第10話 それぞれのアタック

一限目、如月さんは授業をサボった。

クラスが騒然とする中、二限目から如月さんは何食わぬ顔で戻ってきた。

そして昼休みとなった。


「旦那様♪本日もお弁当をご用意しました。

 一緒に食べましょう♪」


「はい…あの…ありがとうでごじゃる…

 ところで…なっちゃんとはどうなったのでござるか?」


と聞いた瞬間…


『『 え!?成瀬さん!?どうしてここに??? 』』

クラスが騒めき立つ音が聞こえた。


「あ…いた♪

 マー君!私マー君のお弁当作ってきたの♪

 一緒に食べましょう♪」


「え!?な…なっちゃん??」


旦那様が困ったように私を見る。

私はため息をつきつつも


「不本意ですが…成瀬さんの事を認めました。

 お互いに話合って、高校卒業するまでに旦那様にアピールして

 どちらかを選んでいただけるように勝負しましょうと…

 なので、一緒に食べても大丈夫ですよ。」


『『 何だって~~~!? 』』


「この豚が?二股!?」

「嘘だろ?こんな事が現実で起こりうるのか!?」

「くっ…羨ましすぎる…あんな豚に嫉妬する事になるとは…」

「あんな豚が許されるのなら俺だって…」


悪意ある声が至る所から聞こえてきた。


まあ、こんな美少女がお弁当を作ってくれれば

嫉妬の1つや2つは仕方がないでござる…

そう思い、小生は苦笑するしかなかった。


如月さんのお弁当もなっちゃんのお弁当もとても手間がかかっていて、

尚且つとても美味しかったので小生はとても感謝した。


「二人とも本当に美味しかったでござる。

 量も2つ分あるから満足だし、嬉しかったでござる~♪

 ありがとうでござる~♪」


『『 お粗末様でした♪良かった。 』』


相変らず不穏の空気感が漂う教室ではあったが、

二人の笑顔を見るとそんな事はどうでも良くなった。


・・・


そして放課後。

「旦那様♪本日は途中までは一緒に帰りましょう♪」

「はい。」


教室を出ると

「マー君♪一緒に帰ろ♪」


「成瀬さんは朝一緒に登校したのに…少しずるいのではないですか?」

如月さんはちょっとムッとした顔で言った。


「如月さんは昨日一緒に帰るだけでなく、放課後デートしたんでしょ?」

「朝一緒に登校する事は出来ても、デートはできないから…

 私だって放課後デートしたいんだよ。」


「…仕方ないですね…ではこうしましょう。

 朝は私が不利です。でも私だって旦那様と朝一緒に登校したいです。

 ですので、商店街のパン屋の前で待ち合わせして、

 そこから一緒に登校させて下さい。

 その代わり放課後成瀬さんも下校するのは我慢します。」


「…そうね…分かったわ。」


「あと放課後デートですが…旦那様と話し合って週一ということになりました。

 そこは成瀬さんも守って欲しいです。」


「なるほど…分かったわ。

 あくまで一緒にいられる時間を同程度にして勝負するって事ね?」


「はい。お互いに遺恨を残さないためにも最初にこのルールで行きましょう。」


「異論はないわ。」


という結構大事な約束事が

一番該当する本人そっちのけで決められるのであった。





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