第16話
降るような星空の下、彼らは波打ち際を並んで歩いた。
玲子は脱いだパンプスを右手に持ち、祐二の右側へぴったり寄り添うようにして歩いていた。
波が単調なリズムで足元へ打ち寄せ、すぐ引いて行った。
玲子も祐二も何も言わず、黙りこくってただ歩いた。
祐二は彼女と肩を寄せ合うようにして歩きながら、ひどい圧迫感を覚えた。
まるで、全身の骨が音を立てて軋むようだ。
もしここで祐二が突然玲子の円い肩を抱き寄せたとしても、彼女は何も咎めないだろうし、彼の右手がそっと触れたなら、優しく握り返してくれるに違いない。
そんな雰囲気だった。
夜の浜を渡る潮風は湿気を帯びて冷たかったが、祐二の身体は正反対だった。
体内を沸騰した血液が駆け巡り、全身がカッと燃えている。
それでも、やはり彼には何もできなかった。
口ほどにもない奥手の17歳は、女と二人きりで夜更けの海岸を歩いたことなどなく、こうして玲子と並んで歩いても気の利いたセリフひとつ言えなかったし、彼女に自分の存在を訴えかけるどんな行動もとることができなかった。
祐二は彼女の肩を抱き寄せなかったし、左手に触れたりもしなかった。
玲子もそんなことは期待していないだろうと思った。
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