第2話 出会い

あ、はい、どうもご無沙汰しております名も無き神様見習いです。


えー、私は今、異世界にぶっ飛ばされてゲートも消えて帰り方が分からなくなって困っております。

ああぁ〜……泣きたい……あ、泣いてたわ……。


畜生。失敗した。やり方分かるまでもう此処から帰れない……。

因みに此処何処よ?

辺りを見渡してみても、広大な草原が広がっているばかりで、魔物も人間も居ない。

この状況をこの神はどう乗り越えると……?


というか、依頼書に何も参考になること書いてないし! 依頼の癖に転生してどうすればいいかとか書いてないし! 何が依頼だよこん畜生ー!


もうどうすりゃ良いんだよこの世界。とりあえずは見守っとけってか?


私はもう一度辺りを見渡してみた。

しかし誰もいない。誰かが来る気配すらない。


あー、此処はいっそのことワープしてみるか? 久しぶりすぎて何処に飛ぶか知らんけど。

いやいや私にこの世界を平和にしろとか言うんじゃないぞ? 少なくとも私は見習いだ。見習い卒業までの進歩も記録無しのただの役立たずだ。

こういう時は帰るのが一番だろうがくそぉぉぉ……。


「うわあああああああっ!!」


その時だ。誰かの悲鳴が草原一体に響き渡ったのは。


え、誰? 何? 何が起きている? 悲鳴? 魔物がいるのかそこに? いやいや悲鳴なんだから助けに行くしかなかろう。 待っていろ! 私が助けに行ってやる!


私は目を閉じて、悲鳴が聞こえた場へワープをした。


♦︎♦︎♦︎


あー……此処何処だ?

無理矢理ワープしてしまったせいで変な森の中にきてしまった。

やばい。はっきり言ってやばい! あの悲鳴も聞こえないし、辺りを見回しても全てが森。


しまったぁぁ……何をしているんだこの馬鹿!

大体、神の見習いの癖に普通の神のことが出来ると思ったのか!?


「ひぃぃぃ! 助けてぇぇ!」


この音は……足音?

やばい誰か来る!


私は急いで上へと舞い上がり、木の葉に身を隠した。


「た、た、助けてくれー!」


すると、悲鳴を上げながら1人の青年がやって来た。

そしてその後ろには---。


「ガアアア!!」


な、何!? ま、魔物だと!?


青年を追いかけているのは、牙が沢山あり、毛が寝癖の様になっているマンモスの様な魔物だった。


「うわぁあ!」


途端に、青年が私の目の前で転んだ。

え? ちょっ、だ、大丈夫か!? は、早く逃げろ!


しかし魔物は容赦ない。

物凄い勢いで、青年に飛びかかる!


「ウガアアア!!」


「ひ、ひぃいい! 誰か! 助けて! 神様!!」


なっ! 此奴、目の前にいるこの雑魚神様に助けを求めているのか!

何という臆病者なのだ! この神が手本を見せてやろう!


さてどうしたものか。まぁ普通にこの世界から消してしまえば良かろう!

え? そんなこと出来るのかって? ふっ、安心しろ。いくら神様見習いと言えど、存在を消し去ることは基本中の基本だ!


私は頭上に高く手を掲げ、指を鳴らした。

パチン、と甲高い音が木に跳ね返り、森全体に響く。


「ガぁッッッ……」


途端に魔物は雄叫びを止め、姿を消す。


「………あ、……え?」


青年は目を丸くし、体を起こして魔物がいないことを確認する。


「え? あれ? あ、た、助かった!?」


ふふ、この神様に感謝するが良い。

とは言っても私は姿を隠したままだし、聞こえないか。


青年が自分が生きていることに喜んで、涙を流して号泣している。

そこまで怖かったのか? 此奴は冒険者でも勇者でも無さそうだ。


「ハッ!? し、しまった! 急がないといけないんだった!」


青年は急に泣くのをやめ、大急ぎで走り出した。


え!? ちょ、待って!? 置いていくな人間ー!!

私も青年に続き、空に舞い上がりながら走り出した。

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神様見習いと雑魚勇者〜たまたま近くにいた勇者に、私はついて行く〜 月影 @ayagoma

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