第7話

 『インキュナビラ』に登場するゲームのキャラ。 

 僕が転生したのは前世最後の記憶にある難易度鬼マックスのちょっと特別な少年である。

 基本的にはストーリー上で、この少年は村の人間から火炙りに処され、悲痛な叫び声を上げて絶命する。


 ここで勇者である主人公が当たり前のこととして世の中に浸透し、行っていた行為が……こんな残酷なことを行うのが正義なのだろうか?と疑問に思い、その思いを持って行動を選択すると魔王和睦ルートへと進むことになる。

 勇者を主人公に選ぶと魔族滅亡ルートと魔族和睦ルートの二つに分岐するのだ。

 

 他キャラを主人公に選び、ゲームを開始する場合……分岐として勇者が物語が始める前に死んでしまい、勇者の代わりにモブキャラが戦うというものである。

 

 もし、他キャラが主人公になる場合は既に勇者となる少年は死んでいる設定になるのだが……普通に生きていたため、恐らく勇者を主人公とするゲームシナリオとなる

のだろう。

 

 あいにくと僕は死にたくない。ゲーム通りに行くのであれば僕が死ぬのは避けられないし、そもそもアルビノがひどい迫害を受けるこの世界で僕のようなアルビノが生きていくのは非常に困難極まる。


 で、あるのであれば僕はゲームとは遥かに違うルートを進むしかないだろう。


『ァ……ァ、ち、違う……私は……私はァァァァァァァアアアアアアアアアアアア』

 

 手に持った聖剣より悲痛な声が聞こえてくる。

 ちょっと特殊な少年……『神を憎む者』という称号をもつ少年は神の奇跡としてこの世界に存在する魔法を使う事ができない。

 そのため、少年は聖剣一本で戦う必要がある。それも、少年の深い闇に触れ、聖なる力の大半を失って堕ちた存在となった聖剣で。

 こんな圧倒的なまでの不利状況であるからこそ、ちょっと特殊な少年を主人公とした物語は難しいのである。

 

「許せ。僕が生きるためだ」

 

 苦しみ、呻き声をあげている聖剣を手にもち、僕は口を開く。

 僕の中で心優しき5才児は死んでいき……薄汚れた高校生としての人格が強く現れてきていた。

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