AとB

わんだーらんど

鉛筆

 これはある晴れた日、春の暖かい日が差し込むマンションの一室の一コマ大学二年生のAとB、そんな二人の日常。

 AはBにふとこう問いかける

「なぁなぁなぁB」

「なんだよA?」

「お前って鉛筆が尖ってるのをなんて言うよ?」

すかさずBが答える

「トキントキンだな。」

 その返事を聞いたAは笑った

「ははは。だと思った。」

「は?」

 首を傾げるB。それを見てまた笑うA。

「何がおかしいんだ?」

「いや〜お前ってやっぱり愛知出身なんだなって思って。」

「トキントキンのどこがそんなになるんだよ。」

「知ってるか?トキントキンって言うの愛知県だけだぞ。」

 一瞬Bが固まる。

「・・・・・・まじ?」

 その通りである。Aの言う通りトキントキンとは尖っていることを指す愛知県ならではの方言なのだ。ただ、愛知県にずっと住んでいたBにとってそれは信じられないことなのであった。

「まじだぞ。」

「嘘だ!父さんも母さんもみんな言ってるんだぞ!」

「二人とも愛知県民だからだろうが!」

 パニックになってトンチンカンなことを言ったBにすかさずツッコミをいれるA。

 そしてそんな現実を知り、ものすごいショックを受けて崩れ落ちるB。

「嘘だろ・・・」

「お前そんなショックなのか。鉛筆の呼び方ごときで。」

「はぁ〜〜〜?鉛筆呼び方ごとき〜〜〜?かっこいいだろうが!トキントキン!んじゃあお前はなんて言うんだよ?尖ってる鉛筆。」

 ムキになったBはAに問いかけた。

「そりゃケンケンだろ?」

「え?」

 全く聞いたことのない言葉に驚く。

「いやお前、普通ケンケンだろ。」

「いやいやいや!ケンケンはないだろ。ちょっと待ってろ。」

 スマホを取り出すB。検索ツールで『鉛筆 ケンケン』と調べる。数分後、Bはある記事を見つけた。

「A、お前ってもしかして石川県民?」

「そうだが?」

「石川県だけだってよ、ケンケンって。」

 先ほどのBのごとく固まるA。

「嘘だぁぁぁぁぁぁぁ!」

  Aの悲鳴が部屋に響く。

 鉛筆の呼び方でここまで熱心になれる二人。こうして今日もこのAとBの日常は過ぎていく。

 


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