第34話 サマーバケーション

「これは難問ね……」


アカネとガルドの二人との探索により、私は専用のプライベートビーチに最適な場所を見つけた。


私の領地の中で、しかも難易度の高い森により私の転移か余程の強者でないと来れない場所となれば、プライベートビーチにしても誰からも文句は出ないだろう。


そんな訳で、私は早々に手を回したのだけど、それから色々と準備を進める中で1つの難問に当たっていた。


「ビキニとワンピース……いえ、それ以外にもあるのよねぇ……むむむ……」


私が悩んでいること。


それは――リナリアの水着に関してであった。


プライベートビーチが見つかったとなれば、そこには当然水着姿のリナリアが居て欲しい。


そうとなればやる事は一つ……私がリ

ナリアの水着を考えないと。


露出に関して今世はかなり厳しい側面があるので、可愛い水着なんかはあまり出回ってないので自分で考える必要があるのよねぇ。


そんな訳で私は悩む。


「確かフレアがフリル付きだったわね、フリルもいいわね」


前世で読んだうろ覚えなファッション雑誌を思い出して手元を動かしながらあれこれと出てきたものを選考する作業に没頭する。


そこまでオシャレに興味はなかった前世の私ではあっても、最低限は知識としてあるのでこうして思い出せるのは本当に良かったと思う。


まあ、ほとんど前世の親友の瑞穂のお陰だけどね。


私と違って、オタク気質であってもオシャレな陽キャであった瑞穂のお節介で、あれこれと読ませて貰ったのだけど、それが今世でこうして役に立つのだから、知識とは持っておくに越したことはないと私は思った。


瑞穂、ありがとう!


それにしても、よくよく思い出さなくても瑞穂には助けられっぱなしだったなぁと思うくらいには私は親友のお世話になってたっけ。


家庭の事情で面倒くさい子だった私によくしてくれて、今の私の元になったのも瑞穂のような気もする。


そういえば、瑞穂の目の前で死んじゃったからトラウマになってないといいけど……元気に彼氏とくっ付いて幸せな家庭を築いていてくれたら嬉しいわね。


さて、そんな逸れそうな思考を戻すと、私は再び思案を巡らせる。


「スク水、競泳水着……なんか違うわね」


スク水と競泳水着もきっと似合うけど、プライベートビーチで着るには何か違うようにも感じる。


リナリアなら絶対似合うけど、どうせなら可愛いのがいいわね。


「ワンピースタイプで清楚さを出すのもいいけど……ここは王道にシンプルな色合いでビキニを試すのもありね」


気がつくと山のように重なるリナリアの水着の候補のラフ絵。


この中に一枚も自分や他人のがなく、全てリナリアに着てもらいたいものだというのだから、私も欲張りさんね。


「さて、どれを選ぼうかしら……いえ、全て頼むのもいいかも」


使わなくても、作っておけば着てくれるかもしれないのでここはお金に関して考えずに全て作ることにする。


勿論、節約や節制を知らない訳ではないけど、リナリアのためならこの程度の出費はむしろ少なすぎるほどだった。


物欲の低いリナリアは自分からオネダリをしたことがないし、リナリア自身にもかなりのお給金を出してるのに全て貯金してるほどにリナリアは欲がない。


強いていえば、私からの愛情を欲するくらいなので、余計にイチャイチャしてしまうのだけど、そのオネダリがまた可愛くて――おっと、失敬。


ともかく、リナリアのためというよりも私がリナリアに着て欲しいのでこうしてポケットマネーから払うのは問題ないはず。


「ふふ、楽しみだわ」


一人きりの自室で一人微笑む私は結構怪しいけど、リナリアとの初めての海水浴となればテンションが上がるのは当然。


そのための準備を抜かりなく行うために私はリナリアの水着を楽しみにしつつ奔走するのであった。









「カトレア様、いい天気ですね〜」

「ええ、本当ね」


念入りに準備をして、スケジュールをきちんと空けたことにより、本日はなんの憂いもなくリナリアとの海水浴が楽しめる。


二人で空間魔法の転移でビーチへと飛ぶと、透き通った青い海と白い砂浜がまさに最高のロケーションになっていた。


「じゃあ、早速着替えましょうか」

「はい!」


ニコニコなリナリアと一緒に簡易的な更衣室を用意するとそれぞれ別れて着替える。


せっかくなので一緒に着替えて役得にあやかるのも悪くないけど、そこは楽しみをとっておく意味でもあえて別にしてみた。


誰の目もないとはいえ、リナリアが覗かれないために警戒だけは怠ってないけど、ここに来られるような実力者が居ることに備えてくノ一アカネにも待機して貰ってはいる。


ちなみに、今日の海水浴はリナリアと二人きりだ。


他にも人を呼ぶことはあるかもしれないけど、リナリアの初めては全て私が欲しいというワガママと、リナリアの水着姿を独り占めしたい気持ちもあり、そうなったけどこういう時こそ二人きりの方がいいと私は思うのよ。


それに、誰かを呼ぶとしても家族か使用人、あとは本当に親しい人のみなので最初くらいは二人きりでも問題ないでしょう。


「ふむ……まあまあね」


簡易的とはいえ、更衣室には鏡もあり、私は自分の姿をみて少し満足する。


黒のビキニをベースに、俗に言うパレオと呼ばれるスカートのようなものを合わせたことで、カトレアさんの大人っぽさを引き出していた。


可愛い系よりも綺麗系が似合うカトレアさんはリナリアと正反対だけど、つり目以外は本当に容姿は悪くないと私は思った。


「でも、少しキツイかしら。まあ、成長期から仕方ないけど……凄いボリュームね」


平均と比べるまでもなく大きめな胸をお持ちだったのはゲーム時代から知ってたし、お母様を見ていれば自分の辿りそうな道筋も見えたは見えたけど、それでも日々大きくなるのは凄いと思う。


リナリアも結構スタイルが良いけど、胸と背に関してはカトレアさんの方が大きかったりするわね。


とはいえ、リナリアの平均的だけど凄く母性を感じる胸やキュッと引き締まった腰と、安産形と呼ばれそうなお尻も凄くいいので個性が大切なのでしょう。


背丈も私より小さめではあっても成長期途中で150cm前後なので十分だろうし、それに私としては可愛いリナリアを愛でられるので背丈が高めなカトレアさんに感謝したい気持ちもあった。


「さて、もう少しかかるかしら」


更衣室から出ると、リナリアはまだ終わってないようでリナリアのために用意した簡易更衣室は使用中になっていた。


「なら、準備ね」


着慣れないリナリアをお手伝いする役得もあるけど、その前に二人きりなので色々と準備が必要だと私は自身の空間魔法で亜空間からパラソルや寛ぐためのリクライニングチェアを取り出して配置していく。


それから、私作のアウトドア用の魔道具を設置するのも忘れない。


バーベキュー用のコンロや、飲み物を冷やして入れておくクーラーボックスなんかもこの日のために作っておいた。


リナリアのために調理スペースを用意することも忘れないけど、バーベキューくらいなら私でも……なんて、甘い考えはないので、リナリアにお任せする予定だ。


そうして待つことしばらく。


更衣室から出てきたリナリアが恥ずかしそうにはにかむ。


「お、お待たせしました……あの、どう……でしょう……?」


薄い水色のビキニに、下には可愛いフリルが付いており、リナリアの可愛さを引き出していたそれは、言葉にするとただ一言――『尊い』が正解かもしれない。


「ええ、凄く可愛いわよ。似合ってるわねリナリア」

「あ、ありがとうございます……」


恥ずかしそうに、少し内股気味なのも実にエクセレント。


乙女な恥じらいが、よりリナリアの可愛さを手助けしていた。


私の案で作られたリナリア用の水着は、かなりの種類があったけど、シンプルな方がリナリアの可愛さを引き立たせるというのは真理なのかもしれないわね。


「カトレア様も、凄く素敵です……はぅ……」


チラッと私を見ると、顔を赤くしてしまうリナリア。


水着を見られてる恥ずかしさと、自意識過剰でなければ、私の水着姿に見惚れたのかしら?


