1章 転生王女様は急には止まれない(1)
「……ふぅ、やれやれだな」
ごきり、と硬くなった肩を
「陛下、本日の政務お疲れ様でございました」
「良い、グランツ。そう
私にそう声をかけたのは、この国の代表貴族と言っても過言ではないマゼンタ公爵家の当主であり、パレッティア王国の
そしてグランツに声をかけられた私が、パレッティア王国の現国王、オルファンス・イル・パレッティアである。丁度、国王としての激務に一段落が付いた所だった。
「グランツ、茶を
「それではご
「固いと言っているのだ、ここからは国王ではなく友として語らせてくれ」
「……承知した、オルファンス」
口調を
私の方はすっかり
グランツの実家たるマゼンタ公爵家の歴史は長い。王家の血を
そして、何よりグランツの
「……子は親に似るものだがのぅ」
私の呟きを聞いていたのか、グランツが対面の席に座りながら視線を向けてくる。
「どうした? また子供についてでも頭を
「頭を悩ませなかった事などないわい!」
からかうように
グランツの子供、特に娘であるユフィリアは私も実の娘のように
息子であるアルガルドの婚約者だからというのもあるのだが、それ以上にそう思ってしまうのは実の娘である、あの〝うつけ者〟の
「最近は大人しいが、
「アニスフィア王女は、それこそ嵐の申し子のような気質があるからな」
「何
ノックの後、侍女が一礼と共に部屋に入ってお茶を淹れて去っていく。淹れたばかりのお茶を飲み、一息を吐く。
「あいつももう十七歳だと言うのに、落ち着く気配が見えないのはどうしたものか……」
「落ち着いてしまえば、それはもうアニスフィア王女ではないだろう?」
「
「
グランツが
「世の中、
私はすっかり四十代どころか、五十代にすら見えかねないと言われる
顔の
「しかし、その気苦労ももう少し楽になるのではないか?」
「む……。それはアルガルドとユフィリアの事か?」
「間もなくあの子達も卒業だろう。今後、本格的に次期国王と次期
「……そうすんなりと行ってくれると良いのだがな」
「……例の
私のぼやきにグランツは目を細めながら問いかけてくる。私は返事をするように頷く。
「ユフィリアにも
「学院内部の情報は入りにくいが、それでも耳に入る程だからな。つまりはそれだけ表に出てしまっているという事に他ならん」
例の噂というのは、アルガルドがとある男爵令嬢を囲い込んでいるという話だ。ユフィリアが
貴族学院はその性質上、どうしても
「……すまん、グランツ。王家が無理を言って
「婚約者の心を
グランツは
表向き、パレッティア王国は平和そのものだ。だが、目が届きにくい所で多くの問題を抱えている。将来を思えば、アルガルドだけでこの国を支えて行くのに不安を感じた私は婚約者として、幼少の
しかし、どうにもあの二人が
だが、そんな二人に不安を感じていた時にこの噂だ。
「しかし、ユフィリアがどうにかすると言ったのだろう?」
「それは、そうだが……王家が望んだ
簡単に頷く事が出来る訳ではないが、ユフィリアが望むなら婚約を白紙にする事も考えるしかない。元より婚約を望んだのは王家側なのだから、王家側の不始末を
故にユフィリアに婚約
そんな不安を感じた
「国王陛下! 火急の
「火急の報せだと……? 何があった!」
「アニスフィア王女が、例の飛行用
「何をやらかした、あの
思わず声を
「それで、その……」
「その、何だ!? 間を開けるのは止めい、
「失礼致しました! アニスフィア王女なのですが、何故かユフィリア・マゼンタ公爵令嬢を
その報告を受けて私は目を回して一瞬、意識が
「……何をやっとるんじゃ、あのじゃじゃ馬娘ェッ! 今すぐここに連れて来させよ!!」
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