拓実の話②
15年前ー
「付き合って下さい」
「でも、私好きな人いるんだよ」
「お試しでいいから」
「わかった」
俺は、一つ上の
とこちゃんは、めちゃくちゃ俺のタイプだった。
「これ、食べて」
「うん、美味しい」
「でしょ?」
俺は、出会った瞬間からこの人と結婚すると思っていた。
絶対、この人と結婚するんだ。
なのに…。
何度かデートを重ねたある日の出来事だった。
「拓実君、別れようか?」
「何で?」
「好きな人が忘れられないから」
「母さんに会ったとか?」
「そんなわけないよ」
そう言って、とこちゃんと俺の恋は終わった。
とこちゃんは、両親を早くに失くして従姉妹の家に育てられていた。
俺は、母子家庭だった。
本気で、とこちゃんと結婚したかったんだ。
俺は、あれから毎日毎日泣いていた。
そんなある日だった。
【クリスマス暇してる?】
【いいけど】
【じゃあ、家においで】
【わかった】
呼び出して来たのは、三原絵里香、俺より2つ上だった。
クリスマス、絵里香さんの家に行ったんだ。
「でさー、最低でしょ?拓実、わかる」
「わかる」
彼氏にフラれて落ち込んでるって話だった。
俺は、興味がなかった。
絵里香さんには、何の魅力もなかった。
突然、キスをされた。
「やめてくれよ」
とこちゃんとキスがしたかった。
「いいじゃん、減るもんじゃないし」
パサパサと服を脱がれた。
「どういうつもり?」
「しようよ、拓実」
「いらないよ」
俺は、初めては全部とこちゃんがいいんだよ。
ドサッ…
押し倒された。
「何?」
「こんなになってるじゃん。楽にしてあげるよ」
「いらないよ」
「初めては、奪いたかったの?童貞のままだよね?拓実」
「やめて」
「やめない」
ズルズルと終わった。
「拓実、またしようね」
嬉しそうに笑っていた。
「帰るね」
俺は、服を着た。
「何で、クリスマスまだ終わってない」
「気分じゃないから」
心にポッカリ穴が空いた気がした。
携帯画面を見つめた。
とこちゃんのメールを見つめた。
【楽しみだよ!何の映画にする?】
【寝顔、可愛かったよ!】
【拓実君は、どんな事が好き?】
【今から、ちょっとだけ話したい】
【次は、どこに行こうか】
とこちゃんに、全部あげたかった。
初めては、全部とこちゃんがよかった。
キスぐらいは、とこちゃんがよかった。
家に帰ると、母が誰かと電話をしていた。
「そうなのよ。拓実と別れさせれてよかったわ!」
何の話…。
「拓実には、苦労して欲しくないもの…。だって、あの子親いないでしょ?」
とこちゃんの事だとわかった。
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