第9話
「お疲れ、マキナ」
テンゴンとこそこそ会話した後、僕は自分の兄をフルボッコにして頭を叩き潰したマキナの方へと戻る。
「ふふん!これくらい疲れるほどのことでもない!私はすごいからな!」
「ふふふ。そう。流石はマキナだね」
マキナは血だらけの姿のまま僕の方へと近づいてくる。
いつものマキナの甘い匂いでなく、鉄臭い血の匂いが僕の鼻孔を突き刺す。
「……ふー。これで私の強さは証明されたッ!何か私に文句がある奴がいるかッ!」
マキナはここ全体を見渡して声を張り上げる。
その姿はとても威厳に満ち、その声は多くの人を威圧する。
ここにいる魔族たちからは何の声も上がらない。
「居ないようだな。では、これより正式に私がこの家の当主だッ!」
声を張り上げるマキナ。
それに対して魔族たちは悩みながらも……膝を付き、全員が頭を下げる。
「いや、アルは良いよ。あんなことしなくて」
みんな跪いているので、僕もした方が良いかなって思って体を動かしたのだが、マキナに止められる。
「あ、そう?」
なんかみんなやっているのに、人間である僕が立ったままというのもかなり気まずいのだが……。
「部屋に戻るよ。レイアウトを考えなくちゃ。あの男のセンスの部屋なんて私は嫌だからね」
「あぁ。うん……あっ。あの家具とか知ってそうな人見つけたよ。後でその人に声かけよ」
「うん。アルが言うなら声をかけようか」
僕の言葉にマキナが頷く。
「それと、この家の経理も任せてくれない?まともにやっている人いないんじゃない?」
「経理を……?なんで?」
「僕は大事だと思っているからだよ。良い?任せてもらっても」
「うん。もちろん。アルが望むのであれば」
僕の言葉に対してマキナは笑顔で頷いてくれる。良し。これでテンゴンとのやり取りは上手くいくね。
絶対に任せてくれると思ってたけど……万が一にも任せてくれなかったらどうしようかとちょっとだけ不安だったんだよね。
「今日の夜ご飯何を作ってくれる?」
「んー。食材次第かなぁ。というかここにシェフは居ないの?」
「居るけど……私はアルのご飯が食べたいもん。だめ?」
「ふふふ。しょうがないなぁ。うん。僕が作ってあげるね」
「ありがと!」
僕とマキナはダラダラとおしゃべりしながら、部屋の方へと戻った。
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