第6話

「全部ゴミね。さっさと捨ててしまいましょう?」


「えッ!?捨てるのッ!?」

 

 マキナがさも当然のように呟いた言葉に僕は驚愕の声を叫ぶ。

 こんな高そうなものを捨てるとか正気の沙汰ではない。もったないばあさんが異世界へと出張してしまう。

 『異世界出張もったないばあさん!〜他者からもらった力で贅沢な想いをし、多くの物を無駄にしている転生日本人に活を入れようと思います〜』ってタイトルのなろう作品が出来てしまう!


「マキナにとってゴミでも他の人にとったらゴミじゃないよ!?」


「え?……アルにとって、これはゴミじゃないの?欲しい?」


「いや、別に僕は要らないけど……」


「じゃあ、ゴミじゃない」


「僕の要らない物=ゴミじゃないから!売れば金になるでしょう……魔王を目指す過程すべてが暴力というわけにもいかないでしょう?この世界にも商売はあるんだから、それ相応の使い道はあるよ」

 

 単純にお金にすることも、名誉あるこれらの物品を下賜して相手に忠誠を植え付けることもできる。

 使い方はいくらでもある。


「……まぁ、そうね。確かにアルの言うとおりね!そうしましょ。やっぱり私にアルは必要ね」


「いや、マキナが脳筋すぎるだけだと思うよ?」

 

 僕はマキナの言葉に対してそう告げる。


「ふぅー」

 

 豪華そうな家の中で、一体どこに腰を下ろせば良いのか悩んでいるその時。


「貴様ッ!!!」

 

 大きな声と共に扉が開かれ、部屋の中に一人の大男が入ってくる。

 

 ちなみに何故か上半身は裸である。

 マキナが殺した己の父親らしい当主も、マキナも、それに付き従う僕も立派な格好をしているのにこの男は上半身裸で下はボロボロの布をまとっているだけ。

 ……蛮族?マキナに対して『貴様ッ!!!』って言っていることからかなり偉いのはわかるけど……蛮族?

 品性のかけらもないよ。マキナの一族って蛮族の脳筋が多いのかな?それとも魔族全員がそうなのかな?


「我が父を殺すとはどういうつもりだッ!!!」


「何のようですか?私の醜い兄。口を慎みなさい?私がこの家の当主なのよ?」

 

 マキナ。マキナ。

 実の兄に向ける言葉と殺意じゃないと思うの。


「し、し、し……失敗作の分際でッ!」


「私は強さを手に入れた。あれを殺すほどの。どちらが失敗作か……考えるまでもないだろう?」


「父を殺せたのは貴様が卑怯な手を使ったからだッ!貴様に天誅を下し……成るべき俺が当主となるッ!」

 

 上半身裸の大男はマキナを睨みつけ、そう叫ぶ。


「良いでしょう。あなたも殺してあげるわ」


 マキナ。マキナ。

 とっても物騒だよ。

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