Vtuber
ここは日の当たらない地下にあるパソコンとロボットに溢れたある研究室の中の話。
「そろそろ蛍光灯、変えなきゃな〜」
ズズズとコーヒーを飲んで天然パーマのAはそう呟いた。
「お〜い、アンドロイドB、蛍光灯を注文してくれ。」
「はい、わかりました。A様。」
ピピピピと音を鳴らしているのがアンドロイドB。Bはネットで蛍光灯を注文した。
「そうだ、忘れてた。」
そうAは言うともう一度Bに言う。
「B、ついでにマウスパッドも注文してくれ。もうボロボロなんだった。」
パソコンに向かってアンドロイドの制作を続けている彼のマウスパッドはもうボロ雑巾のようになってしまっていた。
「では、どのようなデザインにしましょうか。」
「ちょっと見せてくれ。」
「了解しました。」
大量に映し出されたマウスパッドの中でAはあるものに注目した。
「Vtuber・・・?」
『Vtuber』そんな見慣れない単語に首をかしげる。
「B、Vtuberについて調べてくれ。」
「はい、了解しました。」
そのまま検索をしていくBを静かに眺めるA。そして検索が終わる。
「Vtuber、正式名称バーチャルYouTuber。バーチャルライバーとも呼ばれる。主にインターネットやメディアで活動する2DCGや3DCGで描画されたキャラクター(アバター)、もしくはそれらを用いて動画投稿・生放送を行う配信者の総称を指す語として使用されている。」
「なるほど。このマウスパッドについているキャラがおしゃべりしたりゲームをするってわけだな。」
「はい、おおむねその認識で問題ありません。最近ではボイスチェンジャーを用いて男性が女性の姿で活動していることもあるそうです。」
だがAには一つ疑問が浮かぶ。
「ちょっと待て。これって中身がいるのか?」
「いますよ。」
サラリとBが答える。
「これ、もしかしたら外見が美少女でも中身が油ギトギトのおっさんかもしれないってこと?」
「そうなります。」
「今俺が買おうとしてたこのマウスパッドも中身おじさんかもってことなのか…」
Aの背筋に悪寒が走る。
「問題ありません。そのキャラクターの中身は女性のようです。」
「あ、そうなの。よかった〜。」
安心するA。そしてBが確認する。
「ではこのマウスパッドでよろしいですか?」
「ああ、頼んだ。」
マウスパッドを注文したAはぽつりとつぶやく。
「とんでもねぇ時代になったなぁ…」
開発者のA、そしてアンドロイドのB。この二人の日常はこうして続いていくのだった。
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