1章 転生王女様は急には止まれない(4)
その場の空気を一言で言い表すのなら
そして当事者であるユフィリア嬢は何事かと、顔を上げて私に視線を向ける。私はそんなユフィリア嬢に
「私が全力でユフィリア嬢を幸せにしてみせます! どうか許可を!」
「待て待て待て待てィ! 何をとち狂った事を言い出すのだ、お前は!?」
父上が顔色を青くさせながら勢い良く立ち上がって私を
「アニスフィア王女。ユフィリアを求む、というのはどういう意図でございますか?」
グランツ公がいつもの調子に戻りながら問いかけて来る。私はそれに一つ
「ユフィリア嬢を私の助手としてお招きしたいのです」
「……助手、ですか?」
ユフィリア嬢が
「私が〝魔学〟の提唱者だというのは
「……まさかとは思いますが、アニスフィア王女。
「はい! その通りです、グランツ公!」
魔学は私が前世の知識で
「魔学は細々とながら、父上が確認をした上で認可したものは世に広められてきました。しかし、魔学は私の事情で公に大きな功績として
「魔学は革新的な発想から生まれたもの。そしてその魔学から生まれた魔道具も。それはパレッティア王国へ
「はい。だから私は魔学の功績が大々的に広められないように父上に進言しました。次の国王は私が良いんじゃないかと、そう言われると
アルくんは弟だけど、男児だったから王位継承権はアルくんの方が優先される。だけど私も
ほら、私って魔法が使えないから。王女なのに魔法が使えないから魔学の功績があっても、この国の成り立ちからすると王様として受け入れて
パレッティア王国は簡単に言うと魔法と共に発展してきた国だ。初代国王が精霊と
そして貴族が臣下として王と
誰もがそんな私の
最初こそ父上も
「なのに父上が最近色々と仕事を押し付けるから変に有名になったと思うんですけど」
「逆じゃ、逆! お前が目立つから逆に組み込んだ方が
「えー……?」
でもだからって政務の面倒事を私に押し付けるのはズルくない?
私の
「私は魔学が広まる分には良いんですけど、
「……確かに。
「でしょう? ほら、あとはあれですよ。私、魔法使えませんから。魔法を使える助手が欲しかったんですけど、その点で言えばユフィリア嬢って
「……私が、ですか?」
「そうだよ! 貴族令嬢としても有能で、武芸にも心得があって、更には使える魔法属性の適性数は歴代一と言っても過言ではないと言われる精霊に愛された
この世界の魔法は精霊からの
ぶっちゃけ、凄く欲しい。さっきも言ったけど喉から手が出る程に欲しい人材だ。私の個人的な研究だし、私ってこんなんだから
だから助手なんて欲しいと思っても
「……確かに理に
「でしょう! ね? だから父上、いいでしょ?」
「アニスよ。……お前は、私に
父上が凄く
「……あぁ、あの例の宣言ですか」
するとグランツ公も気付いたのか、何故か
「お父様、あの……何のお話ですか?」
「……アニスフィア王女が王位継承権を放棄したいと言い出した時にこう言い放ったのだ。『男性との結婚などごめんです。
グランツ公の言葉にユフィリア嬢が目を見開かせて私の顔を見た。その視線に少しだけ
「だって結婚して子供とか生みたくないし」
「お前という
「ギャァアアアッ!? アイアンクロー痛いッ! 痛いです、父上!
父上が
「お前は王族としての心構えや責務を
「痛い痛い! だ、だって……!
「大間違いじゃ、たわけ者! お前の魔学は評価には
「
「あの
ぺい、と投げ捨てるように父上が私を解放した。あー、痛かった。
確かにあの宣言をした時は
それで私の
女の子が好きなのは否定しないんだけどね! 別に男の人も
「……アニスフィア王女。一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「何でしょうか。グランツ公?」
「ユフィリアを助手として望むのは、助手という文字通りだけの意味でしょうか?」
グランツ公が視線を逸らすことなく
「んー。いえ、確かに貴族令嬢としても魔法使いとしても
「言いますと?」
「ユフィリア嬢は私の好みです!」
「もう
「お断りします!」
「腹立たしい表情をしおってからに……!」
今度は顔面を摑まれないようにグランツ公達のソファーの後ろ側に
ちょっとショック。まぁ、仕方ないよね。私も噂の否定はしてないし。ただ、それだと
「あー、その。同意がない相手には手を出さないというか、誰でも良いって訳じゃないよ? 私も別に遊び人って訳でもないからそういう心配はしなくていいから。ユフィリア嬢と仲良くなりたい理由はいっぱいあるんだ」
「……私と、ですか?」
「だってアルくんの婚約者だから
「……私だと都合が良いからですか?」
どこか
「確かにそうだって言えばそうだ。でも、違うって言う事も出来る」
「……?」
「ユフィリア嬢が決めていいよ、貴方が選びたい理由を。ユフィリア嬢が
私の言葉にユフィリア嬢が目を見開く。私はユフィリア嬢の
ユフィリア嬢を遠目で見かけた時は、無表情か、絵に
「私が信じられないなら、ユフィリア嬢が私にとって都合が良いからだって諦めても良いよ。それも否定しないから。もし、いつか助けたいという言葉が信じられるようになったら信じてくれればいいからさ」
「別に信じて貰うのなんて後からでも良い。だからユフィリア嬢は好きな理由で、選びたい理由で私の所に来てくれるといいなって思ってる」
私の言葉にユフィリア嬢はただ
「ユフィリア」
そんなユフィリア嬢の視線を
「……すまなかったな」
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