第5話

 彼女は……少し特殊な魔族だった。

 いつも、一人生きていた。

 だからこそ、彼女は自分を助けてくれた少年を見て、世界の希望を見た。

 人類は温かく自分を迎え入れてくれてくれるかもしれない、と。

 だが、現実は無情だった。


「な、んで……」

 

 翼を広げ、上空で自分を助けてくれた日の光を反射してきれいに光る美しい銀髪に、真っ赤な人を魅了する瞳を持った世界で一番美形な種族と言われているエルフなんかよりも遥かに美形の少年を観察していた彼女は……少年が村の人間から石を投げつけられ、蹴られているところを見てしまった。


「なんで……こ、こんなひどいことを……」

 

 少年の頭からは血が流れ、小さな……小さな口から血反吐を吐いて呻く。


「汚れた男がッ!二度と姿を見せるなッ!この!」


「キャッ!血を吐くな!村が汚れる!」


「呪われた子が!」


「神の敵めッ!殺さぬだけ感謝しろッ!」

 

 少年は村にいるすべての大人、子供から悪意を向けられ……それでも乾いた笑顔を少年は浮かべながら体を引きずって足を進ませる。

 最終的に少年がたどり着いたのは一つのボロボロの小屋だった。

 

「……ッ!!!」

 

 上空から見ていた少年の入っていった小屋を見た少女は驚愕する。

 屋根が壊され、上空からでも見える小屋の中。

 そこにあったのは二つの腐った猟奇的な殺された方をされている人間のご遺体だった。

 既にそのご遺体は腐っているようで、ほとんど生前の姿がわからない状態となっていた。


「……」

 

 少年は淡々と手慣れた手付きでご遺体にたかっている蝿を叩き潰し、湧いている蛆虫をすべて腕ですくってどかしてきれいな状態にしていく。

 その後、少年はその二つのご遺体の前で腕を組んで祈りを捧げ……瞳から涙を流す。

 

 このひどい二つのご遺体は少年のご両親だったのだろうか。

 だとしたら……なんて残酷なのだろうか。上から見ていた少女は自分を助けてくれた心優しき少年の姿を見て、つい。涙を流してしまう。


「なんで……」


 上空に浮かぶ少女はどこかへと向かって歩き出した少年をただただ呆然と眺め、この世界の残酷さを嘆いた。

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