第5話 ドキドキの放課後デートと不穏な視線

お昼が終わる頃…教室はほぼ男子全員が小生に白い視線を送っており…

殺伐とした空気となっていた。

そして放課後…再び激震が走る。


「旦那様!…もう皆さんにも私たちの関係はカミングアウトした事ですし、

 放課後一緒に帰りませんか?

 な、なんならデートでも…ふふっ、私放課後デートって憧れてましたの♡」


もはや天使様は殻を破ったかのように積極的になっていた。


いつも放課後、如月さんと一緒にいた陽キャメンバーは

たった一日で雰囲気が変わってしまった如月さんの姿に唖然としていた。


「ふ…ふぇえええ~~~ん…」

泣き出してしまう陽キャ女子…


「ち、ちくしょーーー!!!」

捨て台詞を吐き、教室を走り出す陽キャ男子…


まさにカオス状態であった。


そんな雰囲気など関係ござらんと言うが如く…

「さあ…帰りましょう!旦那様♡」

小生の手を引っ張って、教室を出て行った。


・・・


校門を出るまで小生と如月さんは非常に好奇に目に晒された。

それはそうだ。リアル版美女と野獣なのだから…


校門を出ると…突然小生は異世界に転生した…

う…腕に…信じられない程の…

これまで生きてきた中で感じた事のない柔らかさを感じた。


手を放し、如月さんが突然腕を組んできたのだ。

小生は顔がとても熱くなっていた。


それに気づいた如月さんは

「ふふっ…、可愛いです♡旦那様♡」


もはや天使様ではなく小悪魔様になっていた…気がするござる…


・・・


意識が吹っ飛びどこに向かって歩いているかも理解できなかった小生は

やっと自分の位置を把握した。

どうやらいつのまにか喫茶店で座っていたらしい。


「旦那様?も~~~う!聞いているのですか?」

「あ、申し訳ないでござる。

 女性の方と初めて腕を組んだ事に舞い上がっていて

 ぼーとしていたでござる!!」


「本当ですか!?ふふっ…嬉しいな♡

 実は…私も男の方と腕を組んだのは初めてで…

 本当はとても緊張していたのですが…頑張った甲斐がありました♡」


「そ、その…教室では殺伐とした雰囲気でそれどころじゃなかったでござるが

 今は…正直…た、楽しいでござる…

 あまり会話がなくても…如月さんの笑顔を眺めるだけで…

 何か心がポカポカしてくるでござる。

 こ、これが…放課後デートでござるか…」


「わ、私も…とても楽しいです♡

 これから毎日でも放課後デートしたいです♡」


「そ、それは流石に小生の心臓が持ちませぬ…

 そ、それに…友達も大事でござるよ?

 今まで一緒にいた友達も急に交流が出来なくなったら…

 寂しいと感じると思うでござる。

 だから…友達との交流も大切にしてくだされ。」


「…旦那様は…お優しいのですね…

 そうですね…ごめんなさい。

 私少しお友達の事を軽視しすぎました。

 私だって仲良くしていた人が急に交流がなくなったら寂しく感じますものね。

 明日皆さんに謝ります。

 放課後デートは週に1~2回でどうでしょうか?」


「は…はい。小生は十分でございまする。」


「ところで旦那様は前髪を切らないのですか?

 私の予想だと顔立ちはしっかりしてそうなので前髪さえ切れば

 爽やか系男子になるような気がするのですが…」


「あっ…前髪はちょっと…」


「こういうのは思いっきりも大事ですよ?えいっ!」

如月さんは俯いている小生の髪を隙を見てそっとあげた。

するとおでこに大きな傷が見えてしまった。


「ご、ごめんなさい!!

 調子に乗り過ぎました。本当にごめんなさい!!」


「いえ…大丈夫でござる…なので前髪は…」


「はい。本当に申し訳ありませんでした。

 デリカシーに欠けてました…

 でも…そんな傷なんて私気にしませんよ?

 むしろ男の勲章みたいで素敵です…ぽっ♡」


・・・


喫茶店を出て帰り道、再び如月さんは腕を組んで

幸せそうな微笑みを俺に向けていた。


その時…一つの影が小生達を見つめていた。

「な!?何あれ!?…どうなっているの???」

如月さんと同じく学園で一二を争う美少女と呼び声の高い勝の幼馴染 成瀬 夏美

その人であった。




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