第3話
「それは財布、かしら?」
僕の手に握られているサイフを見てサーシャが口を開く。
「持った感じ多分そうですね。小銭の音がしますし」
「不味いわね……あっ。あのお客さんのか」
サーシャはまるで心当たりがあるとでも言いたげな言葉を口にする。
「何か心当たりでも?」
「最後に来られたお客さんの方が財布がないと焦ってたのよ。支払いはお連れの人がしていたけど……なるほど。そういうことね」
「え?……お連れって、あの小さな子が払ったの?」
「え、えぇ。そうよ。あの小さな子が財布を取り出して払ったのよ。ちゃんとしている財布を取り出していて、結構ビックリしていた」
「変な人たちですね……なんか、雰囲気まで」
「確かにそうね。でも飲食をやっていると、変なお客さんなんていくらでもいるわ。いちいち気にしていたらやってられないわよ」
「なるほど……それでこれ、どうしましょうか?またご来店されますかね?」
「どうかしら……あぁ言うお客さんは再来してくれることは少ないのだけど」
「わかりやすいお客さんだし、自分がぶらぶら歩いて探した方がわかるやすいかな?」
「そうかもしれないわね……」
サーシャさんは僕の言葉に頷く。
「じゃあ、自分は適当に見て回ってくるよ。もしお戻りになられたら待ってくださるように言っておいて」
「えぇ、そうしておくわ」
「では、行ってきますね」
僕は一言告げ、重い腰をあげる。
「それでお父さん。新しい従業員を」
「クソ!覚えていやがったッ!!!」
お店から出る直前、サーシャさんの言葉を前に叫ぶ中年の声が聞こえてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます