1章 転生王女様は急には止まれない(3)
「何でございましょうか、アニスフィア王女」
「恐らくですけど、グランツ公は
私の言葉を受けてユフィリア嬢が顔を上げる。まるで何を言っているのかわからないという表情で私を見ている。そんなユフィリア嬢に私は笑いかけてみる。
「とりあえず! まず
「……お前がまともな事を言うと
「酷くないです!?」
「自業自得だろうが、愚か者が!」
「アニスよ。お前が貴族学院の夜会に乱入した件は後で
「えぇ、本当に偶然でしたけれどね」
「アルガルドへの追及は行わなければならんな。まずはアルガルドに
「あぁ、父上。なんか
父上が
でも本来だったら私はこの件に関しては部外者だ。王族ではあるけど、私は
だから王位に関係するような揉め事には関わるつもりもなかったんだけど、流石に今回は
「事件の内容や
「……ユフィリアの今後、か」
父上が心底、
何がダメかって、ユフィリア嬢の今後の結婚についてが難しくなってしまうから。一度口に出してしまった以上、婚約破棄の宣言はなかった事にはならない。そんなアルくんとよりを
そうなると次に問題になってくるのがユフィリア嬢の今後だ。婚約破棄なんて社交会では良い
そんなユフィリア嬢が婚約破棄をされてしまったなんて、嘲笑の的にするのには格好の
一度、王家から
「……ユフィリアの才覚では、下手に外に出す訳にもいかぬ……」
「ユフィリア嬢を外国に
ユフィリア嬢は同年代の中でもずば
そこにユフィリア嬢の
だからこそユフィリア嬢は次期王妃として相応しいなんて声がそこかしこから聞こえてきた訳で。私も噂は良く聞いてたし、遠目で見た時は流石に女としての敗北感を覚えたよね。いや、私は別に女を
自分と
だからこそ、外国に嫁に出すなんて事も出来ない。ユフィリア嬢の力がそのまま外国の力になり得るからだ。こうなると、もう目も当てられない。
だからと言って国内に相手がいるのかというと、王家と一度揉めてしまった令嬢と婚約をしても良いという相手がどれだけいるのかという話になる。加えてユフィリア嬢は公爵令嬢なのだから、その身分に見合う相手となると
無理もない。それだけ王妃教育っていうのは重いものの筈だし。将来、国を背負う者として育てられて、それ以外の多くのものを
正直、私が逃げた事で
指摘するまでもなく父上はユフィリア嬢の今後の展望の暗さには気付いているだろう。
そうなると無言のままのグランツ公の
「父上!」
「なんじゃ、いきなり大きな声を出しおってからに!」
「ユフィリア嬢の今後についてなのですが、
「……それはそうだが、どうした? なんだか凄く嫌な予感がするのだが」
「このアニスフィア、名案がございます!」
明らかに父上が嫌そうにげんなりし始めた。さっきから失礼だよ、父上! すると静かに
「アニスフィア王女、その名案とは?」
「はい。現在、ユフィリア嬢には婚約破棄を
「そうなってしまうだろうな。……それで
「はは、失礼な。今回の婚約破棄がアルくんの独断で王家側に一方的な過失があったのだとしても、ユフィリア嬢が婚約破棄の宣言を
今回、アルくんに一方的に過失があったのだとしても、こうなる前に止められなかったんだからと、ユフィリア嬢の能力を疑う声はどうしても出てくると思う。もう事は起きてしまった訳だから、こればかりはどうしようもない。
「こう言っちゃうと、ユフィリア嬢にも責任が生まれてしまうのですが……」
「それは事実かと。実際にアルガルド王子をお諫め出来なかったのは、こちらの落ち度でございます」
「はい。一度してしまった失敗はそう消えません。しかし、失敗を取り戻す事は可能です。その為にはユフィリア嬢に功績を積んで頂けば良いかと思います」
グランツ公は目を私から
「……つまりお前は何を言いたいのだ? 回りくどい、結論を申せ」
「では単刀直入に。──父上、グランツ公! 私めにユフィリア嬢を下さいませ!!」
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