まあ、可愛いからよし。


「さて、日焼け止めでも塗りましょうか」

「あ、実は更衣室で塗ったのですが……」

「ええ、でも背中は難しいでしょ?だから、お互いに塗り合いっこしましょう」


美少女体質のリナリアは日焼けはそこまで怖くないだろうけど、カトレアさんは赤くなるので是非とも塗って欲しいと建前を主張する。


本音?勿論、リナリアに塗りたいし塗られたいだけよ。


私の提案にリナリアは少し考えた後に頷いてくれる。


その素直なところがまた可愛い。


「じゃあ、私からお願いしてもいい?」

「わ、分かりました」

「それじゃあ……」


私は用意していたリクライニングチェアを使って仰向けになるとビキニのトップを外して背中を出すとリナリアに横目で合図を送る。


すると、リナリアは私のその姿に赤くなってから、何とか日焼け止めを取り出して馴染ませるように揉み出す。


「で、では失礼します……」


控えめなその声とは裏腹に、何ともテクニシャンなリナリアはその気持ちいい手で私に日焼け止めを塗ってくる。


あぁ……これが幸せなのね……


思わずそんな感想が出そうになるけど、リナリアの手によってもたらされる心地良さには抗えない。


「あぁん……」


思わず出てしまう吐息にリナリアが反応したけど、塗られてヘブン状態の私は気づくのが遅れてしまう。


なるほど、これが堕落か……悪くないわね。


そうして、リナリアから塗ってもらうターンはあっという間に終わってしまう。


「ありがとう、じゃあ私の番ね」

「お、お手柔らかにお願いしますぅ……」


横になることで、たわわなそれが形を変えて実にいい景色を拝めた私は悟りが開けそうだった。


「うぅん……あん……」


柔らかいリナリアの柔肌と悩ましげな声が非常に私を惑わせるけど、鋼の理性で堪能しつつも乗り越えられた私は凄いと自画自賛する。


リナリアさんってば、色っぽい声は反則ですよ……。





日焼け止めを塗り終われば、ようやく遊ぶターンとなる。


お肌を守る意味でも、役得的な意味でも十分に準備をしてから、海へと入る。


冷たい海水だけど思ったほどではなく、心地よい水に身を任せたくなる。


この辺も沖合まで行かなければ危険はなく、浅瀬ならむしろ平和すぎるのでまったりできる。


「そうそう、上手よ」

「わぷ……カトレア様、離さないでくださいね……?」


そんな中で、私はリナリアに泳ぎた方を教えていた。


海で泳いだ経験などなく、泳ぎた方を知らないリナリアにとりあえずバタ足……クロールから教えるけど、こうして手を引いて泳いでいるとリナリアをリードしていて凄く楽しい。


「リナリアは筋がいいわね」

「そ、そうですか?」

「ええ、自信を持ちなさい」


そう褒めると輝く笑顔で嬉しそうにするから余計に愛しくなる。


「カトレア様は、本当に色んなことを知ってて凄いです」

「そうかしら?」

「はい、私ももっと頑張ります」


やる気満々なリナリアさんは凄く可愛いけど、泳ぎに関しては前世でのものなので反則をしてる気持ちになってくる。


とはいえ、凡人の私ではそういうズルなしではリナリアにいい所を見せられないので仕方ない。


そうしてしばらく教えると、リナリアはあっという間に泳ぎた方をマスターしてしまう。


流石は私のヒロインちゃん。


でも、手を引いて泳ぐのは良かったらしく、私がもう一度やりたいと言えば嬉しそうに付き合ってくれたのは最高でした。


しかしまだ足りない。


一通り泳いでいれば、当然それ相応にお腹も空いてくる。


「カトレア様、出来ました」

「美味しそうね」


そんな訳で、お昼になるとリナリアが肉や野菜や魚を焼いてくれて、他にもちょこちょことつまめる物を作って私に給仕してくれる。


甲斐甲斐しくお世話してくれるリナリアは今日一の笑みで嬉しそうに尽くしてくれるのだけど、こうして尽くしてくれてる時のリナリアは聖母のようだったわ。


こうしてリナリアからあれこれされるのが凄く幸せで、これこそ更に加速する依存への第一歩なのかもしれないとしみじみ思う。


私はもう、リナリア無しでは生きてはいけないわね……勿論望むところだけど、リナリアにも私無しでは生きられないようにしたいもの。


その決意は胸に秘めつつもこの幸せを心から堪能する私は実に贅沢だった。


「美味しいわね、流石はリナリアね」

「カトレア様の魔道具のお陰です」

「リナリアの腕がいいからよ。それに愛しい人の作ったものならそれだけで最高の料理になるのよ」

「もう、カトレア様はズルいですよ……」


そう言いつつも、「えへへ」と嬉しそうに笑うリナリアは本当に可愛い。


水着姿で白い素肌が眩しくて、しかも中身まで最高なのだからリナリアさんはやはり私にとって最高すぎる人なのだろうとしみじみ思った。


まあ、今更よね。















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