拓実の話①
「疲れたー」
ゴロリと横に寝転がった。
「もう、無理です」
「そうだよな!やりすぎだよな」
「違います。そうじゃなくて、もう無理なんです」
俺は、彼女を俺が進んできた道に連れてきたんだ。
俺の名前は、
彼女の名前は、
杏美との出会いは、三年前だった。
よく通ってたパチンコ屋さんのコーヒーを売ってる女の子だった。
【連絡して下さい】と書いた紙をコーヒーと一緒に渡されたのがきっかけだった。
可愛い女の子だったから、俺は迷わず連絡をした。
何度も連絡を取り、デートを重ねたある日、杏美に告白された。
「ごめん」
「どうしてですか?」
「俺、そのエッチの相性が合わない人とは付き合えないんだ」
「それなら、します」
「えっ?」
「してから、決めて下さい」
そう言って、杏美と寝たんだ。
「初めてだって、言ってよ」
「ごめんなさい。ひかれると思ったから…。」
「いや、ひきはしないよ」
「それなら、よかった」
痛みと何かよくわからない感情で杏美は泣いていた。
それで、今に至る。
「じゃあ、終わろうか」
「はい」
何で、泣いてんだよ!
めんどくさいな!
「じゃあ、帰ろうか」
「今日だけは…居てください」
「あー、三年目の記念日だっけ?女ってそういうとこ拘るよな」
「ごめんなさい」
「いいよ、いいよ!三年目のセフレ記念日だろ?」
杏美は、ボロボロ泣いていた。
「そうですね」
無理やり笑った杏美を見た瞬間、俺は思い出した。
俺をこの道に連れてきた女の事を…。
「拓実君、ごめんね」
「いいんだ」
杏美とは、違うかったから気づかなかった。
だけど、俺、やってる事あの女と同じだ。
「重たい子は、嫌いだよね。だから、待って。ちゃんと重くないようにするから」
杏美は、必死で涙をとめようとしてる。
「俺を好きじゃないだろ?もう、無理すんなよ!嫌で泣いてるなら、止めなくていいから」
俺の言葉に、杏美は俺を見つめて固まっていた。
「本気で言ってるの?」
「本気だよ!杏美だってもう無理だって」
「それは、違うんだよ」
「違うって何だよ」
「違うんだよ」
「だから、何だって言ってんだよ」
「だから…」
「杏美?」
「ちょっと眠るね」
そう言って、杏美は横になった。
泣いてる。
杏美は、ボロボロ泣いてる。
あの日の俺みたいだ。
俺は、杏美をあの日の俺にしたくて、この道に連れてきちゃったのかな?
杏美に触れられなくて、背中合わせに隣に寝転んだ。
いつから、こんな酷い人間になったのかな…俺
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