第8話

「ふー」

 

 僕は黒く染まった聖剣を手に持ち、息を深く吐く。

 聖剣は持った人間の人間性を見抜くという性質を持っている。僕はその性能を利用して自分が歩んできた人生……村人から壮絶ないじめ、

 それはとても性格の良い聖剣の中の人格に対して深い負荷をかける結果となり、結果として聖剣を狂わせることに成功したのだ。

 ゲームだと実際にこの方法を使って少年は聖剣を我が物としていた。


「なぁ……アル」

 

 僕は少年の名前を呼び……一人。

 口を開く。


「僕は死にたくないんだ。……絶対にさ」

 

 死にたくない。これが僕の素直な気持ちだった。

 たとえ、どんな方法を使ったとしても。

 もう二度と……僕はの恐怖を味わいたくない。

 一度死んた僕は死に対して強いトラウマを抱いていた。


「世界を変えるよ。僕は。一体どれほどの死体を積み上げることになろうともね……さようなら。何よりも優しく、愚かに死んでいった愚者よ。少女を助けることが出来なかった自分を責め続けた愚か者よ。僕は彼女を救い……自分の生にしがみつくよ」


 アルビノを許さないのは今、人類に根付いている宗教観故である。

 ならば、その宗教を徹底的に叩けば僕が街の中を歩いても何もされることなく生きることのできる世界を作ることが出来るだろう。


『……』

 

 沈黙してしまった聖剣を背に背負った僕はゆっくりと体を動かし始める。

 聖剣の力によって僕の体を覆っていた傷はきれいになくなっている。


「ごめんね。パパ。ママ」

 

 既に僕の中に両親に心優しい大人になることを望まれ、それを愚直に目指して生きてきた5才児は残っておらず、自分の生にしがみつく計算高い高校生としての姿が色濃く刻み込まれていた。

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