第5話 「出会い」それは始まり②

「事務所内はどうだった?」

「とても広くて、素敵な所ですね」

「それはよかった」


隣の第2会議室にはすぐに着く。歩数にして16歩だ。


「じゃ、この中にいるからまぁ話して待っといて」

「RENさんも一緒じゃないんですか?」

「必要な資料忘れてしまって。取りに行ってくるよ」

「わかりました」


そう言うと、RENさんは廊下を奥にいった。

ドアを開けて入るだけなのだが、中には、初めて会う人さらに女性がいる。このまま相手を待たせる訳にもいかないで、覚悟を決めてドアノブに手を掛ける。


「失礼します」


中には、綺麗なミルキーゴールドのロングヘアの髪。透き通った綺麗な肌……。ん?この感想前も言ったような……。


「初めまして、これからあなたと同期として活動します。椿るのんで……」


相手も自己紹介の途中で言葉が止まった。相手も何かに気づいたようだ。


「あ、先日はハンカチ拾っていただいて、ありがとうございます」

「あ!あの時の!いえいえ、大丈夫ですよ」


彼女は先日、俺のハンカチを拾ってくれた人だった。


「改めまして、椿るのんです。これから同期として頑張っていきましょう」


「はい、よろしくお願いします。あ、夜廻せあです」


自己紹介を終えたところで、椅子に座って色々話していると、資料を取りに行っていたRENさんが帰ってきた。


「悪い悪い、資料忘れてしまってな。それじゃ早速説明するな」


細かい説明などを受けた後に、配信についての話があった。


「所属後の初配信なんだけど、明日一緒にコラボ配信をしてもらう予定だ。内容は好きに決めてもらっていいよ」

「え、いきなりですか」

「せあくん、ビビってる?」


RENさんがニヤついた顔で煽ってくる。


「せあさんの初のコラボ配信ですよね。大丈夫です。私も精一杯お手伝いします」


堂々とこういうことが言えるので頼もしい限りだ。


「てか、なんでこれが初めてのコラボ配信って知ってるんですか?」

「あなたの配信はよく見てますので。視聴者の願いも叶いそうですね」


昨日の配信を見られていたようだ。少し、恥ずかしく思った。


「じゃ明日の20時頃から配信を始めてくれ」

「わかりました」

「了解です」

「とりあえず、今日は終了。資料は渡しとくから家に帰ってみてくれ。また用事があったら、連絡するよ。ではお疲れ様。」


そういうと、RENさんはすぐに出ていった。

おれも挨拶して帰ろうとしたら、呼び止められた。


「明日のコラボ配信何するかとか、話さない?

