第2話

 レイオール王国。

 マリスト神国の北方に位置する大国にはとまではいかないそこそこの規模の国であり、特に何か特筆すべきものがあるわけではないそんな国。

 僕は魔界からそんな国へとやってきていた。

 好き勝手出来る魔界とは違い、当然人間社会で生きるにはお金を稼ぐ必要がある。

 僕はレイオール王国の首都であるミンシアの飲食店、ニーアに勤めていた。


「いやー、今日も人多かったなぁ……」


 お昼の時間が終わり、仕事が一旦なくなった中年は声を漏らす。


「お父さん……やっぱり人を雇おうよ、どう考えても3人じゃ人手不足だよ?」


「いや……だがなぁ、お金がなぁ。未だに借金も。レクスを雇った時もかなりの決断を……!」


 中年はお店を建てる際に借金をして建てている。

 その借金を未だ返せていなかった。

 僕の異世界よりもたらした珍しい料理のおかげで売り上げをあげ、もうすぐ返せそうではあるが。


「そんなことよりも僕の給料を上げてほしい」


「「……」」

 

 僕の言葉に対し、サーシャさんも中年も沈黙で持って返す。

 僕はこの国の最低賃金で働いている。ものすごい利益をもたらしているのに。

 未だに僕の功績は認められていない。


「と、とにかく!このままじゃ回らなくなっちゃうよ!」


「だ、だが……このままずっと好調が続くわけじゃないだろうし……」


「まだまだ僕の料理レパトリーは尽きないよ?まだまだ真新しさ出せるよ」


「ほら!レクスもそう言っていることだしさ!」


「う、うむ……だがなぁ……」


 中年のケチさ加減は次元を超越している。

 だが、僕にとって重要なのは今から新しい従業員を雇うことではない。


「だから僕の賃金アップを」


「「……」」


 2人は僕の言葉に対して沈黙を持って返す。


「ん……?」


「え?なに?」


「いや、落とし物を見つけて」


 僕はとあるテーブルの支度に落ちているサイフのようなものを見つけて拾い上げる。

 とあるテーブル。

 そこは最後に来た奇妙な二人組が座っていた席だった。


「……」


 本当に落とすんだな。これ。

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