『言ってもいいんじゃない。てか、敬語なしって言ったじゃん。後、るのんさんじゃなくてるのん』


「あ、ごめん……るのん」


まだ慣れていないのに、視聴者がいる中で「るのん」と呼ぶのは少し恥ずかしかった。


『なんか尊い』

『付き合いたてのカップルかよww』

『せあくん押し負けてるw』


コメント欄凄い勢いで流れる。いつの間にか同時接続者は1万人を超えている。1万人を超えたのは久しぶりだった。

その後も、何個かの質問に答えた後、最後にこんな質問がきた。


『なんでLive withに所属しようと思ったのですか?』


その質問の答えは、青春がしたかったからなのだが、そう答えるわけにもいかないので、上手いこと誤魔化すことにした。


「これからも個人で配信を続けるとしたらどこかで限界が来るから、ちょうど声のかかっていたLive withに入ることにしたんだよ。配信の質も上げていくし、コラボとかも増えていくだろうから、チャンネル登録して待っててな」


『これからのせあくん楽しみ』

『活躍楽しみにしてます』

『さらっとチャンネル登録促してるww』


「では、日も跨いだし、今回の配信はそろそろ終わろかな。後、今日のコラボ配信見にきてな、夜やるからよろしくね。それじゃバイバイ」


『お疲れ様』

『コラボ配信楽しみにしてる』

『どんな配信になるんだろう』


そして、配信を終了した。


リビングに戻ると希空がいた。


「お疲れ様、せあ兄。」


少し、怒っているような気がした。


「椿るのんさんのこと、るのんって呼んでんだ」

「そう呼べと言われたから」

「せあ兄、るのんって呼ぶの恥ずかしいの?」

「人のことを、さらに女の子を名前で呼ぶの慣れてないから。ていうか、希空絶対怒ってるでしょ」

「別に。」

「もう、誤魔化すのは無理なんじゃない。」

「……ちょっと怒ってる。帰ってくるの遅いな〜と思ったら女の子とご飯食べてくるし、配信ではイチャイチャ話してるしせあ兄の青春は応援したいけど私にも……」

希空の言葉は途中で止まった。まぁ希空の言いたい事は大体想像がついた

「配信のあれはイチャイチャではない。けど連絡をせずにご飯食べてきて、帰るの遅くなったのは悪かった。これからはしっかりするよ。俺が絡む人が増えたとしても希空のこともしっかり考えるよ」

「本当?」

「本当」

希空の顔に少し笑顔が戻る

「じゃ今日私と出かけて、昼ごはん奢ってくれるなら許してあげる。」

「わかったよ。どこいくの?」

「難波についてきてほしいところがあるの」


いつの間にかいつもの希空に戻っている。


「じゃ、私は寝るね!せあ兄も早く寝るんだよ。お休み〜」

「あぁ。お休み希空」


それにしても、希空と出かけるのは、いつぶりだろうか。配信を始めてからは行ってないので、約1年ぶりだ。


「楽しめるように頑張ろう」


この時の俺は思ってもいなかった。まさかあんなことになるとは……。

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