第3話

 マキナの行動。

 それは僕がびっくりするくらい早かった。

 何の準備もなかった。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」

 

 僕は断末魔をあげながら空を滑空する。マキナの高速移動による風が僕の体を撫で……殺しにかかってくる。

 朝ごはんを食べたあと、マキナは自分の実家に行くと言い……そのまま僕を抱えて空を飛び始めたのである。圧倒的な速度で。

 行動を宣言してから30分も経っていない。

 

「ぐぅ……」

 

 必死に僕は魔法を発動し、なんとか耐え続ける。必死に耐え続ける。

 

「あっ……もしかして風がキツイ?」


「うん……ちょっとキツイかな」


 マキナの言葉に僕は頷く。


「ご、ごめんね……」

 

 マキナが無詠唱で魔法を発動し、風避けの魔法を展開する。 

 その御蔭で僕を打ち付けていた風がなくなり、安息の時間が手に入る。


「ふぅー」

 

 風から開放された僕は安堵の息を漏らす。


「そろそろ着くよ!ごめんね!気をつかえなくて……」


「良いよ。良いよ。そんなの気にしなくて……全然大丈夫だから」


「そう……?ありがと。あっ。見えてきたよ」

 

 僕の視界に荒野の中、そびえ立っている一つのお城が見えてくる。結構大きなお城だ。

 おぉー。

 そのお城を見て僕は内心感嘆の声を上げる。

 西洋風の良いお城だ。かっこいい。一度で良いから西洋風のお城を見てみたかったんだよね……異世界で、でも見れてよかった。


「良し!突っ込むよ!」


「……へ?」

 

 見えてきたお城に感嘆していた僕……その意識はお城と一切の躊躇なく突っ込んでいくマキナの一言で現実へと叩き起こされる。


「嘘でしょッ!?」

 

 僕は慌てて防御魔法を使用し、衝撃に備える。


「死ね」

 

 容赦なくお城を破壊して中へ入っていくマキナ。

 視界に入ってくるのはびっくりした顔を浮かべている魔族の男。

 視界に入ってくるのは一切容赦なく男へと拳を握るマキナ。

 視界に入ってくるのは男の胸を貫く一切容赦のないマキナ。


「……え?」

 

 僕の頬を真っ赤な液体が濡らした。

 い、いくらなんでもいきなりすぎじゃね?いきなりステーキもびっくりな速度で拳が飛んでいるよ?

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