07.社畜と奴隷5

 姫様からの、ありがたくも端的すぎる説明に、唖然とした表情で不服なことを顔全体で抗議した。


「なによ? その顔、凄く気持ち悪いわ。何? 今の説明じゃ不服なの?」


 お返しと言わんばかりに、嫌そうな顔で問われてしまった。

 喋るとまた暴言になりそうなので、首肯で返す。


「めんどくさいわねえ、ハンス! 代わりに説明して」

「かしこまりました」


 あ、ゴリさんの名前はハンスっていうのか。


「それでは、姫様に代わり、このハンス・クロードが説明させてもらいます。あ、それと、もう喋ってもいいですよ。黙って聞くだけなのはやりにくいでしょう」

 

 何やらまだ穏やかではないが、一応発言の許可がでたから喋っていいのだろう。


「話しが分かるな、ゴリさん!(ご理解いただきありがとうございます。ハンスさん)」


 ……やっぱり思うように話せない。これって結構なストレスだな。

 昔、突然の海外赴任の記憶が頭をかすめた。あの頃も言葉の壁に苦労したなあ。懐かしの記憶に浸っていたら射るような視線と言葉で現実に引き戻された。


「あなたのその口調、もしかしてわざとなの? 凄く不愉快ね」

「ち、違うんだよ! 何か俺の考えてる事と発してる言葉が違うんだよ! (も、申し訳ありません。私の意思に反して乱暴な言葉遣いになってしまっています……)」

「信じられないわね!!!」


 もの凄く力強く否定されてしまった。


「いい? 愚かなあなたに説明してあげる。私の隷属魔法はね、相手の使う言語に関係なく私と、私の奴隷達と会話ができるようになるの。あなたがどこの出身でどんな国の言葉を使ってるか知らないけど、発言した言葉はきちんと私につたわってるの。分かる?」


 つまり、翻訳コンニャクか。魔法って便利だな。

 いや、全然便利じゃない。俺の言葉、ちゃんと翻訳されてないんだけど? 俺は日本語で話している。だけれども、一応は通じてはいる。言葉使いは全く違うけど。


「なあ、聞いてもいいか?」

 

 今度は意識して言葉使いを変えてみた。……なんでこっちにはきちんと翻訳されるんだよ。それなら敬語もきちんと翻訳してほしい。


「なによ?」


 ぶっきらぼうだが、きちんと応答してくれるようだ。

 よかった。意外と寛容なのかもしれない。

 見た目はきつそうなのに。


「日本語って知ってる?」

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