第10話
「そっち持てよ」
「うっす」
「「いっせのせい」」
兵士として従軍している魔族二人が部屋にあるキングサイズのベットを持ち上げて運び出す。
ドアは無駄に馬鹿デカいので、
「「わっせ、わっせ、わっせ」」
運び込む先はここの宝物庫である。
かつての当主が愛用していた家具……それだけでこの家の人間からしてみれば膨大な価値をもつ。
売るよりも褒美品として保管している方が良いだろう。
「ふー。これでスッキリしたわね」
最終的に本当に何もなくなってしまった。
置かれている家具の数はゼロ。
「……ん?ちょっとまって?今日僕ってばどこで寝るの?寝る場所あるの……?」
「ここで一緒に寝るんだよ?」
「寝る場所がなくない?」
「こいつをもってきたよ!」
マキナはそう言ってものすごく容量のあるなろう系の異世界ファンタジーなら大体ある魔法のカバンから布団を取り出す。
「あ、懐かしい」
取り出した布団はまだ僕とマキナが魔界に来ていなかった頃、人間世界で僕が買った布団だった。
僕の作った天然の秘密基地の中でこの布団を敷いて一緒に寝ていたのである。
魔界に来て、自分たちの家を買ってからはベッドを二つ買ってそれを使っていたので、長らく布団は使っていなかったのだ。
「いや、待って?これで寝るの?小さすぎるよ?」
布団のサイズは三年前のサイズ。
今、使うにはどう考えても小さいだろう。
「え?まだ三年しか経っていないよ?」
「お前は大きくなりすぎなんだよ……」
マキナはたった三年の間に十年分くらいの大成長を遂げている。
僕は三年相応……いや、普通の子よりも全然成長をしていないというのに。
「ま、良いか」
僕はベッドの中へと横になる。
……。
…………。
「いや無理でしょ!?大きさ的には僕一人用だよ!?」
ベッドの中は僕一人がちょうどいいレベルだった。どう考えてもマキナは入れない。
「私の上にアルが乗れば良いんだよ!」
「あ、たしかに」
僕は一旦ベッドから出て、マキナがベットの中に入る。
そして、マキナがベッドの中に入ってその上に僕が乗って布団に入る。
うん。これならばなんとか寝ることができるだろう。
「ふへへ……これで大丈夫だね!」
「うん。そうだね」
これならば寝ることが可能だろう。
「明日、家具買わないとね」
「うん。そうだね」
「じゃあ、夕飯作っちゃうねー」
運んできてもらった食材を手にとって、馬鹿広い部屋の中を歩いてキッチンの方へと向かった。
……クソ広い部屋の中にぽつんと布団だけがあるのシュールだな。
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