第12話

「ず、ずいぶんと物分かりいいんだね……」


「昔何があってかなんて僕には関係ないからね。僕にとって重要なのは今。昔の説明なんてそんなんでいいよ。それで?切り札を飲んじゃった僕はどうすればいいの?こうして僕を誘拐して、話しているということは何か僕のやることがあるんでしょ?」


「うむ」

 

 僕の言葉にリーゼさんは頷く。


「物分かりが良くて助かるわい。確かにやってもらいたいことがある。簡潔に言うと、お主が食べたそれはかつて、この怪物を作り出した彼女の薬指である。妾たちはその指を使って怪物を殺そうとしていたのじゃ」


 本来。

 その指の役割は簡単で、ミリーナさんの一族を襲ってきたときのため制御装置。

 ミリーナさんの一族の誰かしらが死んだときのみようやく使えるようになる代物であり、ぶっちゃけゴミである。

 

 なぜなら、今。

 ミリーナさんの一族はミリーナさんただ一人しかいないからである!

 近親婚を繰り返しすぎて一族に先天性疾患が多く湧き出て多くが若いころに死に、なんとか生きても30になる前には死んでいく。

 そんな欠陥一族が数を維持できるだろうか。


 否である。

 

 製作者もまさか自分の一族がたった一人になるなど予想していなかったのだろう。

 もはや製作者の残したそれはただのゴミとなったのだが、蒼の魔女であるリーゼさんが指へと干渉。

 なんとか対怪物特攻兵器へと生まれ変わらせたのである。

 怪物を操作出来るエネルギーを怪物を殺すエネルギーへと変換したのである。

 

「やってほしいことは簡単じゃ。場は作る。じゃから、最後の一撃を加えてほしいのじゃ。お主の体には怪物を殺すエネルギーが流れ、汝は今。怪物を殺すのに特化しつくした存在となっているのじゃ」


 ゲームとまったくもって同じストーリー、内容。提案。


「なるほど……」

 

 僕は頷く。


「一つ、聞いていいかな?」


「うむ。なんでも聞いてくれて構わぬのじゃ」


 僕の言葉にリーゼさんはゲーム通りに頷いて、声をあげる。


「給料って出る?僕ってば賃金低いんだよね」

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