第3話 「偶然」それは恐ろしいもの
家に帰ると15時を回っていた。お昼ご飯を食べていないので、お腹が空いて今にでも倒れそうだ。家にたどり着きドアを開けると希空が出迎えてくれた。
「せあ兄お帰り〜。ご飯にする?お風呂にする?それとも……希空?」
新婚や彼女と同棲中だったたら言ってきてもおかしくないがお腹が空いている時に更に妹に言われても何も思わないので間髪いれずに
「ご飯でお願いします」
「……せあ兄おもんなーい」
とかいいながら希空は、拗ねた顔をしてリビングに戻っていった。
俺も、リビングに行くと、食卓には希空が昼に作ったであろう。生姜焼きと、白ご飯があった。気の使える妹を持てて嬉しいと思った矢先に
「500円ね」
と、ソファーで寝転がってる希空に言われる。やはり、希空は希空である。固まっている俺を見ながら、希空は笑って言う。
「嘘だよ〜」
「おい、からかうなよ」
「いいじゃん。希空とせあ兄の仲じゃん」
「どんな仲だよ」
短いコントを終えた俺は、作ってくれた飯を食べながらスマホで、RENの配信時間調べると、今日の20時から配信すると書いてあった。まだまだ時間はあるので、配信をすることにした。
「希空ご飯美味しかった。後、今から配信するな。夜ご飯までには終わる予定」
「わかったせあ兄。けど皿は洗ってね。」
「あ、はい。」
皿を洗った後自分の部屋に行き、SNSで告知を済ませ配信の準備を完了をし配信を開始した。すると、すぐに沢山の視聴者がチャット欄にコメントを書く。
『配信きたー』
『今日、配信始めるの早いんですね』
『今日も無双楽しみにしています』
同時接続者数は数分で2000人を超えた。すぐに沢山の人が来てくれるのは、とても嬉しいものだ。
「皆さん、こんにちは。夜廻せあでーす。今日もHero’s Legend やっていきまーす。」
「Hero’s Legend」は、今超人気のfpsゲームだ。普通のfpsゲームではなくて、キャラ固有の能力があり、不利な状況でも能力の使い方次第で、戦況変えることが出来る。世界大会もあり、優勝したら、多額の賞金がもらえたりする。
俺はそのゲームを配信者になる前、さらに言えばそのゲームのリリース当初からプレイしている。好きなキャラのキル数は2万キルを超えており、ランクマッチでは、ソロで最高ランクに到達したこともある。
配信はそのまま進んでいき、途中にコメントを読んでいたら、あるコメントが流れくる。
『コラボしないんですか?』
コラボ配信、配信をするにあたってコラボ配信は新たな視聴者を増やせる。絶好の機会だ。
仮に同時接続者数が100人の配信者同士がコラボしたら、合計200人が配信を見てくれることになる。そしたらコラボ相手の視聴者の何人かが、自分の配信を気になって見に来てくれることがある。
しかし、俺はコラボ配信をこの1年したことがない。理由は簡単だ。1人だと気にせずに話せるがコラボ相手がいると気をつけるとが多いからだ。言葉使いとかも気をつけないといけないし、喋る事1つで炎上する可能性もある。だが、これからは事務所に所属することになるからコラボをする機会が増えるだろう。なので、こう答えることにした。
「今までは、トラブルなどを避けるためにしてなかったけど、まぁ色々あって時期にコラボすることが増えると思うよ。リスナーのみんなはコラボしてほしい相手とかいるの?」
するとコメント欄が凄い勢いで動きだした。
『ついにコラボだー』
『孤高のせあくんが遂に』
『おいおい、マジかよー』
『ボッチ卒業おめ』
視聴者は急な発表に動揺していた。少し落ち着いたらすぐにコラボしてほしい人の名前が上がり出した。色々な名前が上がったが、1番多かったのは、この名前だった。
『
『るのんちゃんとしてほしい』
『やっぱるのんでしょ』
椿るのん配信歴3年登録者70万人越えの超人気女性V配信者だ。更にHero’s Legend では、俺と同じくソロで最高ランクに到達している。そんな彼女の魅力は、ゲーム力と視聴者を魅了するトーク力だ。
「椿るのんさんね。俺も何回か配信を見た事あるけどゲーム上手いな。1対1しても勝てる自信あまりないよ。」
気づけばゲーム配信ではなくて、雑談配信みたいになっており、あっという間に時間が経ち夜ご飯の時間だった。
「じゃ、今日はこの辺で終わりにしたいと思います。バイバイ。」
配信を切った後、リビングに行くとダラダラしている希空がいた。
「せあ兄おつかれ〜。今日はご飯作る気ならなくてさ〜出前だよ」
「了解。何頼んだの?」
「ピザ」
「ナイスチョイス」
「私達の仲だから、これぐらい当たり前よ〜」
妹と雑談していると、ピザが届いた。時間は20時になっていたので、RENさんの配信を見ることにした。タイトルは、「雑談 重大発表あり」だった。
「RENの配信見るなんて珍しいね」
「まぁ、本人に言われたからな」
「そっか、Live withの社長だったね」
話しているうちにオープニングが流れて配信が始まった。
「皆さんこんばんわRENでーす。てことで雑談&重大発表配信していこか」
配信が始まるとすぐに同時接続者数が2万人を超えて、コメント欄は凄い勢いで流れる。
最初は、近況報告やコメントの質問に答えていたが1時間ぐらい経った頃に急に話を変えた。
「じゃ、そろそろ重大発表しよかなー。みんなよく聞いてくれよ」
少し間を置くと少し大きい声で言い放つ。
「Live withの2期生に超人気V配信者、椿るのん、夜廻せあが入りまーす」
急な重大発表にコメント欄は大盛り上がりだ。俺は飲んでいたコーラを吹き出しそうに、なった。事務所に入ることは分かったが、まさか同期がいるとは、さらに、ちょうど話題に上がっていた「椿るのん」だったとは…。
偶然とは恐ろしいものだと、久しぶりに思った。
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