第6話

「クソ……痛い……魔王に上級ポーションなんて高価なものを渡すんじゃなかった……!」


 僕は村人からの壮絶な虐めによる大量の傷を抱えながら森の中をゆっくりと進んでいた。

 白髪、赤眼を持つ……所謂アルビノと呼ばれる存在は神に逆らう存在として忌み嫌われ……かと言って人の手で殺すと災いが起こると言われているせいでアルビノである僕は死なない程度にボコされていた。

 ……僕がアルビノであるせいで……両親は……。

 

「いった」

 

 僕はたまたま足で弾いた石が自分の傷口に当たったことで激痛が走り、覆わず蹲ってしまう。


「……つぅ。我慢しろ。僕。歩け」

 

 ぬくぬくと安全な空間で生きてきた現代高校生たる僕は体に走る激痛のせいで今すぐに泣き出したくなるのだが、今まで壮絶な人生を歩んできた五才児の記憶が僕に僅かな耐久心をつけていた。


「クソっ……万歳突撃が出来る日本人は狂っているだろッ!」

 

 僕は理不尽に自身の先祖の狂人性に文句を言いながら、なんとか進んでいく。


「見えた……」

 

 しばらく歩いていると、ようやく目的地であった洞窟が見えてくる。


「んっ……」

 

 僕は小さな洞窟の中に入り、そこにあるとある仕掛けを動かして……地下へと通じる階段の姿を顕にさせる。


「ふーふーふー」

 

 僕は激痛にあえぐ体を、血のしたたる体を動かし、階段を降りていく。

 階段を降りた先。

 そこにあるのは一つの祭壇である。

 薄汚い洞窟にも……この僕にも似合わない光り輝く聖剣が飾られる祭壇。

 聖剣による光によって祭壇周辺だけ照らされているそこは実に神秘的であり、世界の脇役たる僕が入ってはいけない空間を魅せていた。


『な、なんだ!?お前はッ!?』

 

 僕の頭の中に美しい女性の声が響いてくる。

 そんな声を僕は無視し、躊躇なく光輝く空間へと入っていく。一度小さな光から大きな光へと身を投げ出した僕に今更躊躇する理由などない。


「世界を知れ、闇を知れ、神の従僕よ」

 

 僕は何の躊躇もなく聖剣へと触れる。

 5歳の僕は悲鳴を上げ、高校生の僕は何の感情も抱かず、淡々と己がすべきことに従った。

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