神様見習いと雑魚勇者〜たまたま近くにいた勇者に、私はついて行く〜
月影
第1話 依頼は異世界転生!?
あーあ。暇だ。
やはり私は良くない人生を送っている様な気がする。
いや、人生? 違うな。私の寿命はいくらでもあるか。
とはいえ、やはり暇なのは暇だ。
私は頭上にあるリングをくるくると弄びながら、真っ白な羽をばたつかせ、大きなため息をつく。
そう。私は神。あちらの世界でいう「神様」という存在だ。
神様の仕事はただ一つ。人間という生き物を見守る。そうだ見守るだけで良いのだ。いちいち願いごとをちょいちょい叶えるのもアレだし。
まぁともあれ、私は神様見習い。そう見習い、だ。
見守っとけぇーなんて言われても私は出来っこない。だってやったことないんだもん。
しかしだ。こんな空高くに広がる何もない真っ白な世界でふわふわ飛んでいるだけなら、何かハプニングが起きる方がまだマシだ。
とは思っても、私だって一回はやったことある。その時に何が起きたのかは、言うまでもない。
あれから百十五年。いやそろそろ何か依頼が来ても良いだろうが。
まあ神にとっては、こんな時間、一週間に過ぎないけどなぁ。
ん? え? は? 何この紙。依頼? え? え?
……うわぁあ!? 来ました! 来ましたよ依頼!
一体どこのどいつだ見習い様に依頼を頼んだのは!
ヤバい興奮が止まらない! 思わず女子の様に跳ね回ってしまう。
まぁ良いだろう。 こんな世界、誰が見ているもんか!
そんなことよりだ。一体どういう依頼だ? こんな糞雑魚役立たず神様見習いに送ってしまうとは!
心臓をバクバク言わせ、息を切らしながら恐る恐る手紙を見る。
『名も無き神様見習い様
本日の依頼をお受け取り下さり、誠に有難うございます。
今回の依頼の件なのですが、貴方様には異世界へ転生をご協力頂きます。
急なことで誠に申し訳ございませんが、何卒、ご理解お願い致します。
あと主人からの命令で、遺言を授かっております。
おい、神様見習い! お前急に依頼が来て戸惑ってるだろ! そうだよな!
だが、安心しろ! 今回の依頼は只じゃ済まさんぞ! 安心できないか!
そう! お前には! 冒険者と勇者と魔物が溢れる異世界へ転生してもらう!
急なことですまんな! まぁ人手不足なもんでな! だが焦るな! 今回の依頼はただ単に神にとってはピクニックに行く様なものだ! おやつを携行する許可も与えよう! では頼んだぞ! good luck‼︎
とのことです。それではご武運をお祈りしております。
主の身元のただの神より』
……はい? 異世界転生? よく先輩である神共が簡単にやってるあれ?
いやいやいや、無理でしょ!
異世界って、魔物共が沢山生息していて、それで、あの、死に物狂いで冒険者の人間共が闘い合う世界でしょ? やだ怖い!
いや待てよ、いくら見習いであっても神ということは心配いらないということか? いやいや待て待て、私はこの神という存在である体の能力なんぞ知らんぞ!
くそぉぉ無理だぁ……絶対私なんかに無理だぁぁ……!
……あー…、いやでも、少し覗いてみるのはありか? まぁ依頼は途中で辞めることだってできるし!
そうだ。やってみなくては! 私の神様見習い生活で記念すべき一件目の依頼であり、仕事なのだ。きっと主人様だって、お優しい案件にしてくれているだろう!
さて、そうと決まれば、早速転生していく、と、言いたいのだ、が……?
待ってくれ、やり方が分からん。転生なんてしたことないぞ私は!?
誰か教えてくれ異世界転生のやり方を! というかこの手紙、依頼先の異世界の場所書いてないじゃん! どこでもいいのか!?
と、とにかく転生! 転生をさせてくれ! できないと異世界にも行けんだろう!?
そうパニックになっている私の目の前に、急にゲートらしきものが現れた。
へ……? 何だこれ? いやこの紋章! 見たことがあるぞ!
そうだ、他の一流神様が転生の時に使っていたゲートだ!
これを使えば、異世界へ転生できるんじゃないのか? ふっ、成程な。
あ、え、っと……この手帳に書いてある世界に○を付けたら、転生できるって訳か?
まぁ何処でも良いのなら、私は適当に付けてしまうぞ!
『ファンタジー世界 サムラツィヒ』
私は早速、この世界に○を付けた。
おっと、何故ファンタジー世界にしたのかって? ふふ、決まっておろう。
ファンタジー世界ならば、暇な日々を過ごさないからだ! 我ながら素晴らしい考え方!
よし、早速異世界転生してゆこうではないか。
で、これどうやって使うんだ? ん? 何これ、スイッチ? ボタン? まぁ何方でもいいか。あれ、これどうするんだっけ。あ、できた。
と、考えられたのも束の間。
私はゲートの中へと乱暴に吸い込まれてしまった。
♦︎♦︎♦︎
〜『世界 サムラツィヒ
場所 草原
レベル11
基本の戦場』〜
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