1章 転生王女様は急には止まれない(2)
* * *
「ご
「アニスッ! 貴様、今度は何をやらかした!? 何故ユフィリアも連れている!?」
うわ、父上が完全に
貴族学院の夜会会場からユフィリア嬢を
「落ち着いてください、陛下。アニスフィア王女
「あれ? グランツ公もいらっしゃったのですか? 好都合と言えば好都合ですね」
父上の
「……ユフィリア、いつまでそうしているつもりだ?」
「……うぅ……? ッ、お、お父様!? し、失礼しました! アニスフィア王女!」
グランツ公の咎めるような声に反応したユフィリア嬢が勢い良く顔を上げて私の背から降りようとする。私がユフィリア嬢から手を
「あぁ、気にしなくていいよ。グランツ公も、今はちょっとユフィリア嬢に
「アニス、説明せよ! 今度は何をやらかした? 何故ユフィリアを連れている?」
「いやぁ、実は〝
「……このッ、馬鹿者がぁっ!!」
私が
思わず目の前に星が散りそうな程の痛みだ。あまりの痛さに目の奧がカッと熱くなって頭を
「痛いです、父上!
「やかましいわ! お前という奴は、お前という奴は!」
「私だって反省してるんですよ!?」
「反省しているならば
「父上、失敗を
「予防をしろと言うのだ! 繰り返しては
二度目の拳骨が私の頭に叩き込まれる。あまりの痛さに頭を抱えて
うぅ、父上の拳骨は痛いんだって……! 本当に酷いなぁ、もう!
「……ごほん。よろしいでしょうか? アニスフィア王女」
グランツ公の鋭い目付きが私を
「何でしょうか? グランツ公」
「それで、何故ユフィリアと共に王城へ?」
「あぁ、そうそう! その報告に来たんでした! 父上!」
「なんだ、アニスよ」
「アルくんがユフィリア嬢との婚約を破棄するって言ってたんですけど」
「…………は?」
たっぷり間を開けて父上が完全に動きを止めてしまった。横に立っていたグランツ公も思わぬ事を聞いたと言うように目を少し見開かせている。
「……すまぬ、アニス。どうも
「ですから、アルくんがユフィリア嬢との婚約を破棄するって」
「は?」
「婚約破棄です」
「
「アルくんとユフィリア嬢が」
何度も繰り返すように父上に事実を
ようやく再起動した父上は
「アルガルドが、そう言ったと?」
「さっきからそう言ってるじゃないですか!」
「……すまない。悪い夢だと言って欲しいのだが、事実なのか?」
明らかに信じられないといった
「……はい。私の力が
そのまま力なくユフィリア嬢は頭を下げてしまった。あまりの
こうもなっちゃうよね。あんな夜会の会場でいきなり婚約破棄なんて突きつけられて。どんなにユフィリア嬢が
「……なんという事だ! アルガルドの奴め、一体どういうつもりだ!? 何も聞いてはいないぞ!? しかも夜会の最中にだと!?」
「落ち着いてください、陛下」
「これが落ち着いていられるか!」
「あー、父上。お怒りになられる気持ちもわかるんですけど、ユフィリア嬢もショックを受けたばかりなので大きな声はあまり……」
私が
「……ユフィリア」
「ッ、申し訳ありません、お父様……私が
グランツ公の呼びかけにユフィリア嬢はもう頭が上がらないと言うように頭を下げてしまっている。震えは少しずつ強くなるばかりでいたたまれない。
「話を持ち込んだのは私ですけど、とにかくユフィリア嬢もあまり具合が良くないですし座っても良いですか?」
「う、うむ。そうだな……」
私の提案に父上が
一度、
「……
「でも実際起きた事なんですよ、父上」
父上が本気で頭を抱えてしまった。そりゃそうだよね、アルくんとユフィリア嬢の婚約って次期国王と次期
だから婚約破棄なんてそう簡単に認められる筈がない。なのにアルくんが宣言したというのは
「……すまない、グランツ。私の見立てが甘かったと言わざるを得ない」
頭痛を
「陛下ともあろう方がそう簡単に謝罪を口にしてはなりません。……ユフィリア」
「……はい」
「お前とアルガルド王子の仲が進展していないという話は聞いていた。このような事になったのは残念ではある」
「……申し訳ありません」
「謝罪は不要だ。今、お前が考えなければいけないのは今後の振る
「どのような
グランツ公の言葉にユフィリア嬢は悲痛な表情を浮かべて、まるで罪を言い
「こほん。……グランツ公、少しよろしいでしょうか?」
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