もう夕方だし、ファミレスでご飯食べながら」


急なお誘いに少し動揺したが、断る理由もないので、行くことにした。


「わかりました。では、近くのファミレス行きましょう」


事務所をでて、5分ぐらい歩くとファミレスに着いた。席に座ると、各々のメニューを見て注文した。


「何頼んだんですか?」

机を挟んで目の前に座っているるのんさんが聞いてくる。

「ハンバーググリルセットとドリンクバーですよ。るのんさんは?」

「私は、ハンバーグステーキセットとドリンクバー。これ好きなんですよ」


料理が来るまでにドリンクをとりに行くことになった。


「せあさんは何が好きですか?」

「僕はコーラですね。るのんさんは?」

「私は、炭酸無理なんですよね。なので、白ブドウジュースが好きです」

「炭酸飲めないんですか?人生の4割損してますよ」

「そんなにですか。頑張ります」 


少し笑いながら言ってきた。その時の顔はとても可愛らしかった。

席に戻って少しすると、メニューが届く。とてもいい香りだ。


「「いただきます。」」


食べながら色々決めることになった。


「1つが提案なんですけど、これからは同期なので敬語やめませんか?」


敬語で言われてもと思うが、配信中に敬語だったらやりにくいと思うので異論はなかった。


「わかりました。では敬語なしでいきましょう。」

「では、いまから敬語はなしです」


するとるのんは手を大きく叩く。


「スタート!じゃ改めてよろしくねせあくん」


いきなり「せあくん」呼びだったので、すごくドキッとした。


「よろしく。るのんさん」

「るのんでいいよ。」

「まじで?」

「まじ」

とても真剣な目で見てくる。

「……るのん」

「うんうん。」


「るのん」呼びは少し恥ずかしいが、俺に拒否権ないみたいだ。


「そういえばせあくんって何歳なの?」


ハンバーグを一口サイズに切りながら質問してしてくる。


「急だね。16歳だよ。5月で17歳」

「おーてことは、私と同じだ。今16歳で、7月に17歳」


といこうことは、彼女は、12、13歳ごろから配信をしていることになる。普通にすごいと思った。


「あ、そうだ!連絡先交換しておこうよ。これから色々連絡取らないといけないし」

「そうだな。じゃ交換するか。QRコードでいいか?」

「オッケー。ちょっと待ってね」


るのんは、俺の画面に映っているQRコードを読み込んで友達追加した。


「追加したよ確認してみて」

「了解〜」


確認するとトーク欄に新しく追加されていて、ウサギのスタンプが送られてきた。 


「追加されてるよありがとう」


と言うと、るのんは、じっとこっちを見ていた。


「そういえば、今髪の毛整えている?前すれ違った時と雰囲気変わっているし」

「いまは髪の毛に、ワックス使って整えてるよ」


事務所の先輩にしてもらったなんて、口が裂けても言えなかった。


「こっちの方がかっこよく見えるから、こっちの方がいいよ」


急にカッコいいと言われたもので、少し照れてう。とりあえず陽奈先輩にワックスの付け方を教えてもらう用事が出来た。コラボ配信について話すつもりが、いつの間にか普通の雑談をしてそのまま解散してしまいそうなので話を変えることにした。


「そういえば、コラボ配信について話してなかった」

「おっと、そういえば私たちコラボ配信の打ち合わせをしに来たんだった。危ない危ない」


最後の一口を食べると紙で口を拭いてコッチを見る。


「じゃ何する?雑談だけじゃ1時間ぐらいで終わりそうだから、何かしながら、話せたらいいと思うんだけど」


するとかのんは顎に手を置いて、考え出した。そんな姿もとても絵になっている。


「やはり俺たち2人ともがしてるゲームとしたら、あれしかなくない?」

「そうだね。私たちがしてるゲームといえば……。」

「「Hero’s Legend」」


2人同時に同じタイトルが出てきた。


「私的には、普通にするのではなくて、何か制限とかミッションとかしてみたいけど。」

「じゃ、必殺技なしで10回championとれるまで終われませんとかする?」

「おお〜いいじゃんそれしよう」

すんなりと案が通ってびっくりした。


その後、細かい事を決めて今日は解散することになった。


「せあは、電車できたの?」

「そうだよ。るのんも?」

「うん。じゃあ駅行こっか」


と言うと駅の反対側に歩いて行った。


「……ごめん。私、方向音痴で…」

少し下を向き、照れ臭そうにそう言った。

駅に着き、電車に乗った。


「せあくんはどこで降りるの?」

「俺はあの駅で降りるよ」


と、俺は、路線の看板を刺した。


「私は、その3つ前の駅だよ。以外と近所だったね」


少し話していたら、急に返事が返ってこなかった。寝てしまったようだ。るのんが降りる駅が近かったので、起こそうと体を揺らす。


「おーい後1駅で、降りる駅だぞ。起きろ〜」

「う〜ん」


するとるのんの体が、こっちに傾いてきて、俺にもたれてきた。

急なことだったので、びっくりした。そして、だんだん心臓の音が大きくなるのを感じる。

「おいおいなんでこっちに倒れてくるんだよ」

と心の中で叫びながら、起こす。


「起きろ〜駅着くぞー。頼む起きてくれー!」

「うーん。あ、ごめん寝てたよ。起こしてくれてありがとう。」


少し、眠たそうな顔で言った。すぐに、降りる駅に着いた。


「じゃ、私はここで降りるね。お休み〜」

「うん、お休み〜。気をつけて帰れよー」


電車のドアが閉まって電車が動き出した。

周りはすっかり暗くなっていて少し肌寒い。

もうすぐ春だが夜の風はまだまだ寒い。私、椿るのんは、その冷たい風のおかげで目が覚醒した。


「うん?私電車の中で起きた時、最初何かにもたれていたよね」


少し考えたら、ある答えが導き出された。


「わ…私…せあくんに……もたれてた!?」


だんだん顔が赤くなっていく。


「今日初めて会った人にもたれるなんて、なんで真っ直ぐ寝れなかった私〜」

「て言うか、寝顔見られた〜」

「はぁ〜。」


私の黒歴史が1つ増えた瞬間だった。